ミネラルウォーターとは
国やエリアによってミネラルウォーターの定義は様々です。今回は日本とヨーロッパの『ナチュラルミネラルウォーター』についてお話しします。
以下はヨーロッパでの定義。“ナチュラル“という言葉がキーワードになります。
日本と大きく異なる点は大きく分けて4つあります。
1.採水地の環境保全が法律で義務付けられている事
2.いかなる加熱・殺菌処理も不可である事 ※二酸化炭素(炭酸)の添加は可
3.採水ポイントから2km以内で、かつ一切外気に触れずにボトリングを行う事
4.採水地=1ブランドであること
『ナチュラルミネラルウォーター』はヨーロッパでは“環境保護”が前提となります。処理せずそのままボトリングするため、自然を守る事が必須条件なのです。全てそのまま、名前の通り“ナチュラル”で手つかず、というものになります。加熱殺菌を行うと、含有酸素や生菌類が失われ、本来の味わいが損なわれてしまうと考えられているからです。
日本の場合、加熱殺菌を含む除菌処理がされている事がほとんどです。これは日本の法律上、環境保全の義務は無く、加熱殺菌処理が“ナチュラルミネラルウォーター”を謳う上でも許可されている事から来ています。
殺菌をしてもミネラルの含有量自体に大まかな変化はありませんので、自然のままのミネラル分、ということ。どちらが良い悪いではなく、言葉の使い方が違うだけで、考えるポイントが異なるものです。
現代では人工的な軟水化やミネラルの添加も可能ですが、本来のナチュラルミネラルウォーターはワインで言う“テロワール※”が全てです。「人の手を入れないという考えがあるから」こそナチュラル、というのがヨーロッパです。注目度が年々上がっている、自然派ワインとも通じる所があると思います。
※テロワール・・・ワインでいう、ブドウ生育地の土壌や地形、気候など環境すべてを表す言葉。
ミネラルウォーターの味の違い
日本ではミネラルウォーターを「無味無臭」と考えることがあります。しかしヨーロッパのミネラルウォーターは味わいがはっきりしているものが多くあります※。そのため個性が認知されやすく、ブランドとなって長く世界中で親しまれています。サンペレグリノやアクアパンナもその1つです。
※地形と地層によるもので、様々な土壌の組み合わせや採水されるまでの年月により特徴が色濃くなります。
日本では、ミネラルウォーターは硬度で表されますが、実はこの表記は世界では使われていません。
カルシウムとマグネシウムにある値を掛けると硬度という数値になりますが、その二つ以外にも何十種類の要素があります。硬度が低い=飲みやすい、硬度が高い=飲みにくい ということが想像されると思います。しかし実際は硬度の数字に関わらない所で、海水の様に塩気を持つものもあれば、強い苦味と渋味を持つような軟水も存在します。
その為海外では、水分中に溶け込んでいるミネラル全ての量を測ったものが指標となっています。
日本の「硬度」は1つの指標とはなりますが、ミネラルウォーターの味わいはミネラルの種類とバランスで決まります。
是非実際に飲んでみて特徴を感じとってみましょう。
ミネラルウォーターと食事の相性
ミネラルウォーターは「飲み物」の1つではなく、様々なお酒と一緒にテーブルに並ぶものでもあります。料理やお酒と並立し、味を引き立ててくれる「名脇役」と呼ばれる存在です。
食事とワインの間に「合う・合わない」といった『相性』が存在するように、ミネラルウォーターにも相性が存在します。
たとえば軟水といわれるミネラルウォーターは、旨味や風味が一定以上ある食事やワインの前では一切の存在感が現れなくなります。日本の水に関する“無味無臭”というイメージはここから来ていると思われます。
逆に硬水に生の鮮魚などを合わせると、苦さ、生臭さなどが表に出てきて悪目立ちをしてしまいます。
