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協調性がすごい!ブドウ品種『メルロー』の解説

協調性がすごい!ブドウ品種『メルロー』の解説

メルローの完全ガイド。柔らかなタンニンと豊かな果実味が魅力のメルローを深堀り。育成の条件、味のプロファイル、そして最適な食事のペアリングまで、この人気ブドウ品種のすべてを探ります。

メルロー(Merlot)とは

メルローはワイン用の黒ブドウ品種の名前です。とても高い人気があり、トップのカベルネ・ソーヴィニヨンに次いで世界で2番目の栽培面積を誇ります。

メルローの特徴

カベルネ・ソーヴィニヨンよりもやや大粒。早熟で育てやすい品種です。粒の色調が薄めなのは実際に果皮が薄いからです。タンニンの割合が低く華やか。若い時期から楽しめるスタイルのワインを造ることができますが、栽培条件などによっては長命な高級ワインにもなります。

メルローの味

ワインの色は青みを帯びた紫色で濃く見えますが、口当たりはソフトでスモモのようなフルーティさがあります。「ベルベットのよう」と表現される柔らかなタンニンで、そのふくよかな味わいが世界で人気を呼んでいます。

メルローに合う料理

最大の個性である「柔らかいタンニン」をイメージしながら合わせる料理を考えるのがおすすめです。
表面のツルツルしたパスタ料理はとくにおすすめです。赤ワインですから肉の風味もよく合います。ボロネーゼソースラグーのようなソースは相性がとても良い料理です。

もちろんグリルした赤身の肉もよく合います。メルローの丸みを帯びたタンニンとフルーティーな味わいが、ステーキラムチョップなどの赤肉とよく合います。塩とペッパーでシンプルに味付けするとワインと料理の味が両方引き立ちます。

脂の甘い豚肉も、メルローの果実感やスパイスのノートと組み合わせると絶妙。ポークリブにローズマリーやタイムなどのハーブを効かせて、メルローのハーブやスパイスのアロマと合わせましょう。

メルローの極上ワイン

メルローはフランスのボルドーが伝統的な産地です。ボルドーではカベルネ・ソーヴィニヨンのワインにブレンドするために使うことが多く、その目的はワインに複雑さと飲みやすさを与えることです。ボルドーの中でもジロンド河の右岸、ポムロール、そしてサン・テミリオンでも長所が最大に発揮され、重厚ながら滑らかで官能的な高級ワインが生産されています。
単一品種のワインとしても存在感を発揮しています。

メルローの栽培地域

メルローは容易に熟すためカベルネ・ソーヴィニヨンより広範囲で栽培されています。栽培面積の上位国はこの表のとおりですが、栽培国のリストを作るより栽培していない国を探す方が早いと言われるほど多くの国で栽培されています。

2016 面積(ha)2000-2016
フランス
108,483
+7,174
イタリア
24,057
+2,196
アメリカ合衆国
21,251
+4,376
中国
16,700
+?
スペイン
12,852
+11,666
チリ
12,057
-768
ルーマニア
11,647
+3,837
ブルガリア
10,050
-1,119
オーストラリア
8,415
+746
日本
1051 t
+-?

※ 日本のみ2021年の生産量(t)令和5年(2023年)データ

日本のメルロー

日本でも人気が高く、赤ワイン用の品種としてはマスカット・ベーリーAに次ぐ2番目の生産量があり、多い順に長野、山梨、山形、兵庫、北海道と続きます。長野県は桔梗ヶ原や安曇野を中心にボルドースタイルのワインが多く、必要とされるメルローの栽培が盛んです。

メルローの起源

ボルドーを流れるガロンヌ川の島に起源があるとされていましたが、完全な特定には至っていません。名前の由来にも諸説あり、このブドウを好んで食べる黒い鳥(オック語でMerlauと呼ばれていた)からついたというのが有力です。

1990年代の終わりに行われたDNA解析によって、メルローとカベルネ・フランとの親子関係が明らかになりました。もう片親は未知のままでしたが、フランス国内で発見されてマグドレーヌ・ノワール・デ・シャラントと名付けられた品種が母親品種であることが特定されました。「マグドレーヌ」は早熟を意味し、「シャラント」は見つかった場所にちなんだ名前です。
メルローが世界的に成功したのはカベルネ・フランの良質なタンニンとアントシアニン、マグドレーヌ・ノワール・デ・シャラントの早熟さや結実能力の高さが継承されているためだといわれます。

近縁品種は大物ぞろい

メルローの栽培面積は世界で2番目。世界最大を誇るカベルネ・ソーヴィニヨンとは姉妹にあたります。ボルドーではメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランが三大品種で、それぞれが個性を発揮しながらバランスを整えあっています。

フランスのメルロー

ボルドーでは複数のブドウ品種が栽培されています。ヴィンテージごとに良い品種メインにブレンドできるというメリットがあるからです。
ジロンド河の左岸では砂利質によって生育されるカベルネ・ソーヴィニヨンに、メルローをブレンドして造られるのが一般的です。右岸では逆に粘土質を好むメルローが主体となり、カベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンなどがブレンドされます。メルロー単体のワインも見られます。

フランスではボルドー以外の地方でもメルローは広く栽培されています。とくに南フランスのラングドック・ルーションの手頃な銘柄やボルドー近隣エリアの個性的な銘柄が魅力を発揮しています。

イタリアのメルロー

イタリアでは全土でメルローが栽培されていますが、主に北半分で活躍しています。本拠地となっているのはトスカーナ州で、高級ワインを産みます。イタリアを代表するサンジョヴェーゼ種とのブレンド相性もよく、キアンティにブレンドされることもあります。

スペインのメルロー

スペインでもメルローはブレンド用に活躍しています。特産のテンプラニーリョ種のブレンド相手として人気です。

チリのメルロー

チリでは3番目に多く栽培されている品種で重要な位置を占めています。長い間カルメネールと混同されていたという歴史をもちます。良く熟した甘美さがあるワインができます。

関連コンテンツ

参考
ジャンシス・ロビンソン、ジュリア・ハーディング、ホセ・ヴィアモーズ/『ワイン用葡萄品種大辞典』/共立出版株式会社/2019年
ジェイムズ・ローサ―著・山本 博監修/『ボルドー』/ガイアブックス/2011年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第8版』/ガイアブックス/2021年
大塚謙一、山本博、戸塚昭、東條一元、福西英三/『新版 ワインの辞典』/柴田書店/2010年

データ参照
キム・アンダーソン/『Which Winegrape Varieties are Grown Where?』/アデレード大学/2020年/2023年7月9日閲覧
https://www.adelaide.edu.au/press/titles/winegrapes

ワイン製造業/『酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和5年アンケート)』/国税庁/令和5年(2023年)/2024年8月27日閲覧
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizo_oroshiuri/index.htm

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