フランスのワイン生産概要
フランスは世界的に有名なワイン生産国です。ブドウ造りに適した気候や風土に恵まれており、ワインに情熱を注ぐ造り手と飲み手が紀元前から文化を育みました。各地方でそれぞれに適したブドウ品種や製法が生み出された結果、多様なワインを生み出すように発展してきました。
とくにブルゴーニュ地方の赤・白ワイン、ボルドー地方の赤ワインやシャンパーニュ地方のスパークリングワインは銘醸地として世界中から多くの称賛を浴びています。
さらに、コート・デュ・ローヌ地方は南フランスのワイン産地として知られ、リヨン市の南を流れるローヌ川流域で高名な赤ワインが生産されています。北部のロワール地方はフランス中央部から大西洋まで広がるフランス最長のロワール川沿いの地域として知られています。この地域は比較的涼しい気候で、個々の地域の特徴をいかしたワイン造りが行われています。このようにフランスのワインはその多様性と品質の高さから、世界中で愛されているのです。
AOC制度
フランスワインはAOC(Appellation d'Origine Contrôlée)と呼ばれる原産地呼称制度のもと、その品質が保証されています。AOCはワイン以外の農業製品(チーズ、バターなど)にも適用されており、原料、製法や品質などが細かく規定されています。
AOCは格付けの中で最も高い原産地統制呼称です。より限定された範囲のAOCが上位となり、広域の方が格下になります。AOCの条件に合わないワインの場合、下位のIGP、またはVin de France(フランス産ワイン)を名乗ることになります。
フランス国内で造られたワインは「フランス産ワイン」になりますが、ボルドー地方の規定に合えば「AOCボルドー」になり、より区分の細かいマルゴー村の規定に合えば「AOCマルゴー」となります。
AOCは、第一次世界大戦や世界恐慌などの不況によってフランスで産地偽装や粗悪品の横行が起きたことから作られた制度です。ローヌ地方にあるシャトー・ヌフ・デュ・パプのワイン生産者で、法律家でもあったバロン・ル・ロワが友人の国会議員ジョセフ・カピュスとともに運動を起こし1935年に制定されました。フランスは国家としてワインの品質を守ることを法で定めたというわけです。
フランスワインの起源・歴史
フランスでワイン造りが始まったのは紀元前6世紀頃です。ギリシャからフランスのマルセイユに移り住んだフェニキア人によってもたらされました。紀元前2〜3世紀頃には現在も著名なワインの産地であるブルゴーニュ地方とボルドー地方、6世紀頃にはロワール地方、シャンパーニュ地方などでブドウ栽培が始まっていきます。これらの土地は気候や土壌がブドウの栽培に適しており、フランスのワイン製造が盛んになった一因になりました。
中世に入ると教会や修道院が、教育機関や研究所のように文化を牽引していく役割を果たしました。農園の運営やワイン製造を教会が主導して推し進めた結果、生産量や品質が向上していきました。最後の晩餐でキリストの血を象徴するものとして位置づけられたワインは、キリスト教徒にとって信仰と薬用の役割を果たすようになりますが、中世も末期になると経済が発展して食事の一部となって庶民に浸透していきました。
16世紀にガラス瓶が登場したことから、17世紀になるとコルク栓の需要が急増しました。この頃からワインは現代に近い姿になって流通・販売されるようになりました。それまでワインは樽に入れて流通していましたが、瓶よりも保存できる期間が短く、個人で購入しにくいという側面がありました。瓶詰め・コルク栓が考案されたことでワインの流通量は飛躍的に高まり、これに合わせて生産量も格段に増えました。
1855年には、ボルドーのメドック格付けが行われました。この格付けはボルドーワインの品質を証明するものであり、現在でもシャトーごとに等級が守られています。ブルゴーニュの格付けは19世紀半ばに行われた地図を基礎に、畑ごとに世界で最も複雑かつ緻密に組みあがっていきました。このように、フランスでは長い歴史の中でワイン文化が発展し、現在でも世界的に高い評価を受けています。
主なワイン産地と特徴
二大産地として知られる中東部のブルゴーニュ地方と、南西部のボルドー地方は歴史が古く有名です。
とくにブルゴーニュ地方はフランスがキリスト教国になる紀元前から銘醸地として知られていました。