ダイニング向けのミネラルウォーターは、その間に入って食事やワインにつり合いをもたらし、それぞれを引き立てる役割を果たします。食事やワインをより味わい深く、また飽きがこないように感じ、体にも優しくお酒もつい進んでしまうような効果をもたらしてくれます。
サンペレグリノとアクアパンナの味わい
その中でも「ファインダイニングの名脇役」と言われるサンペレグリノとアクアパンナの特徴を紹介させていただきます。
サンペレグリノの味わい
サンペレグリノはミネラル含有分が高く(617mg/L)ほのかな塩味のアロマがあります。単体で考えると炭酸ガスが食欲を促進させ、重炭酸塩が消化を促進させてくれます。
特長は優しい炭酸。昨今は強炭酸に人気がありますが、炭酸の強さだけでいうとサンペレグリノはかなりソフトな部類に入ります。この炭酸が口の中を程よくリセットしてくれるので、次の一口をより鮮明に感じ、奥にある隠れたフレーバーが引き出されます。食べ疲れや飲み疲れの防止にも役立ちます。
そして高いミネラル分から来る重さがありますので、口に残る味わいや、脂質といったものを流す事ができます。炭酸は更にそれを助けてくれますが、強すぎると味覚を鈍らせてしまいます。
ワインを飲みながら飲む水にするならば、サンペレグリノと相性が良いワインは、白ワインですと(樽)熟成させていて酸味が低く余韻が長いもの、芳醇で果実味がしっかりと強いタイプです。
サンペレグリノには骨格があるので、軽やかでフレッシュなワインやスパークリングワイン、酸の高いワインなどでは少々バランスが崩れることがあります。 赤ワインは若く果実味あるタイプから熟成されたフルボディまで、全般的にお薦めです。ストラクチャーのあるワインが奥にもっているフレーバーを引き出してくれます。
サンペレグリノによく合う食事はワインとの相性に準じると考えて頂ければ結構ですが、お肉の脂質や火を入れたもの、ワインで言えばタンニンが残るようなものも、そっと流してくれますので非常に有効です。
アクアパンナの味わい
アクアパンナは類まれな滑らかさと“ワインとの調和“が特徴の中硬水です。
日本の平均的な水より少し硬度の高い108mg/L。にもかかわらず、日本人でも親しめるフレッシュで軽やかな印象をもたせてくれます。アクアパンナはその適度な重さが“滑らかさ”となり、食前・食中に関わらず、口の中を優しく洗い流し、整えてくれます。
炭酸のないスティルウォーターは注視されにくいのですが、実はとても優秀なミネラルウォーターです。特徴的なそのミネラルバランスは、少しだけ冷やすと舌から喉を滑らかに、滑り落ちる様に流れていきます。羽のように軽やかで、ベルベット&スムースと言われる喉ごしです。
極度に柔らかいミネラルウォーターは染み入るようなニュアンス、重たいミネラルウォーターは存在感があり飲み込むのに少々力がいる場合があります。その中間をうまく取った、摩擦無く滑り落ちる感覚。それがアクアパンナの評価です。
この滑らかさは食中に、素材や味わいを包み込むような働きをしてくれます。軽い水ではそれ以上の重さを持った味わいの料理やワインには何の影響も及ぼさず、重たい水では“水”の味が勝ってしまいます。
その中間の優秀なバランスはワインや料理と程よく調和してくれます。飲んだ後には、口の中の味わいを全て流すことはせず、余韻や香りを残したまま、食事とワインの間をつなげてくれるのです。
相性が良いワインはサンペレグリノに比べ、繊細なタイプとなります。
フレッシュな白ワインやスパークリングワイン、赤ワインなら若くフレッシュなものやミディアムボディのものがお薦めです。甘口ワインはサンペレグリノ・アクアパンナどちらも支持されますが、果実風味や全体のバランスをとってくれる意味合いではアクアパンナが舌に優しく馴染みます。
さらに熟成を経ている、それだけ単品で楽しむような赤ワインやハードリカーとも相性が抜群です。チェイサーとして使用すると、水を飲んでいる時ですら偉大なお酒の余韻を楽しませてくれます。