ノヴェッロの解禁は10月30日(午前0:01)
ノヴェッロの解禁日は毎年10月30日(午前0:01)です。
現在のように10月30日となったのは2012年からです。
それ以前の解禁日は11月6日でした。変更になった理由は、この年に新しいDOP、IGPというワイン法が施行されたから。イタリアの担当行政局(いわゆる農林水産省のようなところ)がそれまでのノヴェッロの規則と新しいワイン法を一律にして単純化したことによります。
当時イタリアでは、解禁が一週間前倒しになったのに気づかなかったワイン生産者が続出!気づいたときには事前に予約していた日本への空輸便の変更ができず、一部の銘柄は日本に到着したのが解禁後…、なんていうこともありました。ルールの変更に気づかないなんて、いかにもイタリアらしいのんびりしたエピソードですね。
これを読めば分かる『午前0:01』の理由
フランス産ヌーヴォの解禁は午前零時。しかし、ノヴェッロの解禁は零時1分なんです!
生産者がワインのラベルに『novello』の記載をするためには、イタリアのワイン協会(UIV)に申請を出す必要があるのですが、この申請期限が「10月30日になるまで」と定められているから。申請期限と解禁が重なってしまわないように、申請は00分まで、解禁は01分になっています。
ノヴェッロの解禁は、『10月30日 0:01』です!お間違いないように。
「ヴィーノ・ノヴェッロ(Vino Novello)」とは?
その年に収穫されたブドウを使い、イタリア各地でつくられる個性豊かな新酒ワインのことです。
熟成させずに飲むワインの新酒は、果実味が豊かでとても新鮮な味わい、飲みやすい口当たり。日本にも航空便で輸入されるので、秋の解禁と同時に楽しむことができます。
ノヴェッロ(Novello)の意味
ヴィーノ(vino)が『ワイン』、ノヴェッロ(novello)は『新しい』という意味。合わせて『新酒』になります。英語ではNew。フランス語でNouveau(ヌーヴォ)と同義語になります。
ノヴェッロとボージョレの違いは?
ノヴェッロがイタリアの各地で造られる新酒であるのに対し、ヌーヴォはフランス各地で造られる新酒のことをいいます。ボージョレ産のものが有名で、ガメイ種を使って造られるのがボージョレ・ヌーヴォです。
世界の新酒のなかでも一番早く解禁されるノヴェッロ
「新酒」と呼ばれているワインは世界各地にあります。各国の有名な新酒ワインと解禁日をまとめたものがこちら。
ワインの種類 | 生産国 | 解禁日 |
ヴィーノ・ノヴェッロ (Vino Novello) | イタリア | 毎年10月30日 |
ボージョレ・ヌーヴォ(Beaujolais Nouveau) | フランス | 毎年11月第3週の木曜日 |
デア・ノイエ(Der Neue) | ドイツ | 毎年11月1日 |
ホイリゲ(Heurige) | オーストリア | 毎年11月11日 |
山梨ヌーヴォー | 日本 | 毎年11月3日 |
ボージョレ・ヌーヴォ(Beaujolais Nouveau)
フランスのボージョレ地区でつくられる、ガメイ種からつくられる赤ワインです。ボージョレを含めたフランスの新酒解禁日は毎年11月の第3木曜日です。
デア・ノイエ(Der Neue)
ドイツでつくられる新酒です。解禁日は毎年11月1日。
ホイリゲ(Heurige)
オーストリアでつくられる1年未満のワインのこと。解禁日は毎年11月11日。
山梨ヌーヴォー
日本の山梨県でその年に収穫されたブドウ(白ワインなら甲州、赤ワインならマスカット・ベーリーA)でつくられたワイン。解禁日は11月3日。
このように世界の新酒の中でノヴェッロの解禁が10月30日で一番早いのがわかります。2024年新酒の幕開けをノヴェッロで楽しみましょう!
ノヴェッロのルールあれこれ
- ヴィーノ・ノヴェッロは、イタリアの原産地呼称ワイン『DOCG』『DOC』『IGT(IGP)』ワインにのみ表記が許可されています。
- ラベルに収穫年を表示しないとルール違反になります。
- 醸造期間は醸造開始から10日以内の制限あり。短い期間でつくらなければなりません。
- 炭酸ガス浸漬法(マセラシオン・カルボニック)で造られたワインが40%以上含まれていること。
- アルコール度数は11%以上、残存糖分10g/L以下(消費時で)。
- 収穫した年の12/31までに瓶詰すること。➡解禁日に間に合わせなればならない、というわけではないのですね!
ノヴェッロってどんなワイン?産地とブドウ品種
ノヴェッロに使用するブドウ品種や産地に細かい規定はありません。イタリア各地で収穫される地域のブドウを用いてつくられています。
モトックスで取り扱いしている「コンティ・ゼッカ」社では、今年G7の会議が行われたプーリア州で栽培されている特産のプリミティーヴォとネグロアマーロを使用しています。
新酒の醸造方法『マセラシオン・カルボニック』とは
解禁日の設定されている新酒は、ワイン生産を解禁に間に合わせるため『マセラシオン・カルボニック』という醸造方法を使います。収穫したブドウの房をそのままタンクに入れて、炭酸ガスを満たして醗酵させます。この方法ではフルーティでタンニンが少なく、色素の濃いワインが短時間でできます。そうやってできるノヴェッロが、収穫を祝う多くの人の喉を潤してくれます。
ノヴェッロとのマリアージュ~現地で合わせる食事~
【カスターニェ /Castagne (焼き栗)】
現地ではノヴェッロと言えば焼き栗、というくらい最高の組み合わせ食材です。昔はどの家にも暖を取ったり煮炊きする炉がありました。そこで焼き栗を焼きながら新酒を楽しむ伝統があります。
毎年行われている新酒祭でも焼き栗とその年のノヴェッロを楽しむことができます。
【ピットゥーレ/ Pittule】
プーリア州の代表的な軽食で、小麦粉を練ったものを揚げた一口サイズのパン。基本的には塩味だけなのですが、海苔やローズマリーで味付けしたものなど、色々なバリエーションのものがあります。
昔から食べられている素朴なおやつで、シンプルだけど懐かしい味わい。焼き栗と共にノヴェッロととても相性のいいお料理です。
【ソフリット・ディ・チーマ・ディ・ラーパ / Soffritto di cima di rapa(チーマ・ディ・ラーパの炒めもの)】
日本の菜の花に似た野菜ですが、チーマ・ディ・ラーパの方がより苦味があります。苦味のある野菜とわずかに甘いポテトのピューレを一緒に食べるとバランスが非常にいいです!
