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ワインのキホン

畑ごとの特徴。『シャブリ』のプルミエ & グラン・クリュ

畑ごとの特徴。『シャブリ』のプルミエ & グラン・クリュ

シャブリの町を見下ろすように点在するこのエリアの一級畑、特級畑の特徴を解説します。

格付け上位の『特別なシャブリ』

シャルドネはシャブリ地区の粘土石灰岩質土壌の冷たいテロワールによく耐え、他の環境では決して生まれない風味をもつようになりました。その味わいは、酸とミネラルによって硬く、決して粗くはなく、石や鉱物を想起させると同時に、若草の香りをもちます。シャブリ・グラン・クリュ(特級畑)は当然のこと、プルミエ・クリュ(一級畑)でも味わいに貫禄があり、強靭で、不朽と思われるほどです。驚くほど長命で、10 年ほど寝かせると独特の旨味のある酸味がうまれ、緑色を帯びた黄金の瞳が意味ありげに輝くようになります。

シャブリの全体図と、代表的なプルミエ・クリュ

シャブリ地区には40のプルミエクリュがあります。7つあるグラン・クリュの北西部(フルショームなど)や東側(モンテ・ド・トネールとモン・ド・ミリュー)を縁取る畑には有利な条件が整っています。これらのプルミエ・クリュの最高品は、シャブリで最も金額に見合うかそれ以上とも評されます。
1960年には普通のシャブリよりもシャプリ・ブルミエ・クリュの畑の方が多かったのですが、今日では普通のシャブリを生み出す畑が4倍近くあるためプルミエ・クリュのほうが質・量ともに貴重なものになりました。

中にはあまり知られていない畑が含まれますが、これらの多くは18の有名なプルミエ・クリュの名前で市場に出すことが許されています。

18のプルミエ・クリュを名乗ることができる畑を└以下で示し、とくに重要な畑を太字で表現しています。

レ・ボールガール/Les Beauregards
└コート・ド・キュイシー/Cote de Cuissy

ボーロワ/Beauroy
急傾斜で日照に恵まれ、バランスが整う。
└トローム/Troesmes
└コート・ド・サヴァン/Cote de Savant

ショーム・ド・タルヴァ/Chaume de Talvat

コート・ド・ジュアン/Cote de Jouan

コート・ド・レシェ/Cote de Lechet
太陽にあふれて熟す強い果実味。繊細なミネラル感で肉付きあり表情豊か。

モンマン/Montmains
日照に恵まれるが涼しい。GCブランショにかなり近い条件。
└フォレ/Forets
└ビュトー/Butteaux

ヴァイヨン/Vaillons
キンメリジャン石灰岩が集中する。土壌は浅めで早熟。左岸で最も古い畑。
└シャタン/Chatains
└ブニョン/Beugnon
メリノ/Melinots
└レ・ゼピノット/Les Epinottes
レ・リス/Les Lys

ロンシェール/Roncieres
└セシェ/Secher

ヴォー・リニョー/Vau Ligneau

ヴォー・ド・ヴェイ/Vau de Vey
└ヴォー・ラゴン/Vaux Ragons

ヴォグロ/Vosgros
西向きで日照に恵まれ、一部は渓谷の涼しさに影響される。
└ヴォージロ/Vaugiraut

ベルディオ/Berdiot

コート・ド・ヴォーバルース/Cote de Vaubarousse

フルショーム/Fourchaume
長さ4kmで多様だが、南西向きのため日照に恵まれ早熟。複雑で強烈。
└ロム・モール/L’Homme Mort
└ヴォーピュラン/Vaupulent
└コート・ド・フォントネ/Cote de Fontenay
└ヴォーロラン/Vaulorent

モンテ・ド・トネール/Montée de Tonnerre
GCに近く、東風から守られながら午後に日が差す。最高の畑のひとつ。
└シャプロ/Chapelot
└コート・ド・ブレシェン/Cote de Bréchain
└ピエ・ダルー/Pied d’Aloup

モン・ド・ミリュー/Mont de Milieu
GCの東側で最高の向きと均質なキンメリジャン。濃密で強烈だがエレガンスも。

レ・フルノー/Les Fourneaux
南向きと東向きに恵まれ暑い。ミネラルは繊細でコクがある。
└モラン/Morein
└コート・デ・プレ・ジロ/Cote des Pres Girots

