1. Home
  2. Column
  3. 『シラー(シラーズ)』世界の生産量・産地ごとの特徴
ワインのキホン

『シラー(シラーズ)』世界の生産量・産地ごとの特徴

『シラー(シラーズ)』世界の生産量・産地ごとの特徴

世界的に人気のブドウ品種である『シラー(Syrah)・シラーズ(Shiraz)』は、ワイン用黒ブドウで4番目の生産面積を誇ります。産地ごとの特徴や生産量を解説します。

シラーの栽培面積

シラーは世界各国で栽培されている人気の赤ワイン用ブドウ品種です。主要国での栽培面積は増加傾向で、近年の注目度がうかがえます。上位8カ国は以下の通りです(2016年データ)。

2016 面積(ha)2000-2016
フランス
62,211
+11,535
オーストラリア
38,942
+9,647
スペイン
19,488
+19,402
アルゼンチン
12,707
+3,819
南アフリカ
9,949
+4,318
アメリカ合衆国
9,083
+7,574
チリ
7,994
+5,954
イタリア
7,693
+6,668

フランスのシラー産地と代表銘柄

シラーの発祥地である、フランスの『北ローヌ』はシラーを語るうえで最初にあげるべき産地です。シラーは同じローヌ地方の『南ローヌ』、南フランスの『ラングドック・ルーション地方』でブレンド用のブドウとして重要な地位を占めています。

北ローヌ地方

歴史的産地の北ローヌではシラー100%、または主体のワインが造られます。ローヌ川両岸の急斜面にブドウ畑が広がっておりエルミタージュ、コート・ロティ、サン・ジョゼフ、クローズ・エルミタージュといった地域が有名です。

エルミタージュ(北ローヌ)

歴史的で最も高名なエリアで、銘柄名もエルミタージュになります。長命で偉大なシラーのワインが造られます。タンの町を見下ろす小高い丘の南向き斜面に畑が広がります。十字軍に従軍した騎士ステランベルグが隠遁者(フランス語でエルミット)となって住んだことが名前の由来です。

コート・ロティ(北ローヌ)

傾斜60度に及ぶ急斜面に夏の太陽が照り付けるため、ロティ(=ロースト)と呼ばれるようになったエリアです。ここはシラーに20%まで白ブドウのヴィオニエがブレンドされるユニークなエリアです。この独特なスタイルは、『コート・ロティ・スタイル』と呼ばれ世界的に有名です。それによりシラーの濃さやタンニンの豊かさに繊細さやアロマが付加され、長期熟成に向くワインになります。

南ローヌ地方

南ローヌのシラーはグルナッシュやムールヴェードルといった複数の品種にシラーがブレンドされることが多いです。主体となるグルナッシュなどのワインにバックボーンを持たせる役割をもっており、シラーは個性は失うことなく性質をより顕著に表すといわれています。

シャトー・ヌフ・デュ・パプ(南ローヌ)

南ローヌを代表するエリアのひとつです。地元に根差したブドウのみで造ることが定められており、そのブレンドには13のブドウ品種が認められています。シラーはそのなかに含まれる重要な品種です。南部のワインは豊満で丸みのあるスタイルで、北部はやや軽めで繊細になります。14世紀にアヴィニョンに法王庁を移したローマ法王の夏の居城が建てられ「法王の新しい城(=シャトー・ヌフ・デュ・パプ)」と呼ばれるようになりました。

ジゴンダス(南ローヌ)

地品種の『グルナッシュ』を50%以上使用した凝縮感のある赤ワインが有名なエリアです。バランスのとれた味わいと熟成能力に彩られた銘酒は、補助品種としてブレンドされるシラーがその支えとなります。

南ローヌながらシラー主体の面白いワインもあります。南ローヌのシラーが良かった年にしか作られない貴重なもの。

ラングドック・ルーション地方

南フランスに位置するラングドック・ルーション地方は、フランスの一大ワイン生産地です。シラーの生産量はフランス1位で、南ローヌと同じように別品種とブレンドしてワインにされるのが一般的です。ローヌ地方のワインに比べてリーズナブルな銘柄が見つかるので気軽にフランス産のシラーを楽しむことができます。

