少しずつ寒くなり、吸い込む空気に冬の訪れを感じる頃、飲みたくなるのはそう、少し重めの赤ワイン。
季節によって、食べたい物や飲みたい物が変わるのは私だけではないはず。まるで衣替えのように、テーブルに並ぶワインの色が、白から赤へと変わる...。そんな方が私以外にもきっといるだろう。
赤ワインといえば、数々の銘醸ワインを産みだす、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、ピノ・ノワールのようなブドウ品種が最も有名である。しかし赤ワインを造る黒ブドウには、それら世界中で栽培されている国際品種の他にも様々なブドウが存在する。
私が冬に向かうにつれ、味わいたくなるブドウ品種。それは、糖度が高めで果実味が豊富、酸味が穏やかでしっかりとしたボディが魅力的な『ジンファンデル』だ。
ジンファンデル。それは主にアメリカ西海岸のカリフォルニアで栽培されており、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワールに次いで第3位の栽培面積を誇る。
そんなジンファンデルの造り手として人気が高いのは、デリカート・ファミリー・ヴィンヤーズ。これまでに「US・ワイン生産者・オブ・ザ・イヤー」に3度、「アメリカン・ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」にも3度選ばれた優良生産者だ。
彼らが産み出すアメリカNo.1ジンファンデルブランド「ナーリー・ヘッド」シリーズには、「1924 ダブル・ブラック」というワインがあり、ジンファンデルが主体。濃厚濃密で、果実の甘さとスパイスのニュアンスがとても魅力的だ。
このジンファンデルを味わう時に是非オススメしたい音楽。それは、アメリカのジャズシンガー、『ホセ・ジェイムズ』の作品だ。彼の、甘く、かつスモーキーでセクシーな歌声はまるでジンファンデルそのもののようだ。
ホセ・ジェイムズは、アメリカミネアポリス生まれ。現代ジャズボーカルのカリスマである。ジャズにR&B、ソウル、ヒップホップの要素を融合させた、クロスオーバー(ジャズ、ソウル、ロックなどの分野の要素が混合した音楽)の第一人者といえる。
そんな彼が、敬愛するジャズシンガー、ビリー・ホリデイの名曲の数々を収録したトリビュート作品「イエスタデイ・アイ・ハド・ザ・ブルース」。この作品で彼は、自身を特徴づけるクロスオーバーとは異なり、いわゆる“ジャズ”的な、スタンダードナンバーを歌い上げている。
先に述べたワイン、「ナーリー・ヘッド 1924 ダブル・ブラック」。
このワインは、1920年から1933年まで続いたアメリカ合衆国における禁酒法の時代へのオマージュとして登場したシリーズの一本である。デリカート・ファミリー・ヴィンヤーズはちょうど同時期の1924年にブドウ栽培を開始し、禁酒法下にも、代々ブドウ栽培を受け継いできた。
アメリカの禁酒法は、実はジャズの世界にも大きな影響を及ぼした。
ジャズは禁酒法時代に、マフィアにより運営された違法酒場で演奏され、そこで数々の偉大なミュージシャンが生まれたのだ。
ビリー・ホリデイも、そういったステージに立った一人である。
このような背景を想うと、「ナーリー・ヘッド 1924 ダブル・ブラック」と、ホセ・ジェイムズの歌声で歌われるビリー・ホリデイのトリビュート作品が、益々完璧なペアリングに感じられるのだ...。
そして、最後にもうひとつ。「ナーリー・ヘッド」とは、「イカした頭」という意味があるそうなのだが...。是非、2018年以降のホセ・ジェイムズのヘアスタイルを見てみてほしい。この頃から急にアフロヘアになり、正に「ナーリー・ヘッド=イカした頭」なのだ!
このことを知ればデリカート・ファミリー・ヴィンヤーズの方々も、きっとホセ・ジェイムズのファンになるだろう。いや、もしかしたら既にファンかもしれない...。