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ワインのキホン

白ブドウなのに、赤ワインにも使われる?!『ヴィオニエ』とは。

白ブドウなのに、赤ワインにも使われる?!『ヴィオニエ』とは。

白ワイン用のブドウ品種として近年人気を集めるヴィオニエの特徴を解説します。栽培面積は16年間でなんと5倍!一度飲むと忘れられないような特徴的なアロマや味の魅力を紐解きましょう。

ヴィオニエとは?

白ワイン用のブドウ品種。南フランスのコート・デュ・ローヌの伝統的なブドウで、世界的に人気が高まっている注目の品種です。一時期は発祥地と考えられている場所でも絶滅に瀕していました。しかしその個性的な味わいが見直されて人気が高まり、2000年代に入ると世界での栽培面積が16年間でなんと5倍にもなりました。

ヴィオニエの味

非常にアルコール度が高く香り高いワインができます。ボリューム感があり、アプリコットや桃、白い花、ジンジャー、パンケーキのような華やかなアロマ。深みのある金色のワインは多彩なアロマが合わさった高いエキス分を感じさせる密度のある味わいです。
近年、最高級のヴィオニエの中には長熟に向いたスタイルが模索されていますが、基本的には熟成にはあまり向きません。そのため高級な銘柄でも早めに飲むことが推奨される珍しい特徴をもちます。

ヴィオニエの特徴

南フランスの陽光を受けて育つブドウですが、収量は多くありません。完璧な日照を受け、充分に完熟してはじめて芳香性が高い厚みのある味わいになります。ブドウは厚い果皮の小さな果粒で、それが密着した長い房がなります。

ヴィオニエとシャルドネの違い

高級ワイン用の白品種で、最も栽培されているシャルドネと比較して大きな違いはアロマの豊かさです。ヴィオニエのワインは芳香性が豊かでアロマチックです。また、ヴィオニエは糖度は高めで酸度は低め。暖かい地域のシャルドネとアルコールのボリューム感が同等程度。寒い地域のシャルドネよりはボリューム感があります。また、酸味は穏やかです。

ペアリング料理・食材

ヴィオニエ(白ワイン)に合う料理を考えるときは、ボリューム感(アルコール感)と香りの高さがポイントになります。
ボリューム感の大きさには食材風味を強めたり、一口の大きさを大きくしたりすれば対応することができます。

甲殻類

海の食材であればエビやカニの風味はヴィオニエのフルーティな風味と非常によく合います。
ガーリックやハーブを使って香りを高めるソテーなどのような調理法がおすすめです。

鶏肉・豚肉

香りやコクを高めた料理に仕上げるのがコツです。ローズマリーやタイムを使って香りづけしたローストチキンや、クリームベースのソースでコクを出した鶏肉の料理はヴィオニエとの相性が抜群です。ワインのリッチな口当たりがクリーミーなソースと調和します。

エスニック

香辛料を使ったスパイシーでフレーバフルなエスニックは、ヴィオニエの高いアロマと好相性です。甲殻類・鶏肉をレモングラスやコリアンダーを使って調理するとよいペアリングが楽しめます。

チーズ

ゴーダやブリーなどのクリーミーなチーズとのペアリングもおすすめです。ワインの芳醇なアロマがチーズの味わいを引き立てます。

デザート

フルーティなヴィオニエですから、フルーツを使ったデザートもおすすめ!洋ナシや桃を使ったデザートとヴィオニエを組み合わせると、フルーツの自然な甘みとワインの風味が相まって、デザートタイムがさらに特別なものに。

ヴィオニエの発祥・起源

フランスのローヌ地方北部に由来し、恐らくコンドリューやアンピュイ(コート・ロティの中心地)だろうと考えられています。最も初期に確認される記録はコンドリューの1781年の書物で「わずかに2種類のブドウが絶品のワインになる。Serine(シラー)とVionner」と記されています。
ヴィオニエはモンドゥーズ・ブランシェ(※)というブドウと親子関係にあることがDNAの調査によってわかりました。しかしもう片親は不明です。同じモンドゥーズ・ブランシェと親子関係をもつシラーとは姉妹、または祖父母にあたることがわかっています。

※フランス東部サヴォア県イゼール県の古い品種です。現在サヴォワ地方でわずかに栽培が見られます。ワインはさほど興味深い味にならず、比較的アルコールが高く柔らかな味といわれています。

コンドリュー、アンピュイの場所

絶滅に瀕していた歴史

50年ほど前、ヴィオニエの畑面積は発祥地とされるコンドリューにわずか14haしかありませんでした。1960年代当時に栽培されていたヴィオニエは花ぶるいを起こしやすく低収量。しかもコンドリューの畑は不便な急斜面で、ヴィオニエを栽培することは収入に見合わなかったためです。より効率の高い他の作物に植え替えられていました。

