「お酒を飲むと自分らしくなれる。」
先日出会った若い女性が、そんなことを言った。
「確かに!」と私は頷いた。
最も、私の場合は“自分らしく”なりすぎた、お酒の失敗談も多々あるのだが…。
「適量のアルコールはリラックス効果をもたらす」ということはあらゆるお酒にまつわるサイトで言及されている。
日々仕事や学業に勤しむ私たちにとって、心からリラックスをして、ありのままの自分で居られる時間は1日の中でそう多くはない。そんな日常を“自分らしく”生きるために、好きなお酒、私の場合はワインが、力を貸してくれることは確かにあると思う。
そんな私が最近出会った印象的なワインのひとつに「マート・フリッツァンテ・ビアンコ」がある。
フリッツァンテは、イタリアで造られる微発泡のワインである。泡が比較的少なく、穏やかな発泡感を楽しめる。爽やかな味わいが特徴的であり、食前酒として、また前菜と楽しむのにも最適な一本だ。
そしてこのフリッツァンテは、アルコール度数が通常のワインより若干低め。
そう。“ちょっとリラックスしたい時”“素の自分になりたい時”にぴったりなワインなのである。
2003年に設立された、ワイナリー「マート」は、設立時よりブドウを有機農法で栽培し、オーガニック&ヴィーガンに焦点を当てた高品質なワインを造る生産者だそう。
そして、「マート」という言葉はイタリアの方言で「Crazy Happy」を意味するという。私はその名前も気に入った。
自分らしく、心から笑え、クレイジーなくらいハッピーな時を、このワインは与えてくれるような気がしてくる…。
ワインと音楽のペアリングを楽しむ私としては、自分らしくある為にもちろん音楽は欠かせない。
今回「マート・フリッツァンテ・ビアンコ」にペアリングしたのは、日本人の母とアメリカ人の父の元に生まれたシアトル出身のシンガー、UMIの「happy im」という一曲。
「あー!なんだろう。この脱力感。」
ナチュラルで真っ直ぐな、優しい彼女の歌声が聞こえた瞬間に、体の力が抜ける。
「Sometimes I need to time to understand myself (=時々私には、自分自身を理解する時間が必要なの。)」
そんな歌詞から始まるこの曲を聴きながら、「マート・フリッツァンテ・ビアンコ」をコクリ。
歳を重ね、日々に追われると、素直に夢を追うことや愛を感じることに臆病になることがある。「こうあるべき自分」を作り、本当の自分から逃げることもある。
そんな自分と向き合おうとする時、このUMIの歌声と、マートのフリッツァンテは、“自分らしい”状態になる手助けをしてくれるようだ。
「大丈夫。自分らしくいていいんだよ。自分を信じて。」
そう私の心に投げかける...。
そもそも自分らしいってなんだろう。
そんなことを考え始めると、取り留めもなく続くのだけれど、きっとそれは、とてもナチュラルに幸せを感じることができ、素直にCrazy Happyでいられる状態なのではないか。そんな風に思う。
「聴いている人がもっと自分の選んだ道”を好きになってくれますように」そんなUMIの想いが込められているというこの曲。
そして、「Crazy Happy」という意味を持つこのワイナリー名に込められた想いと、そこで生まれたナチュラルなワイン。
それぞれの造り手の想いが、私の中で交わり溶け合い、なんだか私自身も浄化され、幸せに満ちた気分になる。
「お酒を飲むと自分らしくなれる。」
そう述べた彼女はおそらく20代前半。
私の半分くらいの歳の彼女でさえも、日々何かしらの鎧をつけ、自分らしくなれる時間には限りがあるのかもしれない。
彼女との再会を期待しながら、またフリッツァンテをコクリ。
何気ない日常の中で起こる人との出会い、星の数ほどあるワインの中から巡り合うワイン、直感的に惚れる音楽。私にとってそれらは全てHappyの要素。そのひとつひとつの幸せを素直に噛み締めながら、自分らしく進んで行きたい。“Crazy Happy”な人生を目指して...!
ペアリングワイン: マート フリッツァンテ ビアンコ
ペアリング曲:『happy im』