ワインベルトとは
一般的に、ワイン用のブドウは『ワインベルト』と呼ばれる緯度帯の国や地域で栽培されています。北緯30~50度、南緯30~50度にあり、年間平均気温10~20℃のエリアの多くが含まれます。ブドウの花の開花から収穫までの時期の日照時間が年間1250~1500時間、年間降雨量500~900mmで栽培に適した条件が揃っています。
ワインベルトの変遷
しかしながら世界のブドウ産地は変遷を遂げており、従来の『ワインベルト』に収まらないブドウ畑が見られるようになってきています。その理由をご紹介します。
気候変動の影響
近年では気候変動の影響でワインベルトよりも高緯度のワイン産地が注目されるようになっています。北緯50度を超えるイギリスで生産される高品質なスパークリングワインはその代表例です。フランスのシャンパーニュ地方に習ったスタイルで、ピノ・ノワールとシャルドネを主体に瓶内二次醗酵で造られています。
意欲的な生産者の登場
さらに高緯度のスウェーデンやデンマークでもブドウ栽培のチャレンジが進行中です。ノウハウがないため栽培のスペシャリストを誘致するなどの活動が活発化しています。このような傾向はさらに進む見込みで北半球では北極点を、南半球では南極点を目指してブドウ畑が広がっていくと予想されています。
技術の発達
栽培技術の向上はより寒冷な地域のみならず、亜熱帯の地方におけるブドウの生産を可能にしています。インド、メキシコ、ブラジル、ペルー、タイやインドネシアなどの国々でもブドウはワインに加工されるようになってきています。
標高
オーストラリアのアデレード・ヒルズのように標高の高さを利用することでワイン産地として成功している例もあります。高い標高では条件が揃えば低い気温と豊かな日照時間の両方が得られ、ワイン用のブドウ栽培に適した環境が得られます。とくにブドウ房が育成する期間に夜間の気温が下がることは重要です。ブドウは光合成を行わない時間に呼吸によって酸味を失い、とくに気温が高い方がその度合いが大きくなります。
従来のワインベルトはタテとヨコの帯で表現されていましたが、『産地の標高』を加えた3Dでワイン産地を捉えることが大切になってきています。
参考文献
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第8版』/ガイアブックス/2021年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年
参考サイト
AFPBB News/北欧のワイン造り、新種ブドウで気候条件克服 味は「申し分なし」-2020年2月16日/2023.10.13閲覧