家庭料理を囲んだテーブル、仲間との気兼ねない食事、レストランでの特別なディナー。
ワインは、日常の様々なシーンで料理を引き立て、人と人とを結び付けてくれる存在です。
お酒の効用は「ほっと一息リラックスできる」、「人とのコミュニケーションが円滑になる」、「食欲がわく」、「料理がより一層おいしくなる」…など様々ですが、なかでも”食中酒”や”乾杯のお酒”として発展してきたワインは、これらの効果を最大限に発揮するお酒のひとつといえるでしょう。
そんなワインを末永く楽しむために大切なこと―――、それはお酒のリスクと適正飲酒について知ることです。
ワインのある暮らしが安全で健康でありますように。
このページでは、お酒のリスクと適正飲酒について、詳しく説明しております。ぜひご一読ください。
お酒と酔いのしくみ
「酔う」とはどういうこと?
口から摂取したアルコールは、胃で約20%、小腸で約80%が吸収され、その後血液に入り全身に運ばれます。血液中のアルコールは主に肝臓で分解されますが、分解され体外に排出されるには相応の時間がかかります。その間に血液中のアルコールは体の中を循環して脳に到達し、麻酔作用によって脳を麻痺させます。これが「酔う」という状態です。
アルコール血中濃度と酔いの状態
「酔い」の程度は、飲むお酒の強さや、その量によって変わります。どの程度酔っているのかは脳内のアルコール濃度が関係しますが、脳細胞のアルコール浸透度は測れないので、代わりに血中のアルコール濃度で説明します。
参考:『アルコール血中濃度と酔いの状態』/飲酒の基礎知識/アルコール健康医学協会/2022.11.10閲覧
アルコール代謝のしくみ
血液中のアルコールは体の中を循環しながら肝臓で分解され、アセトアルデヒド(エタナール)に変換されます。このアセトアルデヒドは、顔を赤くしたり、動悸、頭痛、吐き気の原因となったりする物質です。また発がん性があるという説もあります。さらに、アセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素(アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ALDH)により酢酸となり、血液により全身をめぐり、筋肉や脂肪組織などで水と二酸化炭素に分解され、汗や尿、呼気に含まれて体外に排出されます。また摂取されたアルコールの2~10%が、分解されずそのままの形で汗、尿、呼気として排出されます。
アルコール代謝にかかる時間
一般的には1時間に分解できるアルコールの量は「体重1kgにつき0.1g程度」とされています。ワインで例えると、体重約60kgの人がワインのハーフボトル1本(375ml)を飲んだ場合、飲み終わってからアルコールが体外に排出されるには約6~8時間かかります。ただしアルコールの吸収速度や分解には様々な要因が関係し個人差もあるため、お酒に弱い人はもっと長い時間がかかるでしょう。肝臓はアルコールが体内からなくなるまでずっと働き続ける事になり、身体には大きな負担がかかります。お酒が好きな方も休肝日をつくり、肝臓をいたわることをおすすめします。
お酒のリスク
お酒は20歳になってから
日本では、20歳未満の飲酒は法律で禁じられています。
なぜ、20歳未満は飲酒してはいけないのでしょうか。それは脳の機能低下や臓器障害等、まだ成長段階の未成熟な心身に悪い影響を与えるからです。しかし実態は多くの20歳未満の若者に飲酒経験があると言われています。周囲の大人は興味本位で飲酒させることが若者の身体に悪い影響を及ぼす結果につながることを強く認識し、決して20歳未満の方に飲ませてはいけません。
<20歳未満の者がお酒を飲んではいけない5つの理由>
1. 脳の機能を低下させます
2. 肝臓をはじめとする臓器に障害を起こしやすくなります
3. 性ホルモンの分泌に異常が起きるおそれがあります
4. アルコール依存症になりやすくなります
5. 20歳未満の者の飲酒を禁ずる法律があります
引用:『20歳未満の者の飲酒防止の推進』/国税庁/2022.11.10閲覧
女性とお酒
お酒を飲むのは楽しいものですが、女性の場合は知っておかなければいけないことがあります。それは、一般的に女性の方がアルコールの影響を受けやすい傾向にあるということ。なぜ男女の違いがあるのでしょうか?
