書いているのはこんな人
40代のおっちゃんです。学生のときは日本酒嫌いでしたが、社会人になってしばらくしたら日本酒がフィーバーした経験をもちます。ワイン会社で働く約20年の間に『利き酒師』や『SAKEディプロマ』の資格を取得。日本酒とビールをこよなく愛し(もちろんワインも)、酒場放浪記を毎週録画しています。
最初の一本を選ぶ方法
日本酒を好きになる第一歩は、『お気に入りの銘柄が見つける』ってことです。
それによって他の銘柄との違いがわかるようになったり、別のお気に入りが見つかったりします。
私は仕事の先輩とお店で飲んでいるときに先輩の真似から入りました。とっかかりはネットの評判でもよいですし、知人や酒屋さんの詳しい人に聞いてみるのもよいです。ラベルのデザインで選んでみるのも楽しいですし、片っ端から試してみるというのもよいでしょう。
最も大切なのは、それを自分が美味しいと感じたかどうかで、それを自分の舌で確かめることです。例えば評判が良いお酒だから必ず自分の口に合うとは限りません。人に流されず「美味しい」って感覚をぜひとも大切にしてください。このコラムでは最後にいくつかおススメの銘柄をご紹介しています。
飲み比べの方法
日本酒が豊富な飲食店ではいろんな銘柄を飲み比べしてみたくなるもの。でも一日で多くて3銘柄くらいまでにすると早く上達しますよ。味と銘柄を記憶に残せる程度にしておくっていうことが大切で、たくさん飲みたいときは「同じ銘柄おかわり」にします。これで覚えた味や銘柄の数に比例してどんどん日本酒が好きになっていけると思いますよ!
お気に入りを買ってみよう。購入するお店の選び方
日本酒を買うときは町の酒屋さん、デパートのお酒売り場、高級スーパーで購入するのがおすすめです。私が日本酒を買うときは、お店に日本酒用の冷蔵ケースがあるかをみます。セレクトに力を入れているお店には必ず品質保持のための冷蔵ケースがあるからです。たとえば旅行に行ってお土産屋さんを見たときに、お地酒コーナーに冷蔵ケースがあれば良い銘柄がある可能性が高いという具合です。判断ポイントにしてみてください。
ネットでの買い方
まずは1本ほしい銘柄を決めましょう。それを販売しているショップをオンラインで探します。目的の銘柄をカートに入れたら、楽しい冒険のはじまりです。飲んだことのない銘柄や、過去に飲んだ蔵元の別銘柄などをカートに入れて6本or12本まで増やしてポチします。
目的の銘柄と、未知の銘柄を組み合わせて幅を広げるのがポイントです。「はずれを引きたくない」というのは私も同じですが、「これも経験のうち」と思って自分の勘を信じましょ!
貴重な銘柄
ネット動画などで評価の高い銘柄の中には入手困難なプレミア銘柄が含まれていることがあります。
それらを買うのに躍起になる必要はありません。貴重なお酒は「飲んだ」ってことで満足っていう側面があるのですが、自分好みであるかどうかは別問題です。「だからチャンスがあったら飲んでみる」くらいでよいと思います。本当に日本酒好きの人は、日頃から手に入れやすい、好みに合った「日常用」レパートリーを必ずもっていますよ。
買ったお酒の保管方法
お店でお酒を買ったとき、冷ケースに入っていた場合は自宅でも冷蔵庫で保存しましょう。『生酒』や温度変化に弱い、香り高い銘柄の多くはそのように販売されていることが多いです。常温の棚にあったお酒は自宅でも常温保存で大丈夫。ただし、どんな日本酒でも高い温度での保管には不向きです。冷蔵庫に余裕があれば入れておくようにしましょう。
食事しながら楽しむのがおすすめ
わたしの作る晩ご飯は、和の惣菜が多いです。仕事の延長上でワインに合わせることもありますが、一番大切にしているのは食卓の雰囲気です。おかずが唐揚げだったら迷わずビールやハイボールを選びますし、さっぱりしたいときはサワーっていうこともあります。その日次第で自由に決めますが、日本酒を選びたくなるのはお刺身があるときと、中華料理のときが多いです。
日本酒に合いやすい料理
