日本のスパークリングワイン輸入量は増加中
統計によると2022年の日本のスパークリングワインは、主要国からの輸入量が前年比115.1%の伸びだったそうです。コロナの影響で大きく減らした2020年以降の回復は順調で、ついに影響のなかった2019年を追い越しました。人気のあるスパークリングワインの価格帯は1,000円台前半(モトックス調べ)。弊社が輸入している2,000近いワイン銘柄の中から、1,000円~1,500円までのスパークリングワインを販売数順にランキングしました。
ランキング 1~10位
※モトックスの2022年1月~2023年11年の販売データから抽出した販売量上位銘柄
※希望小売1,000円~1,500円のスパークリングワインを対象にしています
【1位】ピノ シャルドネ スプマンテ / サンテロ社
イタリアの辛口がトップでした。1953年創業のサンテロ社はイタリア国内でも指折りの高い生産量誇るワイナリーです。年間生産量3500万本、という大規模でかつ畑の90%でブドウを手摘み収穫するこだわりよう。仕事は楽しく!というイタリアらしい考えをもつ社長とスタッフにより、生産者世界80カ国の人々を楽しませています。
【2位】バルディビエソ ブリュット / バルディビエソ社
ワイン生産国のチリで、国内最大シェアを誇るスパークリングワインメーカーがこのバルディビエソ社。1879年設立で、南アメリカで初のスパークリングワインを生産しました。日本では2008年の販売開始して以来、高い人気を誇る辛口です。
【3位】ブラック ブリュット / サンテロ社
1位のピノ・シャルドネと同じサンテロ社が造っている辛口です。よりリーズナブルな価格で楽しんでいただけるように作られたのがブラック・ブリュット。
【4位】ヴーヴ・デュ・ヴェルネ ブリュット / クリテール社
フランス産の辛口スパークリングワイン(シャンパーニュを除く)では、日本の輸入量が2位の人気ブランド銘柄。日本はもとより世界66カ国(2022年9月現在)で取り扱いされています。とくにワイン消費大国であるアメリカ合衆国では日本の23倍もの販売量がある人気ぶりです。
【5位】クエルチオーリ レッジアーノ ランブルスコ セッコ / メディチ・エルメーテ社
赤いスパークリングワインとして知られる、『ランブルスコ』の辛口。メディチ・エルメーテ社はランブルスコのナンバーワン生産者で、最もスタンダードなシリーズとなっているのがこのクエルチオーリ シリーズです。現地と同じように生ハムとパルミジャーノ(チーズ)を用意して乾杯しましょう!
【6位】クエルチオーリ レッジアーノ ランブルスコ ドルチェ / メディチ・エルメーテ社
ひとつ上の5位だったランブルスコの甘口版。ランブルスコには辛口のほかに甘口やロゼなどいろんな種類があります。あなたにぴったりのランブルスコを見つけて楽しんで!
【7位】ヴーヴ・デュ・ヴェルネ ロゼ / クリテール社
4位にランクインしているヴーヴ・デュ・ヴェルネ ブリュットの辛口ロゼ。1953年に設立されたワイナリーはブルゴーニュ地方のボーヌが拠点。環境に配慮したブドウ栽培農家と契約して生産されています。
【8位】ピノ ロゼ / サンテロ社
1位のピノ・シャルドネのロゼバージョン。アセロラ、チェリーのような果実感の辛口です。ロゼワインが上位に入る傾向はスティルワインのランキングと同じ傾向です。ふだんロゼワインを召し上がらない方にもぜひお試しいただきたいです。
【9位】ファウンド・ストーン ブリュット キュヴェ / バートン・ヴィンヤーズ社
オーストラリアで急成長を遂げているワイナリーが造るコストパフォーマンスの高いスパークリングワイン。ベースの白ワインに現在注目を集めている炭酸ガス注入を行い、スクリューキャップで封されています。泡立ち、きめ細かさとも優秀な一本。
【10位】モナステリオーロ カバ ブルット / マルケス・デ・モニストロル社
瓶内二次発酵で造られるスペインの大人気スパークリングワイン『カバ』が10位。1882年設立のワイナリーで、カバの中心地カタルーニャが本拠。設立以来カバの生産に全てを捧げています。国際的な評価が高く、なんといってもリーズナブルなのがうれしいところ。
一番売れてる甘口『天使のアスティ』【ランキング外】
価格が1,500円以上のため、ランキングには入りませんでしたが一番出荷量の多かった、スパークリングワインは甘口『アスティ』でした。天使シリーズにはアスティ(白)に加えてロッソ(赤)もあります。
スパークリングワインとは
そもそも、スパークリングワインってなんだっけ?という方におさらい。ワインのうち泡の出ないものを「スティルワイン」、炭酸を含んだ発泡性ワインのことを『スパークリングワイン』と言います。スパークリングワインの中には有名な『シャンパン』も含まれます。
シャンパン(シャンパーニュ)とスパークリングワインの違い
『シャンパン』はフランスのシャンパーニュ地方で造られたスパークリングワインのことです。シャンパーニュ地方でスパークリングワインを製造するには厳しい規定を満たす必要があり、これを守って造られたものだけが『シャンパン(シャンパーニュ)』として販売されます。
スパークリングワインの正しい開け方
スパークリングワインを開栓するためにはオープナーは必要ありません。コルクにかかっている針金(ミュズレといいます)を外して、ボトルを回してコルクを開けます。上手に開けるためのコツは下記の4つです。詳しく書かれたページリンクを参考にして、開栓してください。
①ボトルを振ったり強い振動を与えない
②開栓する前によく冷やしておく
③安全に開けるために、『ふきん』を使って開栓する
④コルクを引っ張らず、ボトルを回して開ける
スパークリングワインの選び方。チェックするポイントは?