ボルドーは温暖な海洋性気候と豊かな土壌を持つ港町で、1152年に後のイングランド王ヘンリー2世とアキテーヌ伯の娘エレアノールが結婚してワインを含めた輸出が盛んになったことから繁栄しました。
比較的温暖な南フランスにも多くの名産地が存在します。ブルゴーニュの南に位置する伝統産地コート・デュ・ローヌ地方、フランスで最初にブドウ栽培が伝わった海沿いのプロヴァンス地方とコルス島、リーズナブルで良質なワインで無視することのできないラングドック・ルーション地方、自品種の豊かなシュッド・ウェスト(西南)地方などがその例です。
フランス北部にはドイツとスイスの国境に近いアルザス地方やフランス最長のロワール川流域に広がるロワール地方、珠玉のスパークリングワインを生み出すシャンパーニュ地方などが知られています。また、ブルゴーニュの東側に存在する小さなジュラ地方、スイスとの国境に近いサヴォワ地方も個性の光る産地です。
それぞれの産地が独自の特徴を持っており、フランスのワイン文化の豊かさを示しています。
代表的なブドウ品種
フランスでは赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン、シャンパーニュ(シャンパン)に代表されるスパークリングワインなど様々な種類があり、さらにテーブルワインから高級ワインまで幅広い価格帯のワインが造られています。ブドウ品種にも個性があり代表的な品種として、「カベルネ・ソーヴィニヨン」「メルロー」「シラー」「ピノ・ノワール」「シャルドネ」「ソーヴィニヨン・ブラン」が挙げられます。これらの品種はフランスを離れ、世界中のワイン産地でも生産されるようになったことから「国際品種」と呼ばれています。
カベルネ・ソーヴィニヨン
ボルドー地方原産。世界で最も知られる赤ワイン用のブドウで、ボルドー地方の高級ワインの主要品種でもあります。タンニンが強くフルボディで、熟成による味わいの変化も魅力です。
メルロー
ボルドー地方原産。赤ワインの品種で、カベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドしたり、単独で使われたりスタイルは様々。タンニンが柔らかく果実味が豊かで、飲みやすさに定評があります。
シラー
ローヌ地方が原産と考えられています。ローヌ地方をはじめ南フランスで栽培される品種です。特徴的なスパイスの香りがあり、フルボディの赤ワインになります。
ピノ・ノワール
ブルゴーニュ地方が原産と考えられています。赤ワインの品種で、ブルゴーニュ地方の高級ワインに使われます。ブレンドされるよりは単独で使われます。色は薄く、香りは繊細で、エレガントな味わいです。
シャルドネ
ブルゴーニュ地方が原産と考えられています。白ワインの代表的な品種で、ブルゴーニュ地方やシャンパーニュ地方の高級ワインに使われます。酸味とコクがバランスよく、樽熟成によってバニラやバターの香りが加わります。
ソーヴィニヨン・ブラン
ロワール地方が原産と考えられています。白ワインの品種で、ロワール地方やボルドー地方の高級ワインに使われます。爽やかな酸味とハーブや柑橘系の香りが特徴です。
フランスには国際品種のほかに、各地域に根差して伝統的に栽培されている「地品種」がたくさんあります。地品種には国際品種と違った個性があり、味わう楽しみと同時に知る楽しみができるのも魅力です。
ブルゴーニュ地方 - Bourgogne
本項目の数値は規定変更や数え方の違いにより変わりますので、参考としてご覧ください。
ブルゴーニュ地方は、フランスの中東部に位置します。北部に白ワインの産地として高名なシャブリ地区、少し離れた南に世界で最も高価なワインが生まれるコート・ドール(黄金の丘陵)と呼ばれる地帯があります。コート・ドールはコート・ド・ニュイ(ニュイ=北)、コート・ド・ボーヌ(ボーヌ=南)に分けられ、ニュイは赤、ボーヌは白で知られます。コート・ドールのさらに南部にコート・ド・シャロネーズ、マコネー、ボージョレなどの地区が広がっています。
ボージョレについて詳しく知りたい方はこちら
ブドウ品種
赤ワインはピノ・ノワール、白はシャルドネで造られます。例外はありますが、どちらもブレンドをせず単一品種で造られるのがブルゴーニュワインの典型的な特徴です。ブルゴーニュのブドウ栽培は歴史が古く、どちらの品種も修道士や農家によって脈々と受け継がれてきました。昔も今もこの2品種にとって最高峰の産地であり、人々を魅了してやみません。ボージョレ地区などの一部にはガメイ種も見られます。
