はじめまして、コウノカヨです。たくさんの記事のなかからここに辿り着いていただいたみなさま、ありがとうございます。
これまで17年間、気づけばヨーロッパ9か国と幅広くワインの買い付けを行ってきました。そうして知った「ワインは人が造っている」という当たり前の事実。その地その地に根差した個性豊かな造り手たち。彼らから見聞きした話の数々は、わたしのワインへのかかわり方を今なお深く広いものにしてくれています。
このコラムではそんな海の向こうの愛すべきWine Peopleの横顔や、ワインにまつわるお話しをご紹介していきます。
スパークリングワインというと、みなさんは何を思い浮かべますか?
そもそも・・・、ワインを職業にする前のわたしは日常でスパークリングワインという言葉を使うことがなかった気がします。泡のあるワインはすべてシャンパンだと思っていました。そんな訳ないよ!ということはワインに詳しくなった今だから分かることで、こういう誤解は一般的にはよくあるんじゃないかなと思います。
ワインの業界では普通のワインをスティルワイン、発泡性ワインをスパークリングワインと呼び分けたり、シャンパンではなくフランス語でシャンパーニュと言ったり、はたまた愛着を込めて『泡』と呼んだりします。泡ですよ、泡。石鹸の泡以外にわたしたちの身近に泡があるでしょうか?
ワイン若葉マークの頃は、そんなこと一つ一つが新鮮でした。そしてすぐに最大の衝撃がやってきます。
シャンパン、いえ、シャンパーニュ ランチというものに誘われたのです。“シャンパン”はお祝いの席で乾杯するお酒だと思っていたのに、これは食事を通してシャンパーニュだけを味わうというまるで夢のような世界。味のタイプも辛口から甘口まで幅広く、色も白、ゴールド、ロゼと美しいバリエーションがありました。
そしてグラス。ワインを飲む人たちは、あのよく見る平らなグラス(クープグラスという)を使っていなかったのです。なぜ?
こんなわたしですがその後ワインを勉強して、十年という長い時間をシャンパーニュのバイヤーとして過ごしました。奥深いワインの世界。シャンパーニュも例外ではありません。
例えばシャンパーニュ方式と呼ばれる最も手間のかかる製法。
初めは単純に瓶内二次発酵と覚えていましたが、シャンパーニュの醸造家たちと知り合ってその真意に触れたとき、シャンパーニュを育んだ自然環境と美しい泡を求めて創意工夫を繰り返してきたひとびとの熱意にとても感動しました。
シャンパーニュ方式という偉大な発明から伝播、発展していった様々なスパークリングワインの製法も見逃せません。製法や産地で変わるワインのスタイル。それらをシチュエーションに合わせて自由に選べることの喜び。いいですよね。
世界的にシャンパーニュの人気が高まるにつれて、ほかの様々なスパークリングワインも注目されるようになり、日本でもイタリア、スペイン、南アフリカ、オーストラリアなどから届いた素晴らしいスパークリングワインが楽しめます。
スパークリングワインをもっと楽しむためのお勧めは、王道シャンパーニュともうひとつ製法の異なるスパークリングワインを同時に味わうこと。比較をすると違いがとてもよくわかりますよ。
シャンパーニュは、チャーミングな果実味が魅力的なムニエ種を得意とし、「美しい丘」という素敵な名前を持つボーモン・デ・クレイエールはいかがでしょうか?
ワイナリーの顔となるグランド・レゼルヴはシャンパーニュならではのアッサンブラージュ(ブレンドのこと)の技が光るムニエ、シャルドネ、ピノ・ノワールのブレンド。なんとそのブドウの比率は畑の栽培比率と同じですから、まさに畑を写し取った逸品といえるでしょう。
寛ぎのひと時に、ワイングラスを片手に産地に思いを馳せながらお楽しみください。