  • Chateau Paul Mas Clos des Mures
    フランス
    フランス
    • 2017

    Domaines Paul Mas

    ドメーヌ・ポール・マス

    Chateau Paul Mas Clos des Mures

    シャトー・ポール・マス クロ・デ・ミュール

    750ml, 2,500 yen

    こちらの商品は現在取り扱いがございません

オーストラリアのシラーズ

フランスに次ぐシラー生産国であるオーストラリアでは『シラーズ(Shiraz)』と呼ばれ、国内の生産量、栽培面積はゆるぎない第1位を誇ります。オーストラリアのワイン産地ではほぼ例外なくシラーズが栽培されており、安価で甘く軽い大量生産のものから高品質のものまでラインナップが豊富です。

暖かい産地、冷涼な産地による表情の違いもオーストラリアのシラーズの魅力です。

バロッサ・ヴァレー(南オーストラリア州)

「シラーズの首都」の異名をもち、多数の重要なワイナリーが醸造施設を置いているエリアです。暖かい土地でブラックチェリーやブラックベリーの香味とコーヒーやチョコレートのような風味、ソフトで濃密な力強いワインが造られる高級ワインの産地です。オーストラリアで最も古い時代の樹が多く残されていて、そのうち何本かの樹齢100年を超えの樹からは極めてリッチで長寿かつスパイシーな美酒になります。標高は250~350mほどの低地です。

  • BAROSSA INK Shiraz
    オーストラリア
    オーストラリア
    • 2021

    Grant Burge

    グラント・バージ

    BAROSSA INK Shiraz

    バロッサ インク シラーズ

    750ml, 2,600 yen

    こちらの商品は現在取り扱いがございません

イーデン・ヴァレー(南オーストラリア州)

バロッサ・ヴァレーの隣に位置していますが、境目に「バロッサ・レンジ」と呼ばれる高低差150~200mもの崖があり、標高は400~550mとバロッサ・ヴァレーより涼しい産地になります。白ブドウ「リースリング」の銘醸地ですがシラーズの品質も随一で、おそらく世界で最も古いといわれている樹が存在しています。タールやチョコレートといったフレーバーが主となっています。

アデレード・ヒルズ(南オーストラリア州)

標高400~600mで非常に冷涼なエリアです。その特徴を活かした溌剌とした酸味の白ワインや、エレガントなスタイルのシラーズが特筆されます。暖かい気候で造られるシラーとは別の側面が見られ、柔らかくエレンガントなスタイルに仕上がります。

  • Shiraz
    オーストラリア
    オーストラリア
    • 2020

    Shaw + Smith

    ショウ・アンド・スミス

    Shiraz

    シラーズ

    750ml, 4,500 yen

    こちらの商品は現在取り扱いがございません

ヴィクトリア州

オーストラリアの冷涼で重要なワイン産地であるヴィクトリア州で造られるシラーズは、黒胡椒の香りをかすかに残すエレガントスタイルです。域内には様々な気候や土壌の産地が点在していますが、「冷涼産地」と呼ばれる個性が一貫しており、その美点を活かしたワインがシラーに映しとられています。

その他のシラー生産国

世界中のワイン生産者がシラーを使って様々なワインを造っています。シラーはどの生産地でも、どのような成熟段階でも常に豊かな風昧と切れ昧を余韻に残してくれます。現在チリ、南アフリカ、ワシントン州などで評価を高め、アルゼンチンでも広く栽培されています。

チリ

チリではシラーが希望と野心をもって注目されています。近年展開が急がれたことによって栽培面積が急拡大しました。多くがコルチャグア・ヴァレーで栽培されていて、最近ではより北にある冷涼なサンアントニオ・ヴァレー、リマリ・ヴァレー、エルキ・ヴァレーなどが注目されるようになりました。温暖なコルチャグア・ヴァレーに比べて引き締まった表情を見せてくれます。

