台風コロッケがSNSをザワつかせる
「台風がくると、総菜売り場でコロッケが売れる」。私がそんなトピックを知ったのは2018年のこと。ワインの仕事をしているもので、当時は「なにか企画として使えるようなネタはないかなー」とモニターを眺めていたのです。たまたま見つけた『台風コロッケ』が面白そうだと思い「台風の時に、おうちでコロッケとワインを合わせて楽しんでもらえたら」みたいなノリで、一つの企画を立ち上げました。
スーパーマーケットで平時は『コロッケに合うワイン』、台風がきたら『台風コロッケ×ワイン』のB面に切り替えられるという販促企画を社内で提案してみることにしました。社内での評判は上々。そして数週間のうちに台風がやってきました。私の住む東京地方を通過するのは夕方~夜。最寄りのスーパーで買ってきたコロッケとスパークリングワインで台風をやり過ごすつもりでした。しかし、、、
2018年の台風21号は洒落にならない規模でした。私の勤める会社の本社や倉庫(どちらも大阪)はもとより、日本中に被害が出て「台風だ、コロッケだ」と言っていられない風潮になってしまいました。そのような経緯で私は発表直後のこの肝いり企画をそっと封印することにしました。
今こそ、台風コロッケでおうち時間を
あれから6年。新型コロナが流行ったことで、自然災害時にも「無理して外出しない」という選択が正とみなされるようになったように感じます。台風の日は外出せず、コロッケとワインを自宅で楽しむというのは悪くないかもしれません。そう考えて私は、2018年当時の資料を引っ張りだしました。調べたことを改めてこのページに揚げなおしてみようとおもいます。
台風コロッケの起源と由来
すべてのはじまりは、2001年8月21日です。 当時の「2ちゃんねる」『上陸秒読み実況スレッド』にこんな投稿が書き込まれました。
念のため、コロッケを16個買ってきました。もう3個食べてしまいました。(元ネタ)
この書き込みが台風コロッケの起源です。
「台風の日に外に買い物に行きたくない」というネットユーザーから共感を呼び、以来「台風の日は自宅でコロッケ=台風コロッケ」と呼ばれるようになりました。今読み返してみると、16個も買ったの?もう3つ食べちゃったの?みたいな、ほのぼのしたかんじで台風の緊張感を和ませてくれるようだと感じます。2017年には大手のスーパーマーケットの『イオン』が台風接近時にキャンペーンを打ち出したところ、惣菜売場で通常の1.5倍のコロッケが売れる珍事に発展。再度注目を集めました。そして20年以上経過して今でも『X』(当時はTwitter)をはじめとするSNSにその場を移してザワつかせている、これが台風コロッケの由来となっています。2024年現在、23年目の台風コロッケは依然強い勢力を保ったままのようです!
Twitter(当時)のグラフで見る台風コロッケ
これは2017年10月30日の天気図イメージです。
ちょうど台風が日本列島近くを通り過ぎて北海道付近で温帯低気圧になったところです。このときツイッター(現在のX)では「コロッケ」のツイートが急増していました。
ツイート数グラフ 2017/10/30『コロッケ』 (当時のスクショ)
当時はまだSNSのユーザーが少なく、「台風=コロッケ」の認知も今ほど高くなかったはずです。私の記憶では大手サイトや企業がツイッターを活用していた例も今ほど多くありませんでした。台風に関係なくコロッケの投稿が急増したことは考えられないと思います。
2022/7/4 『台風コロッケ』
次は「台風コロッケ」が勢力を拡大したと思われる2022年のもの。台風4号が、翌日から本州に台風が近づいてくる7月4日のグラフです。
台風接近のニュースとともにツイートが上昇。やはりSNSをじんわりとザワつかせていましたね。「台風コロッケ」の認知が今なお高まって成長し続けていたことは感慨深いです。一番大切なのは台風の被害がないということですが。
コロッケとお酒を楽しむには炭酸入りがおすすめです
私の本職なもので「コロッケにはスパークリングワインが合うよ」ということもついでに知っていってもらえたなら幸いです。
食べ物とお酒のペアリングを考えるときに、公式みたいなものがいくつかあります。
- 油を使う料理に、アルコール感
- 食材の旨味を引き立てるのに、炭酸
唐揚げにビールやハイボールが合うのは、ちゃんと裏付けされているんです。唐揚げもコロッケもおなじ揚げ物ですから、コロッケとワインを一緒に楽しむなら炭酸系のスパークリングワインを合わせればOKです。
コロッケにおすすめ!な、スパークリングワイン
2018年に企画を作ったときに、6名(当時、そのうち4名がソムリエ)で検証したコロッケに合うスパークリングワイン3本をご紹介させていただきます。
ポテトコロッケ、ビーフコロッケ、カボチャコロッケなど、いろんなバリエーションのあるコロッケですが、この『バルディビエソ ブリュット』ならどれにも合います。コロッケのための一本!と言っていいほど。味わいは辛口で、チリの太陽を浴びて造られたブドウの果実感がコロッケの旨味とぴたり。チリのみなさん、ありがとう!きっと台風一過の青空に叫びたくなるはず。
コロッケの食べ方はソースかけて食べる派が圧倒的に多いと思うのですが、そんなソースラバーが選ぶべきは『サンテロ ピノ シャルドネ スプマンテ』。果実が豊かな辛口タイプ。チリのバルディビエソに比べるとややドライで、これがソースの甘味と相性バツグン。きっとイタリアのみなさんがこの事実を知ったら日本のソースをうらやむに違いありません!
最後に少し変わりダネ。クリームコロッケを甘さのある赤のスパークリングワインと合わせる意外な発見。ワインの甘味がクリームの濃厚な旨味と合うんです。炭酸の効果で味が重たくなりすぎず、自宅にいながらレストランのような組み合わせを楽しむことができますよ。おすすめは『サンテロ 天使のロッソ』です。
台風がきているときは、情報が大切
大きかれ小さかれ、台風は少なからず何かしらの被害や心配ごとを人々にもたらします。そして被害を忘れかけたときに発達した大型の台風がやってきます。ワインとコロッケでやり過ごせそうな台風のときと、そうでないときがありますので、日頃から気象情報に注意しておくことが大切だと思います。「#台風コロッケ楽しんでたら台風すぎちゃってたな」とツイートできるくらいが一番だな、と願いながら締めくくりたいと思います。