ボデガス・アスル・イ・ガランサとは
ボデガス・アスル・イ・ガランサは、スペインのナバーラD.O.に位置し、2000年に設立されたワイナリーです。
砂漠地帯に近く、乾燥した気候とピレネー山脈からの風により病害虫が少なく、有機栽培に適した環境です。設立者のマリアとダニエルは、自然なワイン造りを目指し、コンクリートタンクを使用した醸造方法で、エレガントで柔らかいワインを生み出しています。
ということで、噂通りワイナリーに近づくにつれてどんどん砂漠の景色に…
こんな何もないところなので、ダニさんが曲がるポイントがわからなくなって一瞬引き返す場面がありました。日没が迫っていたこともあって、ここで野宿したらペットボトルの水1本しかないし携帯は電波悪いし、初めて命の危機を感じました(笑)
こんなに広大な砂漠なのに曲がり角の標識はちっちゃい矢印だけだし、色も白で裁くと一体化しているし、こりゃ見逃すなぁという感じでした。
無事到着できてよかったです。
流れに任せたワイン造り
ワイナリーを見せていただきました。
収穫したブドウは左の写真にある入り口から運び入れられます。そのまま重力に沿って建物内に運ばれ(写真真ん中)、三枚目の写真の穴を通り地下に移動します。
半地下のエリアに入るとコンクリートタンクがたくさんあり、解放式のものとふたがついているものとありました。
コンクリートタンクは壁に厚みがかなりあり、容量も大きかったです。最大のものは23,000Lもあるとのこと。
スキンコンタクトできる面積が大きく取れるので、優しく緩やかにワインに影響を与えることができる、と話してくれました。
解放式のものはアルコール醗酵にのみ使用し、蓋がついているものは熟成まで使用するそうです。
ワイナリーの設備全体が半地下にあるような感じで、温度も一定に保たれやすいとのこと。コンクリートタンクも極端な温度変化を防いでくれます。
ただ、やはり醗酵中はタンク内の温度が上がってしまうようで、その際にこの金属の板を使うそうです。
この板、中に管がいくつも入っていてその管に冷たい水を通し、それをセメントタンク内に沈めることで温度の上がりすぎを防いでいるとのこと。
重力に沿った工程の流れ、コンクリートタンクの活用、温度管理の手法など、手をかけてなにか変化を起こす!というよりは、変化をできるだけ起こさぬよう、緩やかに安定した環境でワイン造りのすべての工程を行おう、としている姿勢が感じられました。
瓶詰の作業でもワインを重視
個人的に面白かったのが瓶詰の工程です。瓶詰の機械はこれだけ!少なくてびっくりしました。
この瓶詰の機械の左奥の壁の先が、セメントタンクがある醗酵のメインの建物になっており、そことの間の壁をくり抜いて(!)、パイプを通しているそうです。(上写真右奥の穴)
瓶詰をしている建物はワイナリー設立後に追加で購入した建物で、醸造しているメインの建物とは地下では隣り合っているものの別の建物です。そのため壁に穴をあける許可を取るのが大変だったそうです。
フィードバックを前向きに
アスルイガランサでは、出荷先からの指摘があったことをもとに生産工程を常に見直ししています(世界各国、ここまで真摯な対応するワイナリーは多くはありません)。
ダニさんは、日本のお客様がくれるフィードバックはありがたい、と話されていました。ともすればめんどくさいと思っても仕方ないような細かい指摘でも、フィードバックとして前向きに受け止めて下くれるだけではなく、そういう声をもっと商品の改善に役立てるという姿勢をお持ちです。
環境と伝統を重視し、一つのワイナリーとしての取り組みを超えた大きな視野を持つアスル・イ・ガランサは、自分たちの醸造、ワイン造り、ブドウ造りを超えた目線で考え、それを実際に行動に移していることがワイナリーのあらゆる点から感じられました。
徹頭徹尾、「より大きな環境、コミュニティのため」という意識を持っていらっしゃるワイナリーなのだと思わされました。
おまけ:羊の群れ
夜のレストランで羊飼いの方にお話を聞くことができました。
400年前から定住せずに羊の放牧をしてきた一族。スペインでは伝統的な方法で、代々羊飼いたちが踏み鳴らしてきた道はスペイン全土に広がっているそうです。
「伝統的であるが新しい取り組み」ということを繰り返し話されていたのが大変印象に残りました。
スペインでは羊の放牧は伝統的な方法で、当たり前だったのに産業化によって伝統的な自然、畑、環境とのつながりが失われてしまいました。
現在そのつながりを、現代社会にワインを通してつなげていく、というアスル・イ・ガランサの「新しい」取り組みは、「伝統的」なのに「新しい」というちょっと不思議な状態になっているということでした。
真ん中の黒い羊がボスらしいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。