夏になると食べたくなる、うなぎ。
ふんわりとした身とこってりした脂、絶妙に絡むタレと、フワッと鼻をくすぐる香ばしさ。
夏になると食べたくなる料理として名が挙がるのは、やはり「うなぎ」。最近では稚魚の減少により市場価格も高騰しているようだが、日本人にとって「土用のうなぎ」は、欠かすことのできない年中行事のひとつ。
「うなぎの蒲焼き」とは
うなぎは高タンパクで消化も良く、日本料理の食材としても重要で、鰻屋と呼ばれるうなぎ料理の専門店も多い。
皮に生息地の水の臭いやエサの臭いが残っているため、天然、養殖を問わずきれいな水に1-2日入れて、臭みを抜いたものを料理する。
泥抜き・臭み抜きと呼ばれる。夏バテを防ぐためにうなぎを食べる習慣は、日本では大変古く、『万葉集』にまでその痕跡をさかのぼる。(Wikipedia参照)
そんなに古くから夏場に食べられていたうなぎ。
うなぎには、ミネラルなど様々な栄養があり、ほぼ全ての栄養素が含まれているらしいが、ビタミンCだけは入っていない。ワインでそれを補完できれば、健康面でも素敵なマリアージュ。
いや、うなぎには日本酒でしょ!という方はコチラどうぞ
うなぎに合うワインの条件はこれだ!
実は以前にも私たちスタッフは、うなぎ(白焼き/蒲焼き)とワインの食べ合わせを紹介してきた。 そのときに出した答えは、以下の通り。
・白ワインは個性あるフルーティーなタイプがばっちり!
・スパークリングワインは、フレッシュなものよりもボリューム感のあるタイプ
・赤ワインを選ぶなら「パンチ系」より「きれい系」
・アルコールや、色々な要素が強いワインが合う!
調理法で分けると、「白焼き」によく合っていたのが白ワイン&スパークリングワインで、「蒲焼き」には赤ワインがよくマッチしていた。というわけで、調理法別のうなぎに合うワインを紹介していきます。
【白焼きに合う!】× スパークリングワイン
バルディビエソ エクストラ ブリュット
ワインのボリュームが、うなぎのふっくらとした質感と合い、 うなぎ独特の脂っこさを消してくれる。 特に白焼きにおすすめ!
【白焼きに合う!】× 白ワイン
フェウド・アランチョ グリッロ
酸・ミネラル・果実味のバランスが素晴らしく、 うなぎとの相性抜群! うなぎの旨味を引き立てる。
【蒲焼きに合う!】× 赤ワイン
メルセデス・エグーレン カベルネ・ソーヴィニヨン
ワインのバランスが良く、うなぎと食べると 相乗効果でどちらも美味しい。うなぎのコゲ感とワインの樽感が抜群に合う。特にタレ焼におすすめ!
【蒲焼きに合う!】× 白ワイン
IIIB(トワベー)・エ・オウモン 白
ワインの酸味がうなぎの脂を流し、 樽感とコゲ感の相性が良く味の相乗効果を生み出してくれる。 白ワインとの意外な組み合わせを堪能していただきたい。
【蒲焼きに合う!】× 自然派ワイン4選
今回は関東と関西のソムリエ有資格者7人が集まり、最近の流行である「自然派ワイン」でどんなものがうなぎに合うのか、ペアリング実験を行うことに。
うなぎの食べ方は数多くあれど、『お家ごはん』がすっかり定着した今、手軽にスーパーで買えて家庭でよく食べられる、王道の「蒲焼き」に合わせて今回は検証しました。
「蒲焼き」ということで、赤をメインに自然派ワインをチョイス。何かと話題にのぼるオレンジワインも用意してみました。
満場一致のベストマリアージュ【プール・マ・ギュール】
『きれい系 自然派ワイン』のお手本のようなチリワイン
まず満場一致でベストマリアージュだったのは、 『きれい系 自然派ワイン』のお手本のようなチリワイン
【オーガニック情報:ビオディナミ/ビオロジック】
サンソー種が主体のこのワインは、フランス ブルゴーニュ地方でプライベート用の特別なワインに与える「プール・マ・ギュール(私のために)」という名が付けられている。それもあってか、ブルゴーニュのピノ・ノワールのように透明感ある果実味がジューシーで、芳醇なワイン。
<ソムリエ実食コメント>
うなぎの脂をワインのジューシーさがしっかり受け止めている。うなぎのふっくらとした食感とワインの柔らかい旨み・甘みがお互いを引き立て合い、さらにはタレの甘みとなめらかな果実味が同調してとても飲みやすい。ワインの酸味が脂をキレイに流してくれて、後味の心地さもまた格別。
ワインに爽やかな清涼感があるので、山椒はもとよりワサビを添えても美味しそう。とにかく味わいのバランスがピカイチの組み合わせ。
2つのマリアージュ体験【アルパマンタ ナタル カベルネ・ソーヴィニヨン】
カベルネ・ソーヴィニヨン100%のアルゼンチンのビオワイン
