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世界一の人気!『カベルネ・ソーヴィニヨン』の特徴。完全ガイド

世界一の人気!『カベルネ・ソーヴィニヨン』の特徴。完全ガイド

赤ワイン用ブドウの代名詞ともいえる『カベルネ・ソーヴィニヨン』は、世界で最も栽培面積が広いトップ品種です。どのようなブドウで、どのようなワインができるのか、発祥や歴史、おすすめの銘柄までを一挙にご紹介します。

カベルネ・ソーヴィニヨン(cabernet sauvignon)とは

数あるブドウ品種のなかでも、世界で最も広く栽培されている本格的な赤ワイン用のブドウ品種です。カシス、ヒマラヤスギ、強いタンニンといった個性的な特徴をワインに与え、リーズナブルな価格のワイン~熟成によって繊細かつ壮麗になる高級ワインの生産まで幅広く用いられています。

 

カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴

カベルネ・ソーヴィニヨンは青みを帯びた小粒で厚い果皮の実をつけます。果肉中の種子の割合が高いので、ポリフェノール含有量が非常に多くなります。暖かく乾燥した排水のよい気候と土壌を好み、栽培中は病気にはかかりやすい欠点も。熟すのが遅めなので出身地のフランス、ボルドー地方では秋の降雨が遅れる年が良いヴィンテージになる条件です。

カベルネ・ソーヴィニヨンの味は?

暖かい畑を好みポリフェノールが多くむため、ボリューム感がありタンニン豊富で骨格のあるフルボディのワインになります。若い時には新鮮なカシスや黒果実、ブラック・ペッパーの風味があり、熟成とともに深く精妙なブーケ(=熟成香)が現れます。完熟しないと野菜やグリーン・ペッパーのノートが顕著になりますが、完熟するにつれてこれらの要素は次第に減りワインに僅かな複雑さを与える程度になります。

カベルネ・ソーヴィニヨンに合う料理

フルボディでタンニンが豊富なため、味わいが濃い料理や肉料理と非常によく合います。

グリルしたステーキ

特にリブやロース、サーロインなどの赤身肉はカベルネ・ソーヴィニヨンの強いタンニンとよく合います。

ラムチョップ

ハーブやガーリックでマリネしたラムの料理を、ワインの豊かな味わいが引き立てます。

カベルネ・ソーヴィニヨンの発祥

この品種はフランスのボルドー地方を含むジロンド県に由来します。18世紀の中期より前に『カベルネ・フラン』と、『ソーヴィニヨン・ブラン』の交配で生まれ、おそらく自然交配ではないかとされています。形態は『カベルネ・フラン』、木質と葉は『ソーヴィニヨン・ブラン』に似ていたことからブドウ分類の専門家によって『カベルネ・ソーヴィニヨン』と名付けられたようです。

しかし実際にこの親子関係が判明したのはブドウの遺伝子が研究された近年の1996年になってからです。黒ブドウのカベルネ・ソーヴィニヨンの片親が白ブドウである事実にワイン関係者は驚きました。

カベルネ・ソーヴィニヨンの歴史

カベルネ・ソーヴィニヨンの記録が確認できる最初の記録は1763~77年にかけて書かれたリブルヌ(ポムロールに隣接する町)の市長の会計記録です。1784年にはポイヤックで作成されたブドウ品種カタログの中で「黒い、最高に質のよいワインになる」(Gros cavernet sauvignon)「前者についで良い質のワインになる」(Petit cavernet sauvignon)と紹介されています。

18世紀以前のボルドーでどのような品種が栽培されていたのかは、記述があまり多く残されていません。しかし60を超える多くの品種が栽培されていたことは確かなようで、その中にはもちろんカベルネ・ソーヴィニヨンが含まれていました。ヴィデュール(ビデュールBidure)と呼ばれていて紀元前3世紀頃にガリア人によって栽培されていたビトゥリカ種の子孫だと考えられていたようです。

1960年代にはボルドー農業会議所と国立農業研究所によって商業的なクローン開発が進められました。優秀な遺伝子をもったクローン169、191、337はこの時期にできたものです。ボルドーでは各シャトーが優秀なクローンを選抜するためにマッサール・セレクション(自分の畑で選抜した樹を台木に接いで増やす方法)が行われており、独自性や品質を高めることにつながっています。