気候条件
気候は大陸性で、昼夜や年間の寒暖差が大きいのが特徴です。春の霜害や夏の雹害など過酷な条件があるため、ヴィンテージがブドウの出来を大きく左右します。
AOC区分
ブルゴーニュ地方には84ものAOC区分があります。
大きく分類すると、地方名(ブルゴーニュなど)>地区名(ブルゴーニュ・コート・ドールなど)>村名(ジュヴレ・シャンベルタンなど)のようになります。一般的に限定される範囲が狭まるほど高い品質となり、高額な銘柄になります。
- 地方名(AOCブルゴーニュなど)
ブルゴーニュ地方全体で造られたワインで、最も基本的なランクです。
- 地区名(地理的補足)
村名よりも広い範囲で造られたワインで、特定の地域名が付けられたものです。
例:ブルゴーニュ・コート・シャロネーズ、ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイなど。
- 村名
AOC名にその名前を記載することができる村名が45あります。
格付け
ブルゴーニュ地方の格付けは畑ごとになされているのが特徴です。
- プルミエ・クリュ(一級畑)
村名のなかでも高ランクの畑で、通常の畑に比べて水はけと日当たりのよい斜面の上側にある傾向があります。数は645ほどで、生産量はボージョレを除いたブルゴーニュの全生産量のうち約10%です。
- グラン・クリュ(特級畑)
村名のなかでも最高ランクの畑です。ブルゴーニュ地方は比較的小さな畑が無数に広がっていますが、グラン・クリュはその中でたった39しかありません。主に斜面の最上部に位置する傾向があります。生産量はボージョレを除いたブルゴーニュの全生産量のうち約1.5%です。
ボルドー地方 - Bordeaux
ボルドー地方は、フランスの南西部に位置します。ボルドーの市街地は川の湾曲部にそって三日月形になっており「月の港ボルドー」として2007年に世界遺産に登録されました。
ガロンヌ川とドルドーニュ川が合流してジロンド川となり、大西洋に注ぐ川沿いにシャトーとブドウ畑が広がります。川はボルドーの土壌、船舶によるワインの運搬(とくに輸出)に重要な役割を果たしてきました。
シャトーの成り立ち
ボルドー地方でワイン造りを行う「シャトー」は16~17世紀頃から建てられるようになった醸造所が原型です。18世紀に貴族が所有するようになり、19世紀目前に起きたフランス革命によって富豪の手に渡っていきました。どの時代でも豊富な資金が投資されたことでワイナリーは栄華を極め、城のような建築になることもありました。そしていつしか畑・醸造施設、ワインの銘柄名は全て「シャトー」と呼ばれるようになっていったのです。
現在では特定の所有者が畑とその近くに醸造所をもち、栽培・醸造・瓶詰する場合は「シャトー」を名乗ることができることになっていますので、城があっても、なくても「シャトー・〇〇〇」と呼ばれています。
気候条件
海洋性気候のため冬は温暖で夏は涼しく、比較的降水量は多めで霧や露が多くなります。ボルドーの畑は広域に広がっているため、条件は畑によってまちまちですが、概して気候はブドウの栽培に適してます。
赤ワインの特徴
ボルドー地方のワインはジロンド川の左岸・右岸に大別されます。
左岸では砂利質によって生育されるカベルネ・ソーヴィニヨンと、ボルドー全般でうまく育つメルローなどのブドウ品種をブレンドして造られるのが一般的です。ブレンドすることによって複雑さが表れ、それにより生産者にとっても複数の品種を栽培することでヴィンテージごとに良い作柄の品種を多くブレンドすることができるというメリットがあります。
右岸では粘土質を好むメルローが主体となり、カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンなどがブレンドされます。メルロー単体のワインも多くあります。
白ワインの特徴
ボルドーで最も白ワインが造られているのは、2本の川に挟まれたエリアです。ボルドーの白ワインはソーヴィニヨン・ブラン、セミヨンのどちらかを主体にブレンドされることが多くなっています。そのためソーヴィニョン・ブランの軽快な爽やかさ、セミヨンのゆるやかなボリューム感の良いところを両方味わうことができます。左岸ではそれらを樽で熟成させた高級品も生産されています。