一般的にワインやビールに含まれる「鉄分」(栄養素のひとつ)は、魚介類の生臭さを助長します。
鉄分は昔から日本酒造りに不向きだとされていたため、日本酒の仕込み水には鉄分がほとんど含まれません。だから日本酒は刺身と一緒に楽しんでも生臭さが出ず、むしろ酒の旨味と魚の旨味が相乗効果をもたらしてくれます。日本の食と酒の文化は本当に見事だなぁ、と最も思わされる瞬間です。
繊細な味わいである日本酒ですが意外にもその酒質は強く、油分や香りの強い中華料理にも合います。むしろ日本酒の強い旨味や酸といった要素はお互いを引き立ててくれるもの。町中華メニューもおすすめのペアリングです。
おすすめの温度=基本は『冷酒』がおすすめ
「冷酒」は冷蔵庫で冷やした日本酒のことを言います。
細かくは「雪冷え」「花冷え」「涼冷え(すずびえ)」などがあります。
精米技術が発展した現代では雑味が少なく香りの繊細な吟醸系の日本酒が多いので、初心者の方は冷酒で楽しむのがおすすめです。
その他の温度
冷~燗まで様々な温度で楽しめるのは日本酒の大きな特徴ですから、これにも簡単に触れますね。
冷や
「常温」のことです。
冷蔵庫がなかった時代には夏に酒を涼しい場所におき、それで一服の涼を楽しんだとされます。それがまさに冷やのことです。味わいが強めの「生酛造り」のお酒は冷酒よりも少し高い温度である冷やで楽しむのもおすすめです。
燗
お湯で温めた温度です。
細かくは「人肌」「ぬる燗」「上燗」「熱燗」「とびきり燗」などがあります。燗することで日本酒の甘味を感じやすくなり、まろやかさ・ふくよかさを楽しむことができます。寒い日にぜひ挑戦してみましょう。
『吟醸』『特別』は香り高い、くらいに思えばOK
この二つは一般的に香りが良好な造りの銘柄につけられる名称です。ただし、造り手(蔵元)によってけっこう違います。吟醸、特別でもあまり香らない銘柄があれば、吟醸や特別ではなくても香り高い銘柄もあります。その蔵元の銘柄のなかで香り高いかどうか、くらいに考えておくようにしておくとよいでしょう。
特別~ |
精米歩合60%以下または、特別な製造方法(要説明表示)/香味・色沢が特に良好
|
~吟醸 |
精米歩合:60%以下/吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 |
~大吟醸 |
精米歩合:50%以下/吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好 |
精米歩合:原料米を削る度合いです。削り込んだ方が雑味を少なくできます。歩合が低い方が残る部分が少なくなり、逆に削る量が多くなります。
『純米』『本醸造』=あまり気にしない
「本醸造」は醸造アルコールを添加した日本酒(※特定名称酒)のことです。添加しないと「純米」になります。
純米こそ日本酒という考え方を耳にすることはありますが、最初はあまり気にしないでOKです。アルコール添加(本醸造)は「軽い飲み口」や「ドライな味わい」なのかな、「香り高め」かな、と思いを巡らす程度。実際のところ「純米」なのに極辛口な銘柄はいくらでもありますし、「本醸造」で旨味の濃いものだってたくさんあります。あまり頭でっかちにならないように、気軽に楽しんでみましょう。
※特定名称酒には8種あります。本醸造、特別本醸造、吟醸、大吟醸、純米、特別純米、純米吟醸、純米大吟醸。これ以外は「普通酒」に分類され、パック酒や大容量のペット容器で販売されている商品の多くはこれに該当します。
『アルコール添加』のこと
添加用のアルコールは主にサトウキビや甜菜を原料に蒸留したほぼ純アルコールで無味無臭です。
国産の米を原料にする蔵もあり、水で薄めて添加されます。
江戸時代に香味を整え、酸敗を防ぐ方法としてはじまり、戦後の酒造りが大変だった時代にはかさ増しのために使われた時期があります。現代では原料米の解けを促進したり、酵母の香りを高めたりといった良い効果を狙って使われるのが普通です。添加量には制限値※があり、粗悪な酒造りのために使用することは今ではできません。
