コンプレターとは?
スイスの東部にあるグラウビュンデン州マランス地方に由来する古いブドウ品種です。1321年、クール大聖堂の総会文章に登場するのが最初の記録です。ベネディクト会の修道士伝統的に静寂の中でワインを飲むことが許されていた晩堂課(夕食後の時課)であるcompletoriumが名前の由来になりました。スイス国内の希少な品種ですが、非常に特徴的で熟成させる価値のある白ワインができます。
スイスのブドウ品種
現在のスイスの土着ブドウのいくつかは、もともとのスイスブドウやフランスに関係がある品種などが自然交配を起こして誕生しました。それらの品種は近縁で、コンプレターはそのうちの一つです。コンプレターの親は恐らくすでに消失したと考えられている未知の品種ですが、イタリアとスイスのマランス地方にブドウ畑を所有していたベネディクト会修道院の修道士がイタリアから持ち込んだものと示唆されています。
見つけられたなら、必ず飲んでおきたい
スイスのワインは自国消費がメインで外国に輸出される割合がたったの1.5%程度。国外で手にできることは簡単ではありません。さらにスイスは山がちでブドウ畑が小さく、250ほどものブドウ品種が栽培されているため希少な銘柄やブドウ品種が多く存在しています。
なかでも機会があれば是非とも賞味しておきたいとされている品種があり、ヴァレー州の白ブドウ『アルヴィン(プティ・アルヴィン)』や、黒ブドウ『コルナラン(ルージュ・デュ・ペイ)』の名前が上がります。
そして東部の『コンプレター』も突出した評価を受けており「複雑でストラクチャーがあり酸味とアルコールの高いワインになる。ぜひ飲んでおきたい」と絶賛されています。希少な品種で2009年時点の栽培面積はスイス国内にたった3haしかありません。
コンプレターの特徴
萌芽は中期で熟期は中期から晩熟。中~高めの安定した収量があります。風の吹く場所と、軽い土壌を好みます。フェーン現象による乾燥でブドウが濃縮されるとアルコール分が高まります。
コンプレターの味わい
花梨・熟したリンゴ・プラム・蜂蜜のような複雑なアロマをもち、熟成を経ると蜂蜜のニュアンスがより強く現れるようになります。力強くしなやかな骨格があり、酸味が強く、酸化的特徴があるところがポイントです。この酸化的特徴は好ましいとものとされていて、品種の独特さになっています。
関連コラム
参考
ジャンシス・ロビンソン、ジュリア・ハーディング、ホセ・ヴィアモーズ/『ワイン用葡萄品種大辞典』/共立出版株式会社/2019年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2024』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2024年
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第8版』/ガイアブックス/2021年