ヴィオニエの主要生産国

しかしヴィオニエはその個性から名声が広まり、世界のありとあらゆる場所で栽培されるようになりました。南フランスのラングドック地方やカリフォルニア州など各地で栽培実験が行われて品質が向上しました。近年のデータを見てみましょう。

2016 面積(ha)2000-2016
フランス
8,823
+6,463
イタリア
1,827
+1,800
アメリカ合衆国
1,481
+1,167
チリ
839
+711
南アフリカ
822
+772
アルゼンチン
773
+622
オーストラリア
753
+636
スペイン
213
+212

ヴィオニエが人気になった理由

第二次世界大戦後、レストラン『ピラミッド』のフェルナン・ポワン氏が自分の店でコンドリューを扱い、ブルゴーニュのモンラッシェと並ぶ銘柄として提供しました。彼の死後、その弟子たちピエール・トロワグロ、ポール・ボキューズ、アラン・シャペル、ジャック・ピックといった錚々たる面々がコンドリューのPRに努めました。1940年にコンドリューがAOCに認められて畑の拡大とともに生産量が増え、質の悪い銘柄が出現した頃があります。しかし心ある人々の努力によって斜面畑で高品質ワインができる場所に明確な境界線が引かれました。

ヴィオニエの産地と、ワインの特徴

コンドリュー

フランスの北ローヌにある、最高峰のヴィオニエを造る伝統産地です。ヴィオニエのみ使用を許されている白ワインのAOCで、急な斜面で栽培されるブドウからはアロマが豊かで豊満な高級ワインが生まれます。
生産者のシャトー・グリエはローヌ渓谷で最小のAOCシャトー・グリエに認められており、一つのAOCを一つの生産者が名乗る珍しいケースになっています。

コート・ロティ

北ローヌの歴史的なワイン産地。ローマ時代、あるいはそれ以前からブドウ畑が存在していました。ワインは19世紀まで古代のアンフォラ壺のダブルサイズ(76L)で売られていた伝統をもちます。斜度60度に及ぶ場所がある急斜面に畑があり、ほぼ南向きでロティ(=ロースト)の名前がつくほど夏は陽光が照りつけます。
ローヌ北部では唯一シラーの赤ワインにヴィオニエを20%まで混醸することが許されています。ワインの色をやわらげ、アロマを加えるのが目的。ヴィオニエの強い特徴はシラーとのブレンドでもその個性をきちんと発揮します。コート・ロティスタイルと呼ばれるブレンドは、世界のシラー生産地の手本となっています。

南ローヌ

北ローヌのコート・ロティと同じように南ローヌでも赤ワインにブレンドする補助用の品種として認められています。ただしそのブレンド割合は低め
例えば広域なアペラシオンのAOCコート・デュ・ローヌでは、赤ワインに白ブドウが5%まで使用でき、その品種の中にヴィオニエが入っています。もちろん、コート・デュ・ローヌの白ワインではヴィオニエがブレンドの重要な品種として活躍しています。

ラングドック・ルーション地方

南フランスで、ローヌ地方の隣にあたる地方です。手頃な価格で楽しめるヴィオニエのワインや、コート・ロティスタイルの赤ワインが生産されています。

カリフォルニア

カリフォルニアでは過去数十年のうちに激増し、2010年には1,211haに達してピークアウト。しかしいくつかの有力な生産者が栽培を続け、高品質なワインを生み出しています。

オーストラリア

シラーの「第二の故郷」として名高いオーストラリアではコート・ロティスタイルのワインを生産するため、ローヌ地方と同じようにヴィオニエが栽培されています。ヴィオニエの個性をダイレクトに表現した単体のワインもあります。

南アフリカ

南アフリカではシラーのブレンド用のほか、特産のシュナン・ブランをベースにした白ワインのブレンドにも用いられて個性を発揮しています。ヴィオニエ100%の魅力的なワインも生産されています。

  • Sijnn White
    南アフリカ
    南アフリカ
    • 2018

    Sijnn

    サイン

    Sijnn White

    サイン・ホワイト

    750ml, 4,100 yen

    こちらの商品は現在取り扱いがございません

その他の国

様々なワイン生産地で主にブレンドに用いられています。ワインにボディを与え、アロマやフレーバーに複雑さを出すためにヴィオニエの個性が輝きます。

関連コラム

参考
ジャンシス・ロビンソン、ジュリア・ハーディング、ホセ・ヴィアモーズ/『ワイン用葡萄品種大辞典』/共立出版株式会社/2019年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2018』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2018年
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第8版』/ガイアブックス/2021年
山本博/『ローヌとロワールのワイン 2つの河の物語』/河出書房新社/2012年


データ参照
キム・アンダーソン/『Which Winegrape Varieties are Grown Where?』/アデレード大学/2020年/2023年7月9日閲覧
https://www.adelaide.edu.au/press/titles/winegrapes

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