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『ワインは人』数々のワイナリーを訪問した徳丸編集長が語る日本ワインの魅力

『ワインは人』数々のワイナリーを訪問した徳丸編集長が語る日本ワインの魅力

2024年で発刊23年目のワイン専門誌『リアルワインガイド』は、それまでのワイン雑誌とは一風変わった内容で話題を呼びました。掲載するワインを自分たちで購入して試飲し、良いも悪いも忖度なくハッキリ書いてしまう消費者目線を大切にしたスタイルです。
編集長を務める徳丸真人さんに雑誌の発刊秘話や日本ワインの魅力、私が目指している「ワインのある日常」を広めるためのヒントなどについて詳しく伺いました。(2024/7/27)

インタビュアー:にっちー

モトックスワインアンバサダー。Instagramを通じて「ワイン好きが作る野菜おつまみ」を発信中。
長野県内のワイナリーに勤務し、さまざまな角度からワインを勉強している。
2024年9月よりワインのオンラインサロンを運営。

にっちー|ワイン好きが作る野菜おつまみ @nicchi_recipe

美味しいワインに出会った瞬間、旅が始まる

きっかけは近所のスーパーで売られていたコート・ロティ


にっちー:徳丸さんがワインを好きになったきっかけは何ですか?

徳丸:近所にスーパーがあったんですけど、そこはワインの品揃えがすごく良くて、見てたらだんだん飲みたくなって買ったのが最初ですね。当時は20代くらいで、1,000円以下のワインから買い始めました。普段はビールなんですけどワインも意外と美味しいなと思って、だんだん飲む頻度が増えていきましたね。

にっちー:ビール派だったのが、次第にワインを飲むようになったんですね。

徳丸:それで、だんだんもうちょっと高いワインを飲んでみたいなって思うようになって、ついに1,000円の壁を超えたわけです。そしたら「あ、より美味しくなったな」という気になるわけですよ。で、そうこうしてたらいつものスーパーにギガルの「コート・ロティ」っていうワインが売られてて。いつもはギガルの1番安いワインを買ってたんですけど「コート・ロティ」は3,500円で、当時の僕からしたらとてもじゃないけど買えないわけですよ。でも思い切って買ってみて、飲んだらめっちゃ美味しくてびっくり。これが美味しいワインの経験で、そこから旅が始まっちゃいました。

挑戦することで、新しい自分を見つけられる

自分が読みたい本が出てこない、それなら作ってしまおう


にっちー:雑誌を自分で作ってしまうくらいワインにハマっていたと思うんですけど、改めてリアルワインガイドを出版したのはなぜですか?

徳丸:発刊の動機は、一言で言えば自分が読みたい本がいつまでたっても出てこないから、自分で作っちゃおうって。まぁ、なんの経験もなかったからできたのかもしれないですね。下手に経験があると色々あれこれ考えちゃうから。ともかく、自分がやりたいことをやるために何をやればいいかを考える。それでもう突き進んで、ワーってやっちゃいました。

にっちー:自分が読みたい本がないからって、雑誌を作ってしまうのはすごすぎます。

徳丸:そんなことないです。当時もワイン雑誌はあったんですよ。でも記事広告だらけなので、そのワインを高く評価するしかない。で、読者が評価に惑わされちゃう。前々からふざけんなって思っていたんですけど、いつか広告を入れずにワインをしっかり評価してくれる雑誌が出てくるだろうと思ってたんですよ。でもいつまで経っても出てこない。じゃあもう仕方ないから自分で作っちゃおうと。

音楽雑誌が『リアルワインガイド』のルーツに


にっちー:出版経験ゼロ、ワインの資格もない中で雑誌を作ったんですよね?

徳丸:そうそう。ワイン好きな知り合いも0(ゼロ)です。

にっちー:そんな中で雑誌を作るって結構勇気がいることだなって思ったんですけど、何が徳丸さんをそんなに突き動かしたんですか?

徳丸:みんなから無謀だって言われました(笑)でも一言で言うと、自分が楽しいと思える方を選びましたね。元々は広告代理店にいて、次に外食産業で広告宣伝系の仕事をしていたんですけど、あるとき広告代理店にまた戻ることにしたんです。で、リアルワインガイドの表紙イラストを担当してもらっている漫画家・イラストレーターの江口寿史さんとは、雑誌を作るより前からずっと一緒に仕事をしてて「2人でなんかやろうぜ」って話が前々からあったんですよ。それで「広告代理店に行くよりも絶対楽しいよな」ってどんどん思い始めて、この道を選びました。

にっちー:サラリーマンを辞めて、自分の好きなことをやると決心したんですね。

徳丸:でも、当初は音楽雑誌を出そうと思ってたんです。

にっちー:え!音楽雑誌ですか!?