20世紀後半にはボルドーをお手本にする世界中のワイン産地に広まり、シャルドネやシラーとともに「国際品種」と呼ばれるようになりました。

代表的な高級ワイン

ボルドーでは開花期の天候不順などでカベルネ・ソーヴィニヨンがよく熟さないときの保険的役割のためメルローやカベルネ・フランととブレンドされます。カベルネ・ソーヴィニヨンの作柄が最上の時、ボルドーのグラン・ヴァンに求められるすべての要素がもたらされると言う専門家もいます。
現に最上の造り手たち、メドック一級格付けシャトーの『ラフィット』、『ラトゥール』、『マルゴー』、『ムートン』、そして『オー・ブリオン』はブレンドのうち90%もをこの品種にすることがあります。

世界で最も栽培されているブドウ品種

『国際品種』であるカベルネ・ソーヴィニヨンは、2016年のデータでワイン用のブドウ品種の中で栽培面積が世界最大でした。世界で最も人気が高いブドウであることがわかります。

品種2016 面積(ha)2000-2016
カベルネ・ソーヴィニヨン
310,671
+87,597
メルロー
266,440
+53,072
テンプラニーリョ
219,379
+126,009
アイレン
203,801
-184,177
シャルドネ
201,649
+56,106
シラー
181,185
+78,695
ガルナッチャ・ティンタ
150,096
-66,253
ソーヴィニヨン・ブラン
124,700
+59,510
トレッビアーノ・トスカ―ノ
120,343
-16,858
ピノ・ノワール
105,480
+36,670
サンジョヴェーゼ
73,464t
+4,587
リースリング
59,805
+16,489
ボバル
59,189
-40,939
カベルネ・フラン
56,052
+4,078

カベルネ・ソーヴィニヨンの生産国ランキング

世界で最も栽培面積が広いのは、品種の発祥国であるフランス。次いで『新世界ワイン』で名を馳せたチリ、世界最大のワイン消費国で生産量も伸びているアメリカ合衆国が続きます。日本でも栽培が行われており、生産量順に山梨・長野・山形・兵庫・新潟と続きます。

2016 面積(ha)2000-2016
フランス
46,555
-6,858
チリ
42,409
+6,442
アメリカ合衆国
40,837
+23,264
中国
40,300
+?
オーストラリア
23,987
-1,010
スペイン
23,139
+18,620
アルゼンチン
15,356
+1,580
イタリア
14,240
+6,558
南アフリカ
10,589
+1,765
日本
279 t
+??

※ 日本のみ2021年の生産量(t)令和5年(2023年)データ

世界の生産地と、おすすめ銘柄

世界の多くのワイン産地で栽培されているカベルネ・ソーヴィニヨンですが、『偉大なワイン』は多くの地域のうちほんのわずかな場所でしかを造ることはできないとされています。最も完成された場所にはボルドーのメドック、ぺサック・レオニャン、スペインのペネデス、アメリカ合衆国のナパ、ソノマ、サンタ・クルーズ・マウンテンズ、ワシントン州の一部、イタリアのボルゲリ、チリのプエンテ・アルト、オーストラリアのクーナワラ、マーガレット・リヴァーといった名前が挙がります。

モトックスが輸入している銘柄の中からおすすすめをピックアップしてご紹介します。

ボルドー

ブドウの作柄によって、毎年ブレンド比率が変わるボルドーの中でも比較的カベルネ・ソーヴィニヨンの多い銘柄。メドック格付け2級の『デュルフォール・ヴィヴァン』が手掛ける銘柄。