貴腐ワインの特徴
ボルドーには世界で最も高級な貴腐ワインの代名詞「ソーテルヌ」地区が含まれています。ガロンヌ川上流では秋になると冷たい空気と川の水温に差が生まれて霧が発生します。普通はブドウの大敵であるボトリティス・シネレア菌は、この特殊な環境によって貴腐と呼ばれる状態を作り出します。ブドウ皮の蝋質をこわして果粒から水分が抜けていき、非常に糖度の高い状態を作りだすのです。そのブドウを収穫してワインを造ると貴腐ワインになります。ブドウ品種はセミヨンが主で、ソーヴィニヨン・ブランなどがブレンドされる場合もあります。
AOC区分
ボルドー地方にはAOCが60あり、各AOCのテロワール(自然条件)を反映したワインが造られています。
AOCは地方名(ボルドーなど)>地区名(メドックなど)>村名(マルゴーなど)のようになっており、有名な村名になるほど高級品になるのが一般的です。
シャンパーニュ地方 - Champagne
フランスのワイン産地のなかで最も北部に位置しています。パリから近く、主要都市のランスまでは東へ車で90分ほど。現代であれば日帰りの旅行が可能な距離です。世界で最も重要な高級スパークリングワインの産地として知られています。
ブドウ品種
シャンパーニュ地方で造られる高級スパークリングワインの主要品種は白ブドウのシャルドネ、黒ブドウのピノ・ノワール、ムニエの3つです。
気候条件
大陸性の気候ですが、太平洋の影響を受けて夏と冬の極端な差が起きにくくなっています。とはいえ最高北緯49.5度(稚内が45.4度)と高いため年間平均気温は11℃と低く、冬の寒さによって一時的に醗酵が止まり、春になると発泡したワインが生まれるという偶然が引き起こされました。
AOC区分
シャンパーニュの主要AOCはシンプルで、AOCシャンパーニュです。シャンパーニュを名乗るためには畑も製法もたくさんの条件を満たしている必要があります。銘柄によっては「グラン・クリュ」「プルミエ・クリュ」を付記することができます。
格付け
シャンパーニュ地方の古くからの格付けはブドウ畑のある村ごとに行われており、グラン・クリュ(特級)の村が12、プルミエ・クリュ(一級)の村が42あります。
アルザス地方 - Alsace
フランス北東部、ライン川両岸に細長く平地が広がりストラスブールの街があるのがアルザス地方です。川をはさんで向こう側はドイツ。ラインと並行してヴォージュ山脈がそびえていて、ブドウ畑は山あいのエリアに帯状に広がります。標高は170~478mで高低差があるため、畑は小さく分かれた無数の区画に点在しているのが特徴です。アルザス地方の生産者はこの小さな畑ごとに、ブドウ品種ごとやブレンドした銘柄を造る傾向があるため、たくさんの銘柄が生み出されます。
ブドウ品種
歴史的にドイツの影響が色濃く、白ワインが多く造られています。ドイツとの違いは辛口が主流に造られてきたことです。使われる白ブドウ品種は香りの華やかさで記憶に残るゲビュルツトラミネールや、ピノ・グリ、ミュスカ、リースリングが代表的。黒ブドウはピノ・ノワールが有名です。概してアルザス地方のワインはアロマ豊かでボリューム感があり、柔らかな味わいとなることが多いです。
気候条件
標高が高いエリアにあるブドウ畑ですが、山を越えて吹く風によってフェーン現象が起き、温暖で乾燥した気候になります。半面大陸性の気候のため秋は涼しく冬は寒くなります。
AOC区分
一般的なAOCアルザスのほか、地理的名称を付記できる畑が存在します。ブドウは単一品種のもの、指定された品種のブレンドされたものが見られます。グランクリュ(特級畑)に指定された畑もあります。
格付け
グランクリュ(特級畑)に指定された畑が、51あります(2023年時点)。AOC名にその名前を付記することができます。
ジュラ地方 - Jura
東部に位置しスイスとの国境と接している小さなワイン産地です。ジュラ山脈のすそ野に広がる豊かな自然に抱かれた、世界に唯一の「黄ワイン」(ヴァン・ジョーヌ)の生産地域です。
ブドウ品種
地球上に恐竜の栄えていた「ジュラ紀」は、ジュラ山脈が由来となってできた言葉です。古いものが残るという意味ではワインと共通点があり、主要品種のサヴァニャンは世界のブドウ品種のなかでもとくに古い品種のひとつです。自然交配によって現代の重要品種「ソーヴィニヨン・ブラン」「シュナン・ブラン」などを生み出しました。サヴァニャン以外ではシャルドネ、黒ブドウではピノ・ノワールが有名です。