徳丸:ロックが好きだったので。それで、雑誌に掲載するCDとかは全部自腹で買って「この曲は良い」「このアルバムはイマイチ」みたいな感じで、忖度なく思ったことを書こうと。要するに、今のリアルワインガイドのルーツは音楽雑誌なんですよ。

にっちー:「本音のワイン雑誌」の型がすでにできあがっていたんですね。

徳丸:でも雑誌を作るにしても経験はなかったので、音楽誌の元編集長を誘って発刊の準備を進めていたんです。でも発行の3ヶ月前になって、その編集長が体調を崩しちゃって……。もうどうしようもなくなって、発行できなくなりました。それで今後どうしようかなって考えてたら「僕って音楽大好きだけど、ワインも好きだよな」と。じゃあロック雑誌でやろうとしてたコンセプトで、ワイン雑誌を作っちゃおうと思いました。

にっちー:音楽雑誌のおかげでリアルワインガイドがあるんですね。

徳丸:そう。編集長の経験もないしカメラもコピーライティングもやったことなかったけど、前職で周りにその道のプロがいっぱいいたんです。そのプロたちからたくさん学んだおかげで、雑誌を作れたというのもあります。その経験がなかったら、さすがに無理だったと思います。

日本ワインの凄さを知らないのは、日本人だけなのかもしれない

繊細性と旨味が確立された日本ワイン


にっちー:リアルワインガイドでは日本ワインの特集もされていますけど、改めて徳丸さん目線で日本ワインの魅力ってどんなところですか?

徳丸:繊細性と旨味ですね。そして何と言っても、同じ日本人が造っているワインということです。ともかく日本ワインだろうが世界のワインだろうが、ある意味同じなんです。美味しいって、個人差があるでしょう?それに好みや経験値もある。だけど、その中でみんなが美味しいと思えるものってやっぱり美味しいものだし。でもそのワインがめっちゃ高かったら馬鹿らしいけど、適正な価格だったら嬉しいしそのワイナリーは優良であると思います。

にっちー:ワインが美味しくても高かったら、なかなか手が出せないですもんね。

徳丸:そうそう。それに日本ワインの場合は、生産者がこんな不利な土地や気候条件の中で、日本人ならではの勤勉さと努力で一生懸命やっている。日本のワイナリーって国内だし、行こうと思えば行けるじゃないですか。ワイナリーの方と実際に会って話せるし。これは本当に消費者にとって良いことだと思います。それで、よりワインが美味しく感じられる。味ってそういう要素も大きいですよね。

良い人が良いワインを造る


徳丸:さっきも言いましたけど、むしろこの厳しい自然環境だからこそ、みたいなのを最近思ってます。ワインの繊細性って本当にそこからきてる。僕はね、土壌とか気候よりも『人』に興味があるんです。人なんですよ、ワインは本当に。いつも書くんですけど、良いテロワールを生かすも殺すも人次第なんですよ。もう本当に良い人が良いワインをつくる。海外や日本のワイナリーをたくさん見て回ったけど、絶対に間違いないです。

にっちー:私も土壌や気候よりも生産者に興味があって、だから直接お話を聞きたくてワイナリーに足を運んじゃいます。それでも最近はもう追えないくらいワイナリーが増えていますが、そこに関してはどう思いますか?

徳丸:さすがに過剰。造りたいと思う人が増えるのは良いことだと思います。だけど、基礎がない状態でナチュラルワインを造ってる人が多いですね。それで変なワインができちゃって、飲んだ人が「日本ワイン美味しくない」って思うのが悲しいです。

にっちー:まずは基本を身につけてから、新しいことに挑戦するのが大事ですね。

徳丸:しっかり経験を積んでからやってほしいですね。それと、そのうち後継者問題とかも出てくると思いますけど「ワインを造りたい」という人を育てられるかも重要ですね。人を育てる力を持った人であれば、 ワイン自体も美味しいものができてますよ。だからより一層『ワインは人次第』だと思います。

にっちー:確かに、最近は若い人も増えているので育成が大事ですね。それでは、日本のワイナリーに期待することはありますか?

