1. Home
  2. Column
  3. 『ピノ・ノワール』完全ガイド:特徴からペアリングまで
ワインのキホン

『ピノ・ノワール』完全ガイド:特徴からペアリングまで

『ピノ・ノワール』完全ガイド:特徴からペアリングまで

『ロマネ・コンティ』『シャンベルタン』など、世界最高峰のワインを生み出すブドウ品種『ピノ・ノワール』の解説です。

ピノ・ノワールとは?

フランスのブルゴーニュ地方を代表する赤ワイン用のブドウ品種です。色素やタンニンのもとになる果皮が薄いため、繊細で上品なワインができます。その繊細さが特徴ですが、特定の条件ではグラスを飛び出して部屋を漂うほどの華々しいアロマを纏ったり、ボディ豊かで骨格のある偉大なワインになったりするためワイン用のブドウ品種のなかでも最も奥深く、ファンを惹きつけています。

ピノ・ノワールの特徴

ワイン用ブドウ品種のなかでは早熟な部類に入ります。温暖な気候を好みますが、果粒がしぼんだり果皮が日焼けを起こしたりします。そのため良質なワインを造るには成熟がゆっくり進む冷涼な土地が必要です。しかし涼しすぎたり、湿度が高すぎたりするとこんどは病気にかかりやすくなります。収量が多すぎるとワイン品質が低下するのでよくコントロールする必要があります。石灰質の土壌を好むことも、気候と土壌の条件が揃ったブルゴーニュ地方で長く栽培の歴史が続いてきた理由のひとつに挙げられます。

ブドウは果粒が小さく、タンニンの含有量は重量の1.7%程度です。これは他の黒ブドウの3~6%に比べてかなり低く、ワインに色をもたらすアントシアニンの含有量もかなり少ない値です。

ピノ・ノワールの味

ピノ・ノワールにはタンニンや色素が少ないためワインの色は薄めの色調で、味わいは繊細です。相対的に酸味が豊かに感じられ特有の赤果実の風味が楽しめます。涼しい産地やヴィンテージのワインから感じられるのは、木いちご、チェリー、アセロラ、すもも、こけもも、梅といった風味。暖かい産地や良く熟したヴィンテージでは、プルーン、ブルーベリーといった風味が感じられます。

合う料理・食材

鶏肉

ブルゴーニュの「鴨のロティ」などはピノ・ノワールに合わせる典型的な料理ですが、自宅で作るなら地鶏で代用してロゼ色に火入れできたら最高です。

豚肉

熟成すると紅茶の風味が感じられるピノ・ノワールに「紅茶豚」や、角煮やトンポーローなど醤油ベースで煮込んだ豚料理が合わせやすいです。ピノ・ノワールの繊細さに合わせて、厚い肉よりも一口大のサイズにすることがポイント。豚のしゃぶしゃぶ、冷しゃぶといった薄切りの豚の料理も合います。たれや薬味をきかせるのがおすすめです。

梅の風味

繊細なピノ・ノワールから感じられる梅の風味に同調させて、料理に梅のソースを使うのはおすすめです。肉を火入れしたフライパンに梅と酒で味を調えた梅ソースや、刻んだ梅肉と紫蘇をトッピングするのもよいでしょう。一気にピノ・ノワールに合う料理に変身しますよ。

チーズ

フランスの代表的な白カビチーズ「ブリー」「カマンベール」や、チーズをシュー生地に混ぜて焼いたグジェールは、ピノ・ノワールの風味と非常によくマッチします。

グラスの選び方

ピノ・ノワールは、ほかのブドウとブレンドされるよりも単一の品種でワインになることが多いです。そのため複雑さをより強調させるグラスを選ぶとワインの表情がまるで別もののようによくなります。ボール部分が丸く大ぶりで、リム(飲み口)が小さくすぼんだ形がピノ・ノワールにおすすめです。

ボトル

伝統的にピノ・ノワールを造ってきたブルゴーニュ地方では、なで肩の『ブルゴーニュ型』瓶が伝統的です。そのため世界的にピノ・ノワールのワインはそれに習うのが一般的です。