気候条件
半大陸性の気候で夏は暑くて乾燥しています。標高200~400mと起伏が大きく、同じジュラ地方でも少しの距離で違った天気になることがあります。ミクロクリマと呼ばれるこの現象により、さまざまな気候条件があります。
AOC区分
ワイン生産量の大部分は主要産地のアルボワ産です。AOCアルボワとスパークリングワインのAOCクレマン・ド・ジュラが有名です。
ヴァン・ジョーヌ
ジュラ地方では「黄ワイン」と呼ばれる『ヴァン・ジョーヌ』が造られています。サヴァニャンから造られた白ワインをオーク樽で熟成させる際、産膜酵母という酵母の膜の下で60か月以上置きます。色味は黄色く変化し、くるみやヘーゼルナッツ、炒ったアーモンドのような風味がつきます。
サヴォワ地方 - Savoie
東部に位置しアルプス山脈をはさんでイタリア、レマン湖をはさんでスイスとの国境がある小さなワイン産地です。ワイン産地というより冬に多くのスキーヤーを魅了するレジャーエリアとして有名です。山がちなため畑はしばしばアルプス山の起伏に邪魔されながら存在しています。
ブドウ品種
スイスを代表する白ブドウのシャスラと、地場品種となっているアルテス(ルーセット)から造られる白ワインが有名です。酸味のきいた、爽やかなスタイルが主流です。
気候条件
大陸性の気候のため北風が冷たく乾燥しますが、南風の暖かさと海からの西風によって湿度がもたらされて大陸性の厳しい気候をやわらげます。夏は湖が近くのブドウ畑を暖めます。
AOC区分
AOCヴァン・ド・サヴォワを中心にAOCがいくつか規定されています。サヴォワの後ろに村名を付記できるクリュが16あります。
ローヌ地方 - Rhone
フランスの南東部、ブルゴーニュ地方の南端から南へ地中海付近までローヌ川沿いに広がる産地です。文化的に古くから栄えていて、14世紀にローマ法王が法王庁をアヴィニョンに置いたことは象徴的な出来事として記録されています。ワイン造りも盛んでブドウ栽培は紀元前後から行われていました。
ブドウ品種
ローヌ地方を代表するブドウ品種は、黒ブドウのシラーです。スパイシーでフルボディのワインができ、世界のワイン産地で愛されています。北ローヌでは主に単体でワインとなり、南ローヌではグルナッシュを主体にした赤ワインにシラーがブレンドされるスタイルが主流です。白ブドウではヴィオニエが有名で、華やかで印象的な芳香を放つワインが造られます。
気候条件
南フランスらしい温暖な気候で、ミストラルと呼ばれるローヌ渓谷から吹く冷たい風がブドウ栽培に恩恵を与えています。北ローヌは川沿いの急斜面、南ローヌは平坦な畑でブドウ栽培が行われており南北で違った表情のワインが生産されています。
AOC区分
AOCコート・デュ・ローヌをはじめ、いくつかの村が名乗れるAOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュと、特色ある地区で造られるワインのみが名乗れるAOCが数多く存在します。古くからブドウ栽培が行われ、文化的に色濃いローヌ地方らしく歴史に裏打ちされた細かな規定が定められています。
重要なAOCはこちらのコンテンツでご紹介しています。
プロヴァンス地方 - Provence
フランス南東部、地中海の海岸沿いに広がる産地です。カンヌ映画祭や南フランスを代表するリゾート地として知られるプロヴァンスは、フランスにブドウ栽培が伝わったの最初の土地です。世界的にみるとロゼワインの一大産地で、観光地として栄えているため畑をやるにも土地の値段が高くワインも少々高価です。近年になって潤沢な資金をワイン生産に回す動きがあり、充分にその価値のある銘柄に出会うことができます。
ブドウ品種
プロヴァンスは生産量のうち89%がロゼワイン(2016年データ)で、グルナッシュ、サンソー、ムール・ヴェードル、シラーなどのブレンドで造られます。白はロール(ヴェルメンティーノ)など。こちらも複数の品種がブレンドされることが多いです。
気候条件
典型的な地中海性気候で、夏は暑く乾燥し晩秋から冬に降雨があります。ミストラルと呼ばれる冷たい風によって夏の暑さが少し和らげられます。
AOC区分
AOCコート・ド・プロヴァンスがプロヴァンスの大半を占めます。3番目の生産量を誇るAOCバンドールは高級品で、世界最高峰のロゼワインと称されています。また、非常に長命で偉大な赤ワインも生み出しています。