次のような理由が挙げられます。
・相対的に女性の方が身体が小さく体重が軽いためアルコールの分解速度が遅い
・体脂肪が多く血中アルコール濃度が高くなりやすい
・女性ホルモンがアルコール分解能力を阻害する
そのため、女性の場合は男性よりも少量のアルコールで、アルコール依存症や肝障害が進行しやすいと言われています。
妊娠中や授乳期に飲んだお酒は赤ちゃんに影響する
妊娠中は、命を育む大切な期間です。お酒を飲むと、胎盤を通じてお腹の赤ちゃんにアルコールが入り、知能障害・発育障害など様々な悪影響を及ぼす可能性があります。それだけでなく、早産や流産、分娩異常の原因になる事もあります。大切な赤ちゃんと自分自身のために、妊娠中、授乳期はアルコールを控えましょう。
また、家族や友人など周囲のサポートも大切です。できるかぎりお酒のない環境を作り、お酒をお休みしているお母さんに協力しましょう。
高齢者とお酒
筋肉量の低下、脂肪量の増加、アルコール分解速度の低下など、私たちの体は年をとるにつれて飲酒による影響をより受けやすくなっていきます。体の反応やバランス感覚が衰えるので、同じ量のアルコールを摂取しても、若い頃よりも足元が不安定になったり転びやすくなったりします。
高齢者のみなさんは、次のようなことを心がけて楽しく健康的にお酒と付き合いましょう。
・味わいながらゆっくり飲み、自分に合った適量を守る
・休肝日をつくり、健康的な食事や適度な運動を行う
・家族のアドバイスに耳を傾ける
・薬と一緒に飲まない(薬の作用が強くなったり弱くなったりします)
・飲酒直後の入浴やサウナは避ける
・定期的に検査を受ける
参考:『飲酒』/e-ヘルスネット/厚生労働省/2022.11.10閲覧
アルコール依存症
アルコール依存症は一言で述べると飲酒のコントロール(制御)が困難になる病気です。長期にわたる多量飲酒で、お酒を飲まずにはいられない状態になります。とくに若い女性や高齢者はアルコール依存症になりやすいと言われています。
女性のアルコール依存症は、うつや摂食障害などを併発することもあり、治療において複雑なサポートが必要になることもあります。女性ならではの体質を知ったうえで、お酒と良い関係を築いていきましょう。また、高齢者は身内との死別や病気などから、社会の中での孤独感を感じて気持ちがふさいでしまい、こうした辛さに耐えるためにアルコールを過剰摂取することがきっかけで、晩年になってから依存症となるケースが少なくありません。
アルコール依存症にならないためには、普段から飲みすぎないことや多量飲酒を早い段階で自覚すること、周囲のサポートがとても大切です。
適正飲酒
「イッキ飲みしない」「イッキ飲みさせない」
お酒は人を楽しませる役割もありますが、その反面、生命や人権を脅かしてしまう危険性もあります。
「イッキ飲み」「イッキ飲ませ」は、生命にかかわる危険な行為です。
大量のアルコールを急激に摂取すると肝臓のアルコール分解速度が追いつかずに、血中アルコール濃度が急速に高まり、急性アルコール中毒を招いてしまいます。急性アルコール中毒になると、意識レベルが低下し、嘔吐、呼吸状態が悪化するなど危険な状態に陥ります。最悪の場合は死に至る、とても危険な状態になります。
お酒に酔うとセルフコントロール機能が失われ、自らイッキ飲みをしたり、他人に強要したりしてしまうケースがあります。これは、危険で迷惑な行為であり、お酒の楽しさを損なう行動です。
お酒は自分のペースで楽しみ、「イッキ飲みしない」「イッキ飲みさせない」ルールは絶対に守りましょう。
適正飲酒の10か条
公益社団法人アルコール健康医学協会では、適正飲酒の普及・啓発を目的に、お酒の適正な飲み方・マナー等を「適正飲酒の10か条」に定めています。適正飲酒を理解し、健康的に楽しくお酒と付き合いましょう。
1. 談笑し 楽しく飲むのが基本です
2. 食べながら 適量範囲でゆっくりと
3. 強い酒 薄めて飲むのがオススメです
4. つくろうよ 週に二日は休肝日
5. やめようよ きりなく長い飲み続け
6. 許さない 他人(ひと)への無理強い・イッキ飲み
7. アルコール 薬と一緒は危険です
8. 飲まないで 妊娠中と授乳期は
9. 飲酒後の運動・入浴 要注意
10. 肝臓など 定期検査を忘れずに
引用:『適正飲酒の10か条』/お酒と健康/アルコール健康医学協会/2022.11.10閲覧
おわりに
より豊かな時間のために
お酒は気持ちを爽やかにしたりリラックスさせたりと癒しをもたらしてくれますが、飲み過ぎによるリスクも持ち合わせています。
人と人とをつなぐお酒 ワインを楽しむときは、自分や周囲の人を守るための適正飲酒を心掛けましょう。
皆様のワインのある暮らしのために、ぜひ心に留めおきください。