世界のピノ・ノワール産地

ピノ・ノワールの発祥国であるフランスをはじめ、もう一つの伝統国ドイツ、イタリア、スイスなどがヨーロッパの産地です。近年ワインの生産量が増加しているアメリカ合衆国、チリ、南アフリカや、高温・多雨で難しい条件をもつ日本でも栽培が行われています。

ピノ・ノワールの白ワイン

ピノ・ノワールに代表される黒ブドウは、果皮こそ黒っぽい色をしていますが果肉と果汁は基本的に「白」です。果皮の色が出ないように「優しく」果汁を搾ることで、わずかにピンクをした搾汁となります。色素は自然に沈殿し、きれいな白い搾汁が得られます。この搾汁を醗酵させると白ワインができます。

ピノ・ノワールの発祥・由来

ピノ・ノワールはフランスのブルゴーニュ地方広域を発祥とするブドウ品種です。
『ピノ』の名前は果房の形が「松かさ」に似ていることから「松」を意味するpineに由来するとする説と、ピニョル(Pignols)という地名にちなんだという説があり、どちらも有力です。地名説の『ピニョル』はオーベルニュ地方にあり、もともと王や地主のブドウ畑に植えられていたピノの穂木をとっていた場所です。この地でも実際に中世からピノが栽培されていました。

ピニョル(Pignols)の場所

ピノの起源・歴史

ピノ・ノワールは古い品種の『ピノ』の変異でできました。そのピノは今のところ起源が不明で、ジュラ地方で栽培が続いている品種「サヴァニャン」と親子関係にあることがわかっています。確かなことは最も古く、最も重要な品種の一つだということです。重要というのは、ピノ・ノワールが最高峰のワインを生むからということだけではなく、その長い歴史で交配・変異によって様々な重要品種を生んだこともその理由です。

例えばシャルドネカベルネ・ソーヴィニヨンシラーソーヴィニヨン・ブランシュナン・ブランなど、現代のワインに欠かせない多くの品種がピノの交配系譜に入っていて、ピノの子、姉妹、孫、ひ孫などにあたります。

ピノには交配ではなく、変異によって生まれた色違いまたは性格違い(クローン)もあります。黒色のピノ・ノワールや、さらにその変異であるピノ・グリ(黒と白の中間、灰色)、ピノ・ブラン(完全な白)、早熟なムニエ(ピノ・ムニエ)などが生まれました。ピノ・ノワール自身にも僅かな遺伝子違いのクローンがあります。

このようにピノには変異種が多いことから「変異を起こしやすい性質」と言われることがあります。しかしこれには科学的証拠がなく、2000年以上にわたる歴史の長さから変異するのに充分な時間があったと考えるのが正しいようです。

少し専門的な世界。ピノ・ノワールのクローン

ブルゴーニュ地方ではピノ・ノワールの質の高いクローンが選抜されたことがあります。これらのクローンは番号を付与されたのち、世界中の栽培地域に輸出されていきました。現在需要の高いクローンの一例を挙げると、113、114、115、667、777、828 などがあります。これらは『ディジョン・クローン』と呼ばれ、一般に小さな果粒で、複雑で控えめなワインができます。

その他にもカリフォルニア大学デービス校配布したポマール・クローン(UCS4,5)、スイスで認定されたウィルス・フリーのUCD1、UCD23、ニュージーランドにロマネ・コンティの畑から密輸されたとされるAbelなどがあります。

関連コンテンツ

参考
ジャンシス・ロビンソン、ジュリア・ハーディング、ホセ・ヴィアモーズ/『ワイン用葡萄品種大辞典』/共立出版株式会社/2019年
ビル・ナンソン著・麹谷 宏監修/『ブルゴーニュ』/ガイアブックス/2012年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年
『ワイナート』114号/特集 ピノ・ノワールの新天地 ニュージーランド キアンティ・クラッシコ最新情報/2023年秋

データ参照
キム・アンダーソン/『Which Winegrape Varieties are Grown Where?』/アデレード大学/2020年/2023年7月9日閲覧
https://www.adelaide.edu.au/press/titles/winegrapes

一覧に戻る