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- フランス
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ロゼ
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2021
Domaine Lafran-Veyrolles
ドメーヌ・ラフラン・ヴェロル
Bandol Rose Tradition
バンドール ロゼ
750ml, 3,700 yen
こちらの商品は現在取り扱いがございません
コルス(コルシカ)島 - Corse
南フランス「ニース」の南、地中海に浮かぶ島です。歴史的にジェノヴァの統治が長かったためイタリアの影響が色濃く残ります。そのためイタリアの主要品種サンジョヴェーゼが「ニエルッキオ」と呼ばれて栽培されるなど、独特のワインが産出されています。ナポレオンの生誕地として有名な町「アジャクシオ」など、5つのAOCがあります。
ラングドック・ルーション地方 - Languedoc-Roussillon
フランス最南部、ちょうど東西の中央にある地中海沿岸の産地です。ラングドックとルーションは別の地方ですが、ワインの生産地域分類ではひとつにまとめられることが多いです。AOCには認定されませんが、世界的に人気のカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ソーヴィニヨン・ブランなどを使ったIGTワインの一大産地という側面をもっており、リーズナブルに喉と心を潤してくれる多くのボトルが生み出されています。
ブドウ品種
AOCに認定されるワインは、グルナッシュ、ムール・ヴェードル、シラー、カリニャンなど南フランスの各地で栽培されているブドウ品種をブレンドした赤ワインが造られています。白はグルナッシュ・ブラン、ピクプール、マルサンヌ、ミュスカなどの品種があり、こちらもブレンドされている場合が多いです。
気候条件
典型的な地球海性気候で冬は穏やか。夏は暑く乾燥して雨がほとんど降りません。中央ヨーロッパからの冷気を運ぶトモランタンと呼ばれる風の助けもあり、有機栽培を比較的容易に行うことができます。
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- フランス
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赤
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2017
Domaines Paul Mas
ドメーヌ・ポール・マス
Chateau Paul Mas Clos des Mures
シャトー・ポール・マス クロ・デ・ミュール
750ml, 2,500 yen
こちらの商品は現在取り扱いがございません
シュッド・ウェスト(西南)地方 - Sud-Ouest
フランス地図上でボルドー地方の右側と下側に位置するワイン産地です。ボルドーからみて川の上流に位置するシュッド・ウェストはいつしか「奥地のワイン」と呼ばれるようになりました。エルサレム、バチカンと並ぶ巡礼地「サンティアゴ・デ・コンポステーラ(ガリシア州/北スペイン)」の巡礼路にあたることから12世紀以降に教会や修道院が増えてブドウ畑が拡大したという歴史をもつ産地です。
シュッド・ウエストのワインが発展した12世紀は、後のイングランド王ヘンリー2世とアキテーヌ伯(ボルドーを統治していた)の娘が結婚して繁栄した時代と重なります。ボルドーワインには特権が与えられ、ジロンド川経由で輸出が保護された一方、上流域や支流域のシュッド・ウェストのワインはクリスマスより前にボルドー港に持ち込むことが禁止されるなど冷遇されました。そのためボルドーの影に隠れて国際的な成功から遅れ、19世紀末のフィロキセラとべと病被害によって質より量を求める時代が訪れました。しかし近年になると志の高い生産者が現れて量より質を求めるスタイルに変わり、独自性のあるAOCがいくつも生まれていきました。
重要なAOCをいくつかご紹介します。
AOCカオール
