「ピノ・ノワール」… このブドウ品種の名前を聞くと、つい手にとって買ってみようと思うワイン好きは日本に多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ワインを買うとき、皆さんはどこを一番に見て判断しますか? おそらく産地を見て決めることが多いのではないでしょうか? その一方で “ピノ・ノワール”と聞けば、そこまで興味のない産地でも「おっ?」となって気づいたら買ってしまうのは筆者だけではなさそうです。
ピノ・ノワールの特徴
ピノ・ノワールは、フランス・ブルゴーニュ地方が原産の赤ワイン用ブドウ品種。ブルゴーニュの赤ワインのほとんどが、このピノ・ノワールから造られます。あの有名なロマネ・コンティもピノ・ノワール100%です。
実は日本はアメリカ、イギリスについで世界でなんと3番目の輸入量を誇るブルゴーニュワイン消費国なのです。しかしながら、OIV(世界ブドウ・ワイン機構)の2021年度の統計によると、一人あたりのワイン消費量は年間たったの3リットル。世界の国別ランキングでみると21位、とまだまだワイン後進国です。つまりワインの消費自体はそれほど多くないのに、ブルゴーニュワインをかなり飲んでいる計算になります。
知名度の高いシャブリが大きく数字を牽引しているとはいえ、ブルゴーニュの赤ワインの大半がピノ・ノワールでつくられていることを考えたら、推測されるのは、「日本人って、ピノ・ノワールが好きなのでは??」ということです。
さらに統計をみていくと国内流通しているブルゴーニュワインの約7割は、格付けの中では一番ベーシックなA.O.C.ブルゴーニュで占められており※、“カジュアルに楽しめるブルピノ(=ブルゴーニュのピノ・ノワールのこと)”が支持されているようです。
価格高騰するブルゴーニュワイン市場
しかしながら今、このブルゴーニュのピノ・ノワールに価格高騰の波が押し寄せています。世界情勢により急騰する物価に加えて、ブルゴーニュ地方はブドウの不作が続き、価格が大幅に高騰しているのです。過去にはA.O.C.ブルゴーニュのワインが2,000円足らずで購入できたのですが、今後は3,000円~4,000円へと急激な値上げを余儀なくされているのが現状です。
この値上げを甘んじて受け入れ、お財布と相談しながら“たまの贅沢としてブルピノを楽しむ”スタイルにシフトするのも一つですが、ブルゴーニュ以外の産地に目を向けると、また別の楽しみ方が見えてきます。
ブルゴーニュのピノ・ノワールは、他と一線を画す香り高く官能的な味わいがその愛される所以ではありますが、「ブルゴーニュ以外はピノじゃない!」というのは、もはや過去の話。技術の進歩とともに、フィロソフィー(哲学)をもってワインを造っているワイナリーが世界中に現れ、今や世界の至るところで高品質なピノ・ノワールが生産されています。商業的な大規模ワイナリーではなく、ブルゴーニュのドメーヌのように1本筋の通った小規模・中規模ワイナリーが、ここ10年で増えてきました。しかも彼らのワインは、ひと昔前のA.O.C.ブルゴーニュのような価格で手に入るのですから、試してみないのは勿体ないと思います。
時代の転換期である今だからこそ、新たなピノ・ノワール ワインの世界を楽しんでみてはいかがでしょうか?
モトックスでは沢山のピノ・ノワールを取り扱っていますが、その中でも今回はブルゴーニュ以外、ニューワールドから選りすぐりのピノ・ノワールを3本ご紹介します。
お買い得なオーストラリアの冷涼ピノ・ノワール
ワイン名のウィマーラは、アボリジナル(オーストラリアの先住民)の言葉で「絶景」という意味。美しい絶景で暮らす野鳥がラベルに描かれています。この価格ながら、ブルゴーニュで主流の「ディジョン・クローン」と呼ばれるクローンを5種類ブレンド。果実味の中に綺麗にのびる酸と整ったタンニンをもつ、バランスのよいピノ・ノワールです。
銘醸地ヤラ・ヴァレーのピノは、ひたすら優秀。高品質&お手頃価格
銘醸ひしめく最高の冷涼地が生む究極のスタイル、味わい深いオーストラリアのピノ・ノワール。ワイナリーのある畑の気候は、北イタリアや北ローヌ、ブルゴーニュと類似しています。バランスがよく、やわらかな質感と長い余韻。優しい酸味と旨みさえ感じる奥行きあるピノに、つい魅きつけられます。
ほどよい樽感が重なる、エレガントなチリ・ピノ
コスパが高くて人気のチリワイン。南北に細長いチリには、寒流や海風、霧の影響を受けて、本家ブルゴーニュと同様に寒冷でピノ・ノワールの栽培に適したエリアがあります。沿岸部のカサブランカ・ヴァレーもそのひとつ。この地でピノ・ノワールをつくる生産者、バルディビエソ。このワイナリーのオリジナルクローン、「バルディビエソ クローン」はチリで最も有名なクローンで、ミントのニュアンスや果実味がしっかりしたスタイルに仕上がります。
ワイン愛好家を中心に特に人気の「ピノ・ノワール」。本場のフランス産以外にも、素晴らしいものが世界には沢山あります。「ブルゴーニュしか飲まない!」という人にも飲んで欲しいくらい、品質が高く、冷涼なエリアのピノ・ノワールを集めました。この機会に、ぜひ飲み比べてみてください。
(※2020年輸出量データ『VINS DE BOURGOGNE』)
https://www.bourgogne-wines.com/bourgogne-week-japon/gallery_files/sitef/54056/54058/67815.pdf