アルゼンチン

アルゼンチンではチリよりも多くのシラーが栽培されていますが、同国はすでに「マルベック」で大きな成功を収めているので、アンデス山脈を挟んだ向こう側になるチリと比べるとシラーヘの傾倒はほどほどのようです。多くはメンドーサ州で栽培されていて、なかでも『サン・ファン』は北ローヌ品種の栽培に適しており、シラーの銘醸地として頭に入れておく必要があります※チリ同様アルゼンチンでも多くの生産者がシラーズ(SHIRAZ)ではなくシラー(SYRAH)と呼びます。

南アフリカ

南アフリカのワイン生産はフランスの影響を受けていますが、シラーに関してはオーストラリアの成功を手本にしているためか「シラーズ」という名で広く普及しています。南アフリカのシラーズは大きく2タイプに分けることができます。一般にSHIRAZというとオーストラリア色の強い、強い樽香がフルスロットルのスタイルを指します。もう一方はラベルにSyrahと書かれたガストロミックでより軽く風味豊かなスタイルで、こちらも大きな成功を収めています。

シラーズは単一品種の「ヴァラエタルワイン」の生産だけでなく南フランスに見られるグルナッシュやムールヴェードルとのブレンドワインにも主要品種として用いられ、優れたワインが生産されています。トップ生産者の多いスワートランドを筆頭に、濃厚で樽香の効いたスタイルが主流。コンスタンシア、ウォーカー・ベイなどの冷涼産地ではエレガントな違った側面がみられます。

アメリカ

シラーは温暖な気候を好む側面があるため、暖かいカリフォルニア州で熱心に栽培されているのは想像に難くありません。しかし実際アメリカ随一のワイン産地であるカリフォルニアでは、より繊細で冷涼地を好むピノ・ノワールの生産量の方が多くなっています(とはいえアメリカ最大のシラー生産量ではありますが)。カリフォルニア州では比較的最近になって新規参入した志ある生産者が小さな割合ながら良質のシラーを造っています。また、ワシントン州ではワイン生産者らがローヌワイン人気をしっかりと捉えており、シラーの栽培が急増して存在感を高めています。ワシントン州の特徴である明るい果実香に富んだスタイルが楽しめます。

イタリア

フランスが発祥のシラーは、北部のピエモンテ州からイタリア国内に持ち込まれました。一般的にボルドーの品種(カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー)に情熱を注ぐイタリアですが、ピエモンテ、キアンティ、南トスカーナの一部でシラーを見つけることができます。現在大半を生産しているのはシチーリア州で、シラー主体のワインが原産地呼称として認められています。日常用の良質なワインとして見つけることができるでしょう。

スペイン

スペインのワイン生産者は近年熱心にシラーを植え付けています。先の表でも2000-2016の栽培面積は激増しているのがわかります。多くのシラーは中央部のカスティーラ・ラ・マンチャ州で、北東部アラゴン州やカタルーニャ州、 南東部のムルシア州や西部のエストゥレマドゥーラ州でもかなりの量が栽培されています。ブレンドが多いですが、単一品種のヴァラエタルワインも見つけることができます。一概に非常に優れた高品質なシラーワインが生産されています。フランスのシラーより甘くふくよかであることが多いです。

関連コラム




参考文献
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第7版』/ガイアブックス/2014年
ジャンシス・ロビンソン、ジュリア・ハーディング、ホセ・ヴィアモーズ/『ワイン用葡萄品種大辞典』/共立出版株式会社/2019年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2022』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2022年

データ参照
キム・アンダーソン/『Which Winegrape Varieties are Grown Where?』/アデレード大学/2020年/2023年7月9日閲覧
https://www.adelaide.edu.au/press/titles/winegrapes

一覧に戻る