次に人気だったのは、 カベルネ・ソーヴィニヨン100%のアルゼンチンのビオワイン。スパイスやハーブ香る赤で、2つのマリアージュ体験ができました。
【オーガニック情報:ビオディナミ(Demeter認証)/ビオロジック(Ecocert認証)】
現地の言葉で”大地を愛す“を意味する「アルパマンタ」。自然と共存しながら大地を耕し、そこで生まれたカベルネはスパイスやハーブの香りが漂う、落ち着きのある口当たり。シルキーで細やかなタンニン(渋み)が静かに口の中で広がる。
<ソムリエ実食コメント>
ワインの酸とこなれたタンニンがタレとよく合い、うなぎの脂をほどよく引き締める。カベルネ特有の青さを少し感じるのが、マリアージュにおいては逆に良いアクセント。熟成によるスパイス感もマリアージュを一層、後押しする。ワインの香ばしいスパイスやハーブの香りが、うなぎのポテンシャルをさらに高めて、なかなかいい。
ユーカリのようなグリーンのアロマが、うなぎに山椒をかけるかの如く「補完のマリアージュ」(片方に欠けている味わいの要素を、もう片方が持つ要素で補うこと)を実現。さらにうなぎの方にも山椒を足すことで、今度は「同調のマリアージュ」(同じような香り・味わいの要素を合わせることで、お互いの風味が寄り添うこと)へと昇華する。
2つの地ブドウのハーモニーが魅力の樽熟タイプのスペイン赤【ガルシアーノ】
樽熟タイプの赤は、焦げ目がポイント
樽熟タイプの赤でおすすめは、 2つの地ブドウのハーモニーが魅力のスペインワイン。
【オーガニック情報:ビオロジック(CPAEN認証)】
このワインを造るのは、スペインの砂漠地帯に生きるたった一軒のワイナリー。
極限の環境下で育まれたブドウの凝縮感は見事なもので、端整なグラシアーノ種と甘みのあるガルナッチャ種が絶妙なバランスをみせる。
皮付きブドウを食べたときのようなジューシーな果実感に酸味とタンニン。徐々に樽の印象が前に出てきて、可愛らしかった味わいから一転、スパイシーでいきいきとしたワインに。短い時間の中で、十分に変化を楽しめる赤だ。
<ソムリエ実食コメント>
前の2つのワインに比べて、タンニンをやや強く感じるワイン。それがうなぎの焦げ感によく合っており、うなぎの脂質までも受け止めるので、口中で快適な時間が長く続く。
ワインから踊り出る果実の甘みと、タレの甘濃さの方向性が一致。酸味もしっかりしているので、後味もバランスよくまとまっている。
お手軽価格で楽しめるポルトガルのオレンジワイン【アート・テッラ クルティメンタ】
山椒はマスト。オレンジワインも合う
最後に、オレンジワインを検証。幅広い食事との相性が良いことで知られており、ペアリングを行うレストランからも注目されている話題のワイン。あまり冷やすと渋みが際立ったり、せっかくのボリューム感を楽しめなかったりするので、通常の白ワインより温度は高めでOK。
今回合わせたのは、 お手軽価格で楽しめるポルトガルのオレンジワイン。
【オーガニック情報:リュットレゾネ】
こちらは、フレッシュな酸が魅力の軽快でクリーンなタイプ。このフレッシュさを保つため、ブドウはあえて完熟する2~3日前に収穫するのだとか。フレッシュオレンジの香りに、ミントやシナモンのニュアンスが心地よいワイン。
<ソムリエ実食コメント>
うなぎの脂をワインのフレッシュな酸が流してくれるものの、余韻にも酸が残るので、何かひと工夫が欲しいところ。うなぎに山椒でアクセントをつけると、ワインに感じられるシナモンなどのスパイス感とうまくマリアージュする。うな丼にすると、ご飯でワインの酸が中和され、バランスも格段に良くなる。
白ブドウを搾った果汁を、果皮や種子と一緒に漬け込み、醗酵させて造るオレンジワイン。漬け込み期間にもよるが、出汁のようなコク深さと、渋みを伴った複雑な味わいが特徴だ。
今回の様なフレッシュなタイプのオレンジワインではなく、
うなぎとお酒、マリアージュの極意
「蒲焼き」は、甘辛いタレとスパイシーな山椒、香ばしい風味が特徴的。それぞれのポイントを一つでも合わせれば、ほぼペアリングは完成する。
あとはお互いのボリューム感を合わせたり、うなぎの脂を酸やタンニンで中和したりと、まだまだ工夫の余地はあるがそこは難しく考えすぎず、まずはトライしてみて欲しい。
貴重なうなぎだからこそ、ぴったり合うお酒で最大限の美味しさを引き出して味わうのが、大人のうなぎの食し方。「うなぎとお酒」の組み合わせが成せる妙技を、ぜひ今年の「丑の日」は楽しんでいただきたい。『丑の日』を、大人の楽しみ方で。