赤ワインの深みと長命さは中世の頃から有名で、黒ブドウのコット(マルベック)を使って造られています。近年マルベックはアルゼンチンで大成功を収めており、本家のカオールも再注目されています。
AOCマディラン
フランスの偉大なワインのひとつに数えられる土着品種のタナを使った赤ワインが有名です。フランスに数ある品種の中でも最も個性の強いタナは色が濃くタンニンが強い(タンニンの語源になったとされている)ブドウで、タフで力強いワインができます。
AOCジュランソン/ジュランソン・セック
ジュランソンの白はフランスで最も際立った白ワインのひとつに挙げられます。11月、ときには12月まで樹に房をつけたまましなびさせたプティ・マンサン種の甘口と、早めに収穫されたグロ・マンサン種を主体にした、僅かにハーブのヒントのある辛口が高い品質と個性を見せてくれます。
AOCビュゼ
ビュゼは27以上の村に点在するブドウ畑から造られます。収穫されたブドウの大半は組織のしっかりとした一つの協同組合によって管理されるため、とくに赤ワインは「田舎のクラレット」(クラレット=英語でボルドーの赤ワインのこと)と形容されて愛されています。
AOCフロントン
花の香りがする土着品種のネグレットを主体にブレンドされた赤ワインは、近郊の都市トゥールーズ(サッカー日本代表が初めてワールドカップの舞台に立った地)のローカルワインとして楽しまれています。
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- フランス
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赤
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2020
Chateau Terre Fauve
シャトー・テール・フォーヴ
Bel Air Fauve Rouge Fronton
ベレール フォーヴ フロントン
750ml, 1,850 yen
こちらの商品は現在取り扱いがございません
ロワール渓谷地方 - Val de Loire
フランス北西部『ロワール川』の流域に広がるワイン産地です。
国内最長のロワール川は全長1,012kmに及び、南フランスのリヨンとアヴィニョンの中間あたりにある山(モン・ジョルジュビエ・ド・ジョン)から塩で有名なゲランド近辺で大西洋に注ぎます。下流側の440kmほどがワイン産地として知られる『ロワール(渓谷)地方』です。
産地は東京~京都間くらいの距離に広がるので、造られるワインは非常に多岐にわたります。全体では白ワインがAOCワインの5割を占め、ブドウ品種は下流から上流に向かって『ミュスカデ』『シュナン・ブラン』『ソーヴィニヨン・ブラン』といった具合に変化します。
3割がロゼ、2割が赤といった比率で、ボルドー地方で補助的なブレンドに用いられる黒ブドウの『カベルネ・フラン』は、ロワール地方では主力で単一品種の銘柄も見られます。
ロワール地方のワイン造りは歴史があり、ナントの周辺にローマ人が初めてブドウを植えたのは約2000年前。5世紀以降に川の流域でブドウ畑が広がりました。シュリー・シュール・ロワールからシャロンヌ間は古城が立ち並ぶ王侯貴族の城(シャトー)が立ち並び「フランスの庭」と表現される風光明媚な光景が広がります。
ワインの代表的な産地と代表的なブドウ品種を並べて表形式でご紹介します。
※代表的な産地や品種のみを抜粋
ペイ・ナンテ地区
『ミュスカデ』を使った白ワインが有名なエリア。アルコール醗酵後に発生した澱とワインを一緒に貯蔵して風味を豊かにするシュー・ル・リー製法が用いられます。
白 | 赤 | ロゼ | |
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ミュスカデ |
ミュスカデ |
アンジュー&ソミュール地区
『シュナン・ブラン』を使った白ワインで有名で、辛口~極甘口まで非常に多彩な品種の魅力を引き出すエリア。辛口はもちろん、極甘口の銘柄も希少な銘醸品になっています。
白 | 赤 | ロゼ | |
---|---|---|---|
アンジュー |
シュナン・ブラン |
カベルネ・フラン |
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ロゼ・ダンジュー |