手頃な価格ながらカベルネ・ソーヴィニヨンの比率が高い人気シャトー。

南フランス

ボルドーよりも比較的気候が安定している南フランス産。果実味が豊かでリーズナブルな価格は普段飲み用にぴったりです。

気候が安定しているため有機栽培がしやすい南フランスらしい銘柄。

スペイン

フランスと国境を接するため、スペインの中でもカベルネ・ソーヴィニヨンなどの国際品種を早くから取り入れていたナバーラ州のもの。

スペインで「ワインの湖」称されるカスティーリャ・ラ・マンチャ州産のリーズナブルなカベルネ・ソーヴィニョン。銘醸地リオハの生産者が手掛けています。

イタリア

銘醸地トスカーナ州では1970年代からスーパータスカン(スーパートスカーナ)と呼ばれる、主にボルドー系品種を用いた赤ワインが開花して国際的に大人気になりました。こちらは熟れた柔らかなスタイルのカベルネ・ソーヴィニヨン主体の高級ワインの一つ。

北イタリアの山あいで造られるカベルネ。高標高の寒暖差によって熟度とエレガンスが両立します。

アメリカ合衆国

カベルネ・ソーヴィニヨンの第二の故郷といわれる、カリフォルニア州北部『ナパ・ヴァレー』の老舗。

カリフォルニア州南部、サンタ・バーバラを代表するボルドー品種の名手。ハッピー・キャニオンゴルフ大会『マスターズ』の期間中に、クラブハウスでサービスされるほどの実力派。

カリフォルニア州でワイン造りをはじめて100年のワイナリー。創業当時の禁酒法時代へのオマージュとして生まれたカベルネ・ソーヴィニヨンの銘柄。

チリ

チリの多様なテロワールをワインに映しとる『バルディビエソ』社のスタンダードなカベルネ・ソーヴィニョン。

チリのなかでもカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適した、セントラル・ヴァレーの限られた畑のもの。

セントラル・ヴァレーの中でもより高い品質のカベルネ・ソーヴィニヨンが生まれるマイポ・ヴァレーの限られた畑のもの。

アルゼンチン

2010年にアルゼンチンで初めてビオディナミの認証(デメテール)を取得した自然農法の草分けワイナリー。

オーストラリア

世界的にみて卓越したカベルネ・ソーヴィニヨンを生み出すクナワラ産。力強い凝縮した味わいです。

高い標高でエレガンスを感じさせる。ボルドースタイルでメルローがブレンドされ、熟成がかかって落ち着きのある味わい。

南アフリカ

フランス、主にボルドーでワイン造りを学び「南アフリカで初めて世界に名を馳せた」と賞賛とされるワイナリーのカベルネ・ソーヴィニヨン。

南アフリカで1960~80年代に生まれたクラシックな長熟スタイルのケープ産ワインをイメージ。

「世界の日本人妻は見た」で、彼らのワインを試飲した有名人が大絶賛したカベルネ・ソーヴィニヨンです。リーズナブルな価格でありながら、素晴らしい品質を誇るります。

ルーマニア

ボルドーやブルゴーニュと同じ緯度線にあり、年間平均2000時間以上の日照時間を誇る畑。ルーマニア国内でも珍しい黒土層と石灰岩の多い土壌を有していて、夏冬の寒暖の差が大きくブドウ栽培に最適な気候から生まれます。

ブルガリア

ブルガリアの北西部にあるボロヴィッツァ村のワイナリー。人の介入は最低限に抑えた丁寧な造りで村のテロワールを映しとる生産者です。

日本

長野県の安曇野産。ボルドー品種を得意とするワイナリーで、日本ワインらしい柔らかさと骨格を併せもちます。

新潟県のワインコーストで造られている、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローのブレンド。酸味をヒントにした美しいカベルネは、日本にしかない独特な上品さをもった一本。

関連コンテンツ

参考
ジャンシス・ロビンソン、ジュリア・ハーディング、ホセ・ヴィアモーズ/『ワイン用葡萄品種大辞典』/共立出版株式会社/2019年
ジェイムズ・ローサ―著・山本 博監修/『ボルドー』/ガイアブックス/2011年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第8版』/ガイアブックス/2021年

データ参照
キム・アンダーソン/『Which Winegrape Varieties are Grown Where?』/アデレード大学/2020年/2023年7月9日閲覧
https://www.adelaide.edu.au/press/titles/winegrapes

ワイン製造業/『酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和5年アンケート)』/国税庁/令和5年(2023年)/2024年8月27日閲覧
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizo_oroshiuri/index.htm

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