※「特定名称酒」の場合アルコール濃度95%換算で添加重量は白米重量の10%以下
ここを味わう!日本酒の味・風味の要素
「甘味」の度合い
日本酒は米のでんぷんを麹で糖分に変え、それを酒母でアルコール醗酵させて造ります。残った糖分や旨味の成分が甘味として存在します。その度合いがどのくらいなのかを自分の好みと合わせて楽しみましょう。
このときラベルに表示されている『日本酒度』は、目安になります。水を基準として、比重が軽い(=糖分が少ない)「+」側が辛口、「-」側が甘口と予想するのに使います。比重は糖分で重くなり、アルコールによって軽くなります。ですから「日本酒度が高くても甘みを感じる」逆に「マイナスだけど辛口(とくに低アルコールのとき)」ということもありえます。
わたしがよく出会う辛口の日本酒度は0~+10くらい。でも+1~2くらいでも甘く感じるときがあり、数字の大きなものでは+12の極辛口も見かけます。マイナスは甘口の目安ですが、-3なのに辛口に感じることもあります。それより低ければ甘味が主体になってきて、-10だとけっこう甘いです。日本酒がベースの「梅酒」だと-40くらいになります。
「旨味・コク」の度合い
甘・苦・塩・酸・旨の5味のうち、「旨味」が多く含まれるお酒なのは日本酒の特徴のひとつです。日本酒にはアミノ酸が含まれていて、それによって旨味を感じることができます。アミノ酸には旨味のほかに甘味、酸味、苦味を感じさせる種類があります。
アミノ酸の量は『アミノ酸度』として表示されます。
あくまでも参考値ですが、吟醸酒の場合1.0~1.3、純米酒では1.5くらい、なかには2.0を超える銘柄もあります。
日本酒のコクは甘味とともに広がるアミノ酸などのバランスから感じられるものといえます。
「酸味」の度合い
日本酒には有機酸が含まれています。いくつかの種類があって酸味の感じ方に違いが出ますが日本酒には酸味がわずかながら含まれます。酸味を感じると味わいに締まりがでて、甘味・旨味を相殺して辛口のように感じさせてくれます。
参考になるのは『酸度』です。一般的には酸度1.0以下で柔らかく軽快な印象になり、1.5を超えるとストラクチャーやフレッシュ感を感じると言われています。私の場合は1.5を超えたあたりから心地よいことが多いのでこれも個人差があります。あなたの好みはどのくらいでしょうか?
これらの味わいの要素がどのくらいなのか、自分にとってどんなバランスの銘柄が口に合うのか感じながら飲むと好みの銘柄を見つけやすくなりますよ。
酒器のこと
日本酒に適した器は何でしょうか。これはもう、本当に人それぞれ(ゴメンナサイ)。
お気に入りの『お猪口(おちょこ)』や『ぐい吞み』を使うもよし、コップで飲むのもよし、ワイングラスで飲むのもOKです。私の場合はその日の気分で選んでいます。
お猪口・ぐい呑み
小ぶりなため、少しずつ口に含んで楽しめます。液面が狭いので、香りは穏やかに感じられます。色んなデザインや作家さんのものがあるので集めるのが楽しい。燗を楽しむときはぴったりです。
コップ・グラス
冷酒や冷やを楽しむときに。猪口やぐい呑みに比べて容量が多いので注ぎ足す回数が少ない。たくさん飲みたい日に。
ワイングラス
液面が広く、すぼまった形状なので香りをとるのに適しています。日本酒を口に含んだとき最初に舌先にぶつかりやすいので甘味を強く感じます。真剣に向き合いたいときに。
筆者おすすめの銘柄たち
飲み切らなかったときの『保存方法』
もともとついていたキャップで瓶を封して冷蔵庫へ、が基本です。
どんなお酒も空気との接触で風味が変わるものなのですが、酸化の進みを遅くするためには温度を下げて保存することが有効です。より酸化を防ぎたい場合にはワイン用の保存グッズを使うのが有効ですが、日本酒の場合は1週間以内に飲み切るようにしていればさほど気にならない場合が多いです。