シラーの原産地はコート・デュ・ローヌ
シラーの発祥地はフランスのローヌ渓谷北部とされています。現在でも北ローヌはシラーの銘醸地として君臨しており品種を語るうえで欠かせない場所です。モンドゥーズ・ブランシェ(MONDEUSE BLANCHE、母系統)と、デュレーザ(DUREZA、父系統)というブドウが畑で自然交配を起こしたことが誕生のきっかけとされています。デュレーザはピノ種(現在のピノ・ノワールなどに変異した古い品種)の2親等の関係にある品種であることから、シラーはピノ種のひ孫であることが明らかになりました。また、シラーと同じく北ローヌで栽培されている白ブドウ『ヴィオニエ』がシラーと2親等の関係にあることが判明しています。
シラーの語源
シラーの語源は「長時間」を意味するインド-ヨーロッパ言語のser-です。そこからラテン語で「晩熟」を意味するserusという言葉ができ、この品種の別名であるSerine(セリーヌ=シラーのローヌ地方での別名で今でも使われている)がうまれました。さらにセリーヌが転じてシラーになっていったと考えられています。
オーストラリアなどで「シラーズ」と呼ばれる理由
シラーとシラーズは同一の品種ですが、なぜ呼び方が違うのでしょうか。話は1832年にさかのぼります。フランスの北ローヌを発祥とするシラーをオーストラリアにはじめて持ち込んだのは、英国の駐在員としてニュージーランドを訪れていたジェームズ・バズビー氏です。モンペリエからオーストラリアに最初にこの品種を持ち込みました。
当初オーストラリアではこの品種がScyrasと呼ばれました。その名残でオーストラリアでは今でもシラーズ(SHIRAZ)というようになったのです。のちにオーストラリアのシラーズが大成功を収めたことから、オーストラリアになじみの深いその他の新興国(南アフリカ、アルゼンチンなど)でもシラーズという呼び名を使う場合があります。一方でフランス ローヌ地方のようなスパイシーでエレガントさのあるスタイルであることを表現するために、これらの新興国でも敢えて「シラー(SYRAH)」と表記する例もみられます。
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参考文献
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第7版』/ガイアブックス/2014年
ジャンシス・ロビンソン、ジュリア・ハーディング、ホセ・ヴィアモーズ/『ワイン用葡萄品種大辞典』/共立出版株式会社/2019年