まずは、生産国から
現在日本に輸入されているスパークリングワインの生産国は、2021年に引続いて『チリ』『イタリア』が人気の中心です。伸び率で目立つのは『フランス』『スペイン』産。いずれの国も、発泡性ではない「スティルワイン」もたくさん日本に輸入されている安心のワイン生産国という点で一致します。フランス産のスパークリングワインは高価な「シャンパーニュ(シャンパン)」が有名ですが、リーズナブルな価格帯でも注目の銘柄が出てきました。下記のランキングにも4位で登場しますので是非ご覧ください。
あなたが飲みたいのは、辛口?甘口?
モトックスで最も販売量の多いスパークリングワインは「天使のアスティ」という甘口の銘柄(価格が1,500円を超えるのでランキングには入りません)。しかし、その他のランキング上位のほとんどを「辛口」が占めます。銘柄で甘口、量では辛口。人によって好みが分かれるところですので、購入する際は飲みたいほうを予め決めておいたほうがよいと思います。※天使のアスティもランキング外にご紹介しています。
辛口が合う方は、食中酒として楽しみたい方/ビールやハイボールなど、普段から辛口のお酒を召し上がっている方/すっきり爽快さがほしいとき
甘口が合う方は、食後酒やデザートとして楽しみたい方/カクテル・チューハイなど、普段から甘いお酒がお好きな方/はじめてお酒やワインを飲んでみるとき
スパークリングワインの甘辛度 見分け方
表記の意味で見分けるのがおすすめ
甘辛度の表記はスパークリングワインに入っている「糖分の量」によって決まりますが、少し専門的な話になりますので表記されている言葉の意味から判断するのがおすすめです。表記とその意味を以下にまとめました。
■辛口~やや辛口
表記 | 読み | 意味 | 国 |
---|---|---|---|
Brut |
ブリュット |
辛口の、自然のままの |
フランス |
Dry |
ドライ |
(酒が)辛口の |
フランス |
Sec |
セック |
辛口の、乾燥した |
フランス |
Trocken |
トロッケン |
辛口の、乾燥した |
ドイツ |
Secco |
セッコ |
辛口の、乾燥した |
イタリア |
Asciutto |
アシュット |
辛口の、乾燥した |
イタリア |
Seco |
セコ |
辛口の、乾燥した |
スペイン |
※辛口表記の頭にDemi~、Semi~、Halb~(半分の、完全ではない、準~)がついた場合は辛口度合いが低くなり、「やや甘口」になります。Demi-Sec、Semi Seccoなど。
※Extra~(とびきりの、過剰な)がついた場合は辛口度合いがより高まります。
■やや甘口~甘口
表記 | 読み | 意味 | 国 |
---|---|---|---|
Doux |
ドゥー |
甘口の、甘美な |
フランス |
Abboccato |
アッボッカート |
薄甘口の |
イタリア |
Dolce |
ドルチェ |
甘口の、やさしい |
イタリア |
Mild |
ミルト |
口当たりの柔らかな |
ドイツ |
Dulce |
ドゥルセ |
甘い、甘美な |
スペイン |
もっと詳しく 表記でわかる『残糖量』
ワインはブドウの糖分を発酵させてアルコールを造ります。発酵の過程で糖分が減っていくため、最終的な仕上がり品に含まれる糖を『残糖』と言います。スパークリングワインは、辛口であっても瓶詰めの際にリキュールを加えて甘味を調整してから出荷されますから、ワインに含まれていた糖分とリキュールを添加することで増えた糖分を合わせたものが残糖量になります。リキュールのレシピは多くのワイナリーで企業秘密。「門外不出」となる傾向が高いです。
■辛口
表記 | 読み | フランス | イタリア | ドイツ | スペイン | 残糖量 |
---|---|---|---|---|---|---|
Brut Nature |
ブリュット・ナチュール *1 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
3g/L未満 *2 |
Pas Dose |
パ・ドゼ |
〇 |
〃 |
|||
Dosage Zero |
ドザージュ・ゼロ |
〇 |
〃 |
|||
Naturherb |
ナトゥアヘルプ |
〇 |
〃 |
|||
Extra Brut |
エクストラ・ブリュット *3 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
0~6g/L |
Brut |
ブリュット *3 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
12g/L未満 |
*1 イタリア語「ナトューレ」、ドイツ語「ナトゥア」、スペイン語「ナトゥーレ」
*2 リキュール添加(ドザージュ)不可
*3 イタリア語、ドイツ語「ブルット」
■辛口~やや辛口
