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『シュナン・ブラン』の解説。起源・特徴、産地別のワイン

『シュナン・ブラン』の解説。起源・特徴、産地別のワイン

南アフリカで最大の栽培面積を誇る、人気品種の『シュナン・ブラン』の解説です。伝統産地のフランス、ロワール地方の代表銘柄や品種の特性や発祥と歴史など白ワイン好きの方なら知っておきたい情報をまとめました。

シュナン・ブランとは

白ワイン用のブドウ品種で、フランスのロワール地方と南アフリカを中心に栽培されています。他品種とブレンドされることがありますが、単一品種でもワインが造られて、辛口~極甘口まで様々な銘柄が生み出されます。

シュナン・ブランの特徴

畑での熟期は早くも遅くもなく平均的ですが、栽培にはそのワインの味わいと同様に繊細さが必要です。春に芽を出すのが早いので遅霜に弱く、病気には弱め。育てる畑の土壌を選んでやる必要もあります。注意深く育てることで秋に実をつけて、中~大きめの房に小さな粒をつけてくれます。

シュナン・ブランの味は?

最も大きな特徴は印象的なしっかりとした酸味です。かすかにハチミツの香り麦わらや熟れたリンゴの風味があり、ワインが熟成するにつれナッツのように香ります。すっきりした爽やかなものから、樽熟成でコクをもったもの。また辛口~極甘口まで、シュナン・ブランひとつで様々なスタイルのワインができるのもこの品種の魅力です。

シュナン・ブランに合う料理

シュナン・ブランのワインは味わいの幅が広いので、ロワール地方の料理をヒントにおすすめすると魚や野菜にエシャロット、白ワイン、生クリーム、バターを煮て塩、こしょうで味を調える『ブール・ブランソース』と食べる料理はおすすめです。豚のリエットヤギのチーズリンゴを使ったタルトなども良く合います。

人気はどのくらい?

2016年のデータで、白ワイン用のブドウ品種のなかでは世界11位の栽培面積でした。幅広い地域で栽培されていますが、上位2カ国のシェアが高いのが特徴です。

生産国はどこ?

最も生産面積が大きいのは、白ブドウの主力品種にしている南アフリカ(世界シェア55.0%)。2位は原産国のフランスで29.3%、この二カ国で世界の約84%を占めています。南アフリカ国内では全ブドウ品種のなかで最大面積を誇り、フランス国内では16番目の広さです。

生産地の特徴、代表銘柄

フランス

ロワール地方は、シュナン・ブランの最も重要な産地です。
栽培の伝統が最も長く、長期熟成ができる様々な甘さの個性的なワインが造られます。ほとんどがロワール河の中流で栽培され、単一品種で造られるのが一般的。樽熟成やシュール・リー製法が用いられることがあり、ハチミツ、麦わら、熟れたリンゴのフレーバーをもちます。

『ヴーヴレ』『ソミュール』の辛口は有名です。

  • Vouvray Sec Cuvee Silex
    フランス
    フランス
    • 2022

    Domaine Vigneau-Chevreau

    ドメーヌ・ヴィニョー・シュヴロー

    Vouvray Sec Cuvee Silex

    ヴーヴレ セック キュヴェ シレックス

    750ml, 3,200 yen

    こちらの商品は現在取り扱いがございません

  • Saumur l'Ardile Blanc
    フランス
    フランス
    • 2017

    Domaine des Guyons

    ドメーヌ・デ・ギュイヨン

    Saumur l'Ardile Blanc

    ソミュール ラルディル 白

    750ml, 3,100 yen

    こちらの商品は現在取り扱いがございません

シュナン・ブランの最も偉大な銘柄は極甘口の遅摘み~貴腐のワインです。強い甘味ながらシュナン・ブランの特徴である酸味がバランスをもたらします。数十年の熟成が可能で『ヴーヴレ』『モン=ルイ』『ボンヌゾー』『カール・ド・ショーム』『サヴニエール』で産出されます。サヴニエールには辛口もあり、火薬を思わせるミネラルが感じられます。

以下で「やや甘口」のドゥミ・セックをご紹介します。

ロワール地方ではスパークリングワインのベース品種にもなって、『クレマン・ド・ロワール』『ソミュール』『ヴーヴレ』はとくに有名です。カッチリとした泡、軽いボディとハチミツのニュアンスの特徴があります。

南フランスのラングドックでも、特産スパークリングワインの『クレマン・ド・リムー』に20~40%ほどブレンドされることがあります。

南アフリカ共和国

南アフリカに最初のブドウを植えたのは1655年、ケープタウンの初代総領事ヤン・ファンリーベックです。オランダ出身の彼が植えた最初の品種のなかにシュナン・ブランが入っていたと推測されています(残念ながら記録には残っていません)。栽培の歴史は350年以上続いていますが、当時からスティーン(Steen)と呼ばれていたため、南アフリカの人たちがそれを「シュナン・ブラン」であると知ったのは、後にDNA鑑定にかけられてからです。
現在でもシュナン・ブランの高い酸味が南アフリカの白ワインに特徴を与えていて、とくに古い時代に植えられた株仕立ての樹は高い価値のワインを生みます。

アメリカ合衆国

減少傾向ながら、カリフォルニア州にシュナン・ブランの畑が見られます。ここでもやはり、その爽やかな酸味が大切にされています。

『シュナン・ブラン』名前の由来

フランスのロワール地方にある有名な城「シュノンソン城」の歴史書に登場するのが最初です。1496年、近隣地域からブドウを集めて植えた記録の中にPlant d’Anjou(=アンジューの植物)と記載されています。1520~35年には10kmほど離れたモンシュナンにある修道院で同じようにフランス国内からブドウが集められ、Plant d’Anjouはその中にもありました。その後この地の気候に適してよく育ったことからモンシュナンの修道院にちなんでシュナン(CHENIN)と命名されました。

(参考)Google Map:モンシャナン(モンシュナン)

シノニム(別名)

歴史の長い品種であるためたくさんの別名がありますが、有名なのはロワール地方のピノー・ドラ・ロワール(Pineau de la Loire)、南アフリカのスティーン(Steen)です。最近のトピックにはスペインのガリシア州が発祥とされていた品種 Agudelo/Agudillo(ペネデスなどでも栽培されている)が、DNA鑑定の結果シュナン・ブランと一致したとの報告があります。

起源

サヴァニャン(フランスのジュラ地方で現在でも大切にされている古い品種)が別の品種(詳細は不明)と交配してできたのが『シュナン・ブラン』です。有名な『ソーヴィニヨン・ブラン』はシュナン・ブランと姉妹関係にあります。また、シュナン・ブランはピノ(ピノ・ノワールなどに変異した古い品種)の孫か姉妹にあたります。

※図のピノとサヴァニャンは親子関係で、どちらが親なのかは現在のところ不明です。

関連コラム

参考
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第8版』/ガイアブックス/2021年
ジャンシス・ロビンソン、ジュリア・ハーディング、ホセ・ヴィアモーズ/『ワイン用葡萄品種大辞典』/共立出版株式会社/2019年
田辺 由美/『南アフリカワインのすべて』/株式会社ワイン王国/2013年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年

データ参照
キム・アンダーソン/『Which Winegrape Varieties are Grown Where?』/アデレード大学/2020年/2023年7月9日閲覧
https://www.adelaide.edu.au/press/titles/winegrapes

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