グロロー、カベルネ・フラン |
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サヴニエール |
シュナン・ブラン |
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クーレ・ド・セラン |
シュナン・ブラン |
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コトー・デュ・レイヨン |
シュナン・ブラン(☆) |
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カール・ド・ショーム |
シュナン・ブラン(☆) |
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ボンヌゾー |
シュナン・ブラン(☆) |
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ソミュール |
シュナン・ブラン |
☆印:極甘口の重要な銘醸地
トゥーレーヌ地区
『シュナン・ブラン』の白ワインとともに、『カベルネ・フラン』の赤ワイン産地として名高いシノン、ブルグイユを擁するエリアです。
白 | 赤 | ロゼ | |
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トゥーレーヌ広域 |
シュナン・ブラン |
コット、カベルネ・フラン、ガメイ |
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ブルグイユ |
カベルネ・フラン |
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シノン |
シュナン・ブラン |
カベルネ・フラン |
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ヴーヴレ |
シュナン・ブラン |
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シュヴェルニー |
ソーヴィニヨン・ブラン |
ピノ・ノワール |
サントル・ニヴェルネ地区
シャルドネに次いで世界で2番目に生産面積の多い『ソーヴィニヨン・ブラン』の銘醸地サンセール、プイィ・フュメのあるエリア。黒ブドウのピノ・ノワールも産出されています。
白 | 赤 | ロゼ | |
---|---|---|---|
サンセール |
ソーヴィニヨン・ブラン |
ピノ・ノワール |
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プイィ・フュメ |
ソーヴィニヨン・ブラン |
||
メネトゥー・サロン |
ソーヴィニヨン・ブラン |
ピノ・ノワール |
スパークリングワインでも有名
ロワール地方はスパークリングワインにも独特のものがあります。アンジュー&ソミュール、トゥーレーヌ地区で造られる瓶内二次醗酵のスパークリングワイン『クレマン・ド・ロワール』や、同じく瓶内二次醗酵で『ムス―』の名前が付けられる銘柄が『ソミュール』や『ヴーヴレ』などで見られます。ガス圧が1~2.5の弱発泡性『ペティヤン』も伝統的です。
関連コラム
参考文献 ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第7版』/ガイアブックス/2014年 シルヴァン・ピティオ、ジャン=シャルル・セルヴァン/『地図でみるブルゴーニュ・ワイン』/早川書房/2016年 一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2018』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2018年 ビル・ナンソン/『ブルゴーニュ』/ガイアブックス/2012年 ジェイムズ・ローサ―/『ボルドー』/ガイアブックス/2011年 大塚謙一、山本博、戸塚昭、東條一元、福西英三/『新版 ワインの辞典』/柴田書店/2010年 参考サイト
Weather Spark/地球上のあらゆる地域の年間の気候/ランス における年間の気候および平均気象/2023.8.17閲覧