表記 | 読み | フランス | イタリア | ドイツ | スペイン | 残糖量 |
---|---|---|---|---|---|---|
Extra Dry |
エクストラ・ドライ |
〇 |
〇 |
12~17g/L |
||
Extra Trocken |
エクストラ・トロッケン |
〇 |
〃 |
|||
Extra Seco |
エクストラ・セコ |
〇 |
〃 |
|||
Sec |
セック |
〇 |
17~32g/L |
|||
Secco(Dry) |
セッコ |
〇 |
〃 |
|||
Asciutto |
アシュット |
〇 |
〃 |
|||
Trocken |
トロッケン |
〇 |
〃 |
|||
Seco |
セコ |
〇 |
〃 |
■やや甘口~甘口
表記 | 読み | フランス | イタリア | ドイツ | スペイン | 残糖量 |
---|---|---|---|---|---|---|
Demi-Sec |
ドゥミ・セック |
〇 |
32~50g/L |
|||
Semi Secco |
セミ・セッコ |
〇 |
〃 |
|||
Abboccato |
アッボッカート |
〇 |
〃 |
|||
Halbtrocken |
ハルプトロッケン |
〇 |
〃 |
|||
Semi Seco |
セミ・セコ |
〇 |
〃 |
■甘口
表記 | 読み | フランス | イタリア | ドイツ | スペイン | 残糖量 |
---|---|---|---|---|---|---|
Doux |
ドゥー |
〇 |
50g/L超 |
|||
Dolce |
ドルチェ |
〇 |
〃 |
|||
Mild |
ミルト |
〇 |
〃 |
|||
Dulce |
ドゥルセ |
〇 |
〃 |
※その他、やや甘口~甘口の代表的なスパークリングワイン
Asti(アスティ)※Asti Seccoは辛口~やや辛口
Nectar(ネクター)※シャンパーニュ地方の慣習的な甘口の名称
参考までに、甘口をボトル1本(50g/L)飲んだ場合に摂取する砂糖の量は、500mlのペットボトルジュースと同じくらい。代表的な辛口(Brut)だとその1/5程度です。
スパークリングワインの製法3つ。違いは気にしなくて大丈夫
スパークリングワインの製法は、大きく分けて3つの方法があります。炭酸を生み出す二次発酵を1本ずつ瓶の中で行う『瓶内二次発酵(シャンパーニュ方式)』、二次発酵をタンクの中で行う『シャルマ方式』、二次発酵を行わずベースワインに炭酸ガスを注入する『炭酸ガス注入方式』です。
瓶内二次発酵
味の複雑さと泡立ち、きめ細かさが特徴。一方で生産コストと手間がかかります。
シャルマ方式
二次発酵を大型のタンクで行うため効率的な方法。泡立ちなどは瓶内二次発酵に及びにくいものの、造り手によってはかなりそれに近づきます。
炭酸ガス注入方式
二次発酵は行わず、加圧タンクで炭酸ガスをワインに吹き入れる方式。機械の発達により省コスト・省工程でよい泡を造り出せるようになってきており、注目を集める方法です。
ランキングには、全方式のワインが登場していました。製法だけにフォーカスすれば瓶内二次発酵が最もよいワインのできる方法ですが、手間とコストがかかる分ブドウの値段を抑えたり熟成期間を短くするなどの工夫が必要になります。その点、低いコストでスパークリングワインを生産できるその他の方式は有利。販売価格に制約の少ない高級ワインならまだしも、普段カジュアルに楽しむ価格帯のスパークリングワインの場合は、製法のことはあまり気にせずお楽しみいただけばよいと思います。
コスパのよいスパークリングワインを探すコツ。生産者の規模が大切
ワインに限らずの話ですが、リーズナブルに良いものを造るにはやはり生産規模を大きくする必要があるのではないかと思います。1位のバルディビエソ、2位のサンテロ、それ以外のワイナリーもそうですが、生産規模の大きなワイナリーがずらり。たくさんのブドウを買い付けて価格を抑えたり、一度に造れるワインのロットを多くしたり、機械を入れて効率を上げたり。コストを抑えながらいいワインを造るには、やはり『量』が必要です。とはいえブドウの収穫を手作業にするとか、機械を管理したり、肝心な部分には必ず『人』がいてワイナリーの『哲学』とともに働いています。生産規模の大きなワインはスーパーの店頭やネット店で見つけられるものが多いですから、いろんな銘柄を試して自分に合うワインに巡りあっていただけたら輸入元として最高の幸せです!
参考文献 一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2018』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2018年 データ参照 『WANDS』No.447 2023.7-8号/特集「スパークリングワイン最新情報&市場動向」/ウォンズパブリッシングリミテッド