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ワインと暮らす

2022年を振り返る。『BLACK RADIO III』と『サンテロ ブラック ブリュット』 ~音楽×ワイン~

2022年を振り返る。『BLACK RADIO III』と『サンテロ ブラック ブリュット』 ~音楽×ワイン~

ワインと音楽を合わせて楽しむコラム。2022年の印象に残った出来事を振り返りながらスパークリングワインを。年末~年始に東京でカウントダウンライヴを行うロバート・グラスパーのアルバム『BLACK RADIO III』を聞きながら。筆者はジャズシンガーの東海林美乃梨。




気がつくと、2022年も既に終わりに差し掛かっている。
この一年を振り返ると、日本国内においても、世界情勢に目を向けても「良い一年だ」とは言い難い出来事が多かったように思う。
しかしどんな事が起ころうとも、時間は毎日同じ速さで進み、一人一人の日常は刻々と進んでいく。
私はこの一年も、どこかの誰かにワインを届け、ワインを学び、ワインを味わい、音楽を聴き、作り、奏でる…。そんな日々を変わらず過ごしていた。

今年携わった仕事の中で印象的だったものひとつは6月、「サンテロ社」オンラインワイナリーツアーのイベント中継クルーを担ったことである。
「サンテロ社」は、イタリア・ピエモンテ州に在る世界的スパークリングワインメーカーだ。ポップなラベルとコスパの良さが売り、という印象のワイナリーだったが、ツアーを中継しているうちにそれだけではない「サンテロ社」の魅力が、ひしひしと感じられて見方が変わったのだ。

【参加レポート】イタリア・サンテロ オンラインワイナリーツアー

映し出された「サンテロ社」の映像はワイナリーというよりはほぼ工場で、隅から隅までとても清潔に保たれており案内人のエクスポート・マネージャーのエレナさん、働く人たち、そしてオーナーのジャンフランコ氏、どこにカメラが向いてもみんなとてもハッピーに仕事をしていた。自分達が造るワインへの愛、そしてそれを飲んでくれる人への愛…。それらが滲み出た素敵なワイナリーであった。ツアーの終盤にはミシュラン一つ星レストラン、ディエゴ・ボンジョヴァンニのシェフがサンテロ社の様々なワインに合わせた料理を実演するという巧みで華やかなライブ中継を準備してくれていた。私はそのとき彼らがワイン愛に溢れたエンターテイナーだと気づかされたのだ…。

さて、音楽の方では2022年にリリースされた印象的な一枚に、ロバート・グラスパーの『BLACK RADIO III』がある。
ロバート・グラスパーは、ジャズとヒップホップのクロスオーバー(ジャズとヒップホップの分野の要素が混合した音楽)により音楽シーンを牽引するピアニスト・音楽プロデューサーである。
2012年に発表したアルバム『BLACK RADIO』は、史上初めて4つのジャンル(ジャズ、ヒップホップ、R&B、アーバン・コンテンポラリー、コンテンポラリー・ジャズ)のチャートで同時にトップ10入りし、続いて2013年にリリースされた『BLACK RADIO 2』でも、その偉業は達成された。
日本のミュージシャンの中にも、彼の影響を受けたミュージシャンは少なくないはずだ。

そんなロバート・グラスパーが約10年ぶりにシリーズ第3弾をリリースしたことは、ジャズ、R&B、ヒップホップファンにとっては嬉しいニュースであった。
パンデミックの最中に制作されたそのアルバムは、これらのジャンルを語るに欠かせない素晴らしいシンガーやパフォーマー達と共に造られ、アメリカ社会における黒人の若者たちへの力強いメッセージが込められている。そして彼は、ある対談記事でこのようなことを述べていた。「怒りには愛はない。だから愛について話したいと思った。」
そう。今世界に必要なものは「愛」なのだ。

ミュージシャンが音を奏でる時、農園で葡萄が育てられる時、醸造家がワインを造る時、そこには必ず愛がある。もちろん音楽やワインだけではなく全ての分野において、何かをつくり出す時には「愛」が生まれる。
そんな小さなひとつひとつの愛が、世界中で沢山生まれ地球を覆いつくせば、世界はもっとハッピーになるのではないだろうか。怒りや支配ではなく、創造の元に生まれる愛によって…。

『BLACK RADIO III』を聴きながら、少し難しいテーマについて考えはじめ、頭が少し重くなってきた…。そんな私の頭を“中和”させる為に、弾ける愛に溢れるサンテロ社のスパークリングワインを飲むことにしよう。
「サンテロ ブラック ブリュット」
ボトルのエチケットから感じるイメージ通りのキリッとした辛口スパークリング。
ワインと料理のペアリングでいうところの中和(料理とワインの味わいのバランスを整える)のペアリングのように、重たい頭をスッキリと整えてくれる。
しかも『BLACK RADIO III』のジャケットと並べると、うん。しっくりくる…!
そんな、ワインと音楽の“中和”を楽しみながら、1年を振り返る時間は良いものだ。
2023年はもっともっと沢山の「愛」が、世界中で生まれますように…。



ロバート・グラスパーロバート・グラスパー(ユニバーサル ミュージック)


ブラック・レディオ3ペアリング推奨アルバム:「Black Radio III」ブラック・レディオ3(ユニバーサル ミュージック)
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