ヴォークーパン/Vaucoupin
強い日照で暑く乾燥するため収量は低め。爽やかでボリュームとストラクチャーがある。

7つのグラン・クリュ

シャブリ村と川を見下ろすことができる、南と西向きの斜面にかたまっています。面積はシャブリ全体のわずか2%にすぎずその価値は貴重です。グラン・クリュに共通する特徴は最上のコート・ド・ボーヌの白ワインと同じスケールの、強烈で、非常に充実した風味をもちながら、さらにより活力があり鋼鉄のような鋭さを備え、それらが年月と共に高貢な複雑さへと変わっていきます。シャブリ・グラン・クリュは必ず熟成させるべきで、理想を言えば10年は寝かせておきたいもの。20年、30年、40年を経ても堂々としているものも数多くあります。

ブランショ/Blanchot

傾斜のきつい斜面で作業が困難であることで有名です。
南東の斜面にあるため朝日の恩恵を受けます。その後は日当たりは減りますが、逆説的なことに暑くなります。ブドウはゆっくりと熟し、収穫は一般的に、隣のレ・クロの後に行われます。ワインは香りがとても高くなります。名前の由来はおそらく明るいことを意味するゲルマン語のblankで、白みを帯びた石灰岩と明るい色の粘土石灰質が構成する石の多い土壌によるものと考えられます。

ブーグロ/Bougros

名前の由来は「狭まる」で、セラン川の川幅が関係しています。川に近い下部分は南向きの急斜面で、最も斜面が急な場所は、コート・ブーグロと呼ばれ、『ウィリアム・フェーヴル』によって良いワインが造られています。温暖で、日照が強烈。熟した果実のパンチがあり、抑えられた力強さにとって代わり、味わいが長く続きます。エレガントで、強烈なミネラル感を楽しむことができます。

レ・クロ/Les Clos

26haある最も広いグランクリュです。シトー会の修道士によって最初に開拓された場所で名前が一番よく知られています。風味、力強さ、余韻の長さの点で最高だと評されており、最上の年のレ・クロは時間の経過と共にソーテルヌのような香りを醸し出します。

グルヌイユ/Grenouilles

7つのなかで最も小さく、セラン川に近いことから『蛙』が畑名の語源になりました。川の効果で畑が冷やされる条件を享受しており、ブドウがゆっくり熟すため香りがとても高くなります。斜面下部にあるため粘土が多く、リッチで芳醇です。9.8ha中、約8割を『ラ・シャブリジェンヌ』が所有しており、グルヌイユを代表する生産者になっています。シャブリで唯一「シャトー」の名を冠することができるシャトー・グルヌイユの畑を含んでおり、ラ・シャブリジェンヌが単独所有しています。

プルーズ/Preuses

南から南西に向いた10.8haで、日中の大部分を日照に恵まれます。夏になると、夕方遅くまで日照を浴びます。非常によく熟成し、円熟昧があると同時に奥深いミネラル感で石灰石を噛んでいるかのようなミネラル感が特徴的。スタイルとしては女性的で、圧倒的な熟成ポテンシャルを有するため長熟によって真価を発揮します。
名前の語源は「石」(pierre)です。区画の縁に沿って古代ローマ時代の古い道があり、「石ころだらけの道」と呼ばれていました。

ヴォーデジール/Vaudesir

最高の畑として明快さと洗練さを備えたヴォーデジールを推す専門家もいるほど。レ・クロと並んで最上の賛辞を集めます。風から守られる小さな渓谷の中に、すり鉢状の谷となってたたずんでいます。南向きの斜面では最適な熟度に達することができ、冷涼な北向きの斜面は爽やかさを保ち成熟は遅れます。そのため区画の位置がワインのスタイルに重要な役割を果たします。
一説では古いフランス語で希望、願い、願望を意味するHaitの「願いの谷(val des haits)」が変化してついた名前だと言われています。

ヴァルミュール/Valmur

南から西に向いた、ヴォーデジールと同じくすり鉢状の形をした畑です。日中の最も暑い時間帯の日照を受けることができます。北西向きという条件でゆっくりと成熟するため爽やかさが加わります。芳純で香りが華やかで、理想的なワインだと賞賛する専門家もいます。
名前の由来は一部の区画のまわりを囲んでいた木苺の実(MeuresあるいはMeuriers)から「meuresの渓谷(vallée aux meures)」となった説、所有地を限定するために作られであろう石垣に関連する(meursあるいはmurgers)から来たという説があります。

ラ・ムートンヌ/La Moutonne

グラン・クリュですが、他の7つとは違って正式な特級畑に認定されていません。畑はヴォーデジール(95%)とプリューズ(5%)にまたがっており、生産者ドメーヌ・ロン・デパキにのみ、AOCシャブリ・グラン・クリュのブランド名として使用が認められています。

関連コンテンツ

参考
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第7版』/ガイアブックス/2014年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2018』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2018年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年


シャブリワイン委員会/2024.9.24閲覧
https://www.chablis.jp/

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