日本だとブロッコリーでも代用できます。現地では青菜はクタクタになるまで茹でるので、ブロッコリーも塩をたっぷり入れたお湯でしっかりと茹でるのがイタリア式!そのあとに塩とニンニクで炒めるとノヴェッロと相性が良くなります。
【ポルペッティーネ・アル・ポモドーロ / Polpettine al pomodoro (ミートボールのトマト煮込み)】
日本人のカレーライスやハンバーグのように誰からも愛されるイタリアの国民食。典型的な家庭料理で各家庭にマンマの味があります。
2024年の現地情報 / プーリア州(コンティ・ゼッカ)
7月の様子
(左)プリミティーヴォ(右)ネグロ・アマーロ
7月中旬現在、ブドウは順調に成長しています!
冬は温暖で、雨がたっぷり降ったおかげで土壌深部に水分が蓄えられ、春の乾燥した天候をしのぐことができました。
6月に入って開花、結実が順調に進み、7月2週目には気温が上昇したためブドウの色付きが一気に進みました。現在、畑の日中の気温は35~38度まで上がり、夜間は25度前後まで下がります。
昼間の気温は高いですが、地中の充分な水分と強い日差し対策によって成長は順調です。ブドウの収量は前年の気候に左右されます。昨年春の降雨と気温の低さにより、今年は平年に比べてブドウの房の数が少なくなっています。収穫量は平均収量より15~20%減になるでしょう。
※プリミティーヴォは、クロアチアに由来するブドウ品種でプーリアに伝わった際に早く熟すという意味からプリミティーヴォと名付けられました。ブドウの色づきを見比べてみると楽しいですね!
8月の様子
(左)プリミティーヴォ(右)ネグロ・アマーロ
7月後半から8月中旬にかけて、サレント地方は平均的な気温が続いています。日中は35~36℃まで上がり、夜間は20~22℃まで下がります。8月16、17日に激しい降雨があり、水分不足による果実へのストレスを回避することができました。また、中央ヨーロッパから吹いてくる北風のおかげで湿度が低く保たれています。
プリミティーヴォもネグロアマーロも最高の状態で成熟しており、例年より約1週間から10日ほど早く完熟に向かっています。例年8月末に収穫を行っているプリミティーヴォの収穫は8月19日から始めて28日に終わりました。ブドウの果実は健全で完璧に熟しており、果皮は厚く、色もアロマも豊かです。
まだ確定ではありませんが、ネグロアマーロは9月に入ってから収穫の予定です。
9月 収穫が終わりました!
プリミティーヴォの収穫は8月19日から28日に、ネグロアマーロの収穫を9月2日から12日にかけて行いました。収穫期間中は30~35℃と気温の高い日がありましたが、雨は降らず天候に恵まれる日が続いたことで、収穫されたブドウは最高の状態でした。
収穫作業は朝6時から暑さがピークに達しない11時頃まで、30人の熟練作業員が一斉に畑に出て行いました。今年はブドウの粒が例年より小さかったため、収穫量は予想より20〜30%ほど少なくなりました。しかし、ブドウの出来は素晴らしく、アルコール分・酸度・タンニンのバランスがとれたフレッシュでフルーティな味わいに加え、しっかりとしたアロマを持つノヴェッロに仕上がると確信しています。
10月 ワインが出来上がりました
房の大きさはやや小ぶりながらも、完熟した凝縮感のある高品質なブドウが収穫できました。出来上がったワインは非常にクオリティの高いワインとなり、私たちも大変満足しています。
今年のノヴェッロは、輝きのある濃い紫がかった赤色をしています。アロマには、新鮮なストロベリー、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリーといった赤や黒の果実、さらにスミレのニュアンスを感じることができます。口に含むと、フレッシュな酸味とソフトなタンニン、そして果実味のバランスが絶妙で、非常に心地よく飲むことができます。
コンティ・ゼッカのノヴェッロは、さまざまなお料理と相性が良く楽しんでいただけます。例えば、シンプルな焼き栗や秋が旬の食材のキノコや豆のスープ。もちろん、生ハムやサラミ、白身肉や赤身肉のグリル、チーズとも楽しんでいただけます!
少し意外かもしれませんが、魚のグリルとも抜群の相性ですので、お試しください。
ノヴェッロは、やや冷やし気味の14~16度で飲んでいただくことをお勧めします。
今年も秋の訪れを告げるフレッシュで飲みやすいノヴェッロを、ぜひお楽しみください!
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関連コラム
過去のヴィンテージレポート
参考
宮嶋 勲/『イタリアワイン 2021年版』/ワイン王国/2021年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2018』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2018年