徳丸:一言で言うと、真っ当なワインを造ってほしいです。日本ワインは、繊細性と旨味という個性がとっくに確立されています。誰かの真似をしても良いんです。美味しいワインは模倣から生まれるので。そして安易にワイン造りに飛び込まないこと。もうね、陳腐な言い方になりますけど、確固たる意思とやる気と自分なりの哲学がないと本当に失敗します。これはワイナリーの人がみんな言ってますし、僕もそう思います。

にっちー:私もワイナリーで働いていますけど、私には覚悟がないので本当にすごいなと思います。

徳丸:そう。なのでやる気や覚悟がある人はどんどんワイン造りの道に進んでいってほしいです。ただし、いきなりワイナリーをやるのは無理だから、まずはしっかり修行して経験を積んでください。そうすれば、最初の1歩を踏み出せます。

好きな味は人それぞれ、だから見つけてほしい

リアルワインガイドを通してきっかけを作っていく


にっちー:ワインをお家で飲む方はまだまだ少ないと思うんですけど、一般家庭になかなか浸透しないのはなぜだと思いますか。

徳丸:ワイン愛好家は自分でワインを選べるじゃないですか。そうじゃない大多数の方が、「何を買えばいいか分からない」から。これにつきます。

にっちー:確かに。私もよくフォロワーさんから「どういうワインを買えばいいか分からない」って言われます。でも好みって人それぞれだから、自分の好きな味を見つける必要がありますよね。もっと気軽にワインを楽しんでもらうために、徳丸さん目線ではどういう取り組みが必要だと思いますか。

徳丸:もう、うち(リアルワインガイド)では無理なんですよ。なぜなら専門誌だからワイン愛好家しか読まない。だけど、愛好家に向けて「あなたの周りに最近ちょっとでもワインに興味を持ち始めた人がいたら、このワインをおすすめしてほしい」って雑誌でよく書いてるんですよ。これがどこまで効果があるかって、それはもう微々たるもんですよ。でも現代の人たちって拡散力があるじゃないですか。だから少しでも何かのきっかけにつながるように力は尽くしています。

インタビュアー後記

SNSの枠を越えて、ワインの魅力を伝える


ワインが一般に浸透しにくいのは「選び方が分からないから」ということが、徳丸編集長とお話をしていて改めて実感できました。ワインを選べるようになるためには、知識はもちろんですが自分の好きな味を知る必要があると思っています。

私は今回のインタビューを通して、ワイン選びに悩んでいる方の力になりたいと再確認しました。具体的には、自分の好きな味を見つけて言語化できるようなサポートを行っていきたいと考えています。

Instagramでワインの魅力発信は続けつつ、SNSの枠を越えて「ワインのある日常」を叶えるための活動を行うことが今後の展望です。徳丸編集長とは違った角度から「ワインって美味しい!」「楽しい!」と思ってもらえるようなきっかけを作りたいと強く感じました。徳丸編集長の想いと行動力に勇気をもらったので、私も負けじと頑張ります!

生産者に焦点を当てながらワイナリーの魅力を探る


徳丸編集長のお話を聞いていて総じて感じたのは、人に興味があるということです。ワインの資格も経験もない中で、雑誌に一般愛好家のレビューを書くために自らコンタクトを取ったり、ワイナリーに足を運んで生産者のお話を聞いたりなど言葉の節々から感じました。

リアルワインガイドを読んでも、ワインだけでなく生産者やワインショップの方々にも光を当てていることが分かります。

私も徳丸編集長と同じように人に興味があります。なぜかというと、ワインに造り手らしさが出ると考えているからです。生産者は自分なりのセオリーや相当な覚悟を持ってワイナリーを運営し、それぞれのやり方でワインを造っています。

だからこそワインは面白いし、ワインやワイナリーだけでなく生産者の魅力もお伝えしていきたいと考えています。生産者を知れば知るほどワインもワイナリーもより大好きになっていくので、みなさんにも記事を通して少しでも感じてもらえたら嬉しいです。

実際に数件のワイナリーを訪問しインタビューさせていただいたので、次回の記事も楽しみにしていてください!

にっちー|ワイン好きが作る野菜おつまみ @nicchi_recipe


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