「AMARTA」
甘味と雑味を楽しむ
常識を覆す吉野の日本酒
サンスクリット語でアムリタという
単語があります。
漢字では「甘露」と記され、
蜂蜜のように甘くトロリとした液体を指す
この言葉。
飲めば苦悩を癒やし、
不老不死をもたらすとも言い伝えのある
この聖水の名に基づいた
「Amarta」(=アマルタ)というお酒が、
吉野杉の産地、奈良県吉野から誕生しました。
日本酒の概念を覆す甘く雑味のある味わい、
吉野杉の産地ならではの木桶仕込み。
1本のお酒に込められた長い背景と想いを
知れば、
その味わいはより奥深いものと
なることでしょう。
- 原材料
- 米(国産)、米麹(国産米)、
純米酒(国産) - 使用米
- 奈良県産米
- 飲み頃温度
- 5℃~12℃
- アルコール度数
- 19度
- 内容量
- 500ml
-Interview
作り方も、味も、
地域ならではの個性を
凄く大事にして作りました
甘味と雑味という独特の味わいを
持つアマルタ。
日本酒でありながら、日本酒のようでない、
様々な魅力を備えた吉野で生まれた
本作について、
杜氏を務めた美吉野醸造専務の
橋本晃明氏に伺いました。
橋本晃明
(美吉野醸造専務 & 杜氏)
1912年から続く美吉野醸造の4代目蔵元杜氏。大学で醸造を研究したのち、剣菱酒造での修行を経て、美吉野醸造へ入社。2017年にはこれまでの常識を覆し、すべての酒造りを無添加酵母に切り替えるなど、革新的な挑戦を断行。吉野ならではの土地に豊かな自然の恩恵を受けた、手作りだからこそできる「米の旨味が伝わる酒」を醸し続けている。
奈良県吉野郡吉野町六田1238番地1
HP:https://www.hanatomoe.com/
―アマルタというお酒ですが、どんなお酒ですか?他にはないこのお酒ならではの魅力から聞かせてください。
橋本:アマルタは、一般的な日本酒のイメージである吟醸酒や大吟醸酒の“綺麗で飲みやすい”というものではなく、甘み、雑味などを含んだ複雑な味わいのあるお酒なんです。日本酒というジャンルと少し違うと思われがちなお酒ですが、日本酒の古典的な製法も使いながら、新しい味わいをコンセプトに作りましたので、そういった部分を楽しんでいただきたいです。
―“日本酒とは違うと思われがち”というのは、具体的にどのような部分でしょうか?
橋本:これまでの日本酒というのは、“削ぎ落として味を綺麗にしていく”という考えのもとに作られてきたお酒が多かったので、“雑味”というのはとても嫌われるんです。つまり、“雑味がない方が美味しい”という考え方が多かった。ですが美吉野醸造では、お米をしっかりと溶かして味わいに変え、“雑味がたくさんあるから美味しい”という価値観で作っているんです。この雑味というのは旨味と置き換えることもできます。この旨味を感じるには酸味が不可欠なんですが、一般的に酸味が多いと雑味が多いと考えられているので、酸味によって調和させるという我々の作り方は、酒造りの主流の設計とは真逆にある。そこが日本酒とは違うと思われがちな理由なんです。一般的な日本酒の市場で最初に目にするのが精米歩合、吟醸酒、大吟醸酒という特定名称であり、そこから日本酒の世界に入られる方が多いので、そうした方々の価値観からすると、このお酒の魅力は最初は少しわかりづらいかもしれないですね。
―飲んだ方に一番感じてもらいたいのはどんなところですか?
橋本:やはり味わいの多さ、複雑さを楽しんでいただきたいですね。綺麗で美味しいというよりは、複雑で美味しい、奥深くて美味しい、そんなお酒に仕上がっていると思います。食中酒やデザート酒としてはもちろん、お酒単体でも楽しんでいただけると思います。飲めば必ず新しい発見のあるお酒だと思いますので、ぜひとも味わって“こんな日本酒は飲んだ事がない”という驚きを楽しんでいただだきたい。“甘いから悪い”のでも、“濃いから美味しくない”のでもなく、“甘くて濃いから美味しい”という価値観を作れたらいいな、と思っています。
―どんな食材と合わせて楽しむのが良さそうですか?おすすめの飲み方を教えてください。
橋本:よく言われるのはチーズですね。甘い味わいが特徴なので、ブルーチーズなどの塩味のあるものにはよく合います。また、このお酒はアイスワインや貴腐ワインのような甘味があり、蜜やジャムと評されることも多いので、そうしたワインと相性の良いフォアグラのような濃厚な料理も合うと思います。蜜みたいなお酒というのは、あまり聞かないかもしれないですが、高い濃度が特徴なんです。
―こちらのお酒は、美吉野醸造さんの“花巴”というお酒がベースになっているんですよね?
橋本:そうですね。アマルタは花巴の中の“ナチュール×ナチュール”という商品を元にしたら面白いんじゃないか、と考えて作ったお酒なので、自然の酵母で醸した酵母無添加の山廃造りの仕込みや、無添加の水もと純米酒の使用、甘い香りなどの“ナチュール×ナチュール”の特徴が全面的に反映されています。また、有機米の使用や木桶仕込みなど、付加価値的な部分も魅力の商品です。
―木桶仕込みというのはどんな方法なんですか?
橋本:今は酒造りにおいて重要な温度管理が出来るタンクを使うことが多いので、温度管理が出来ない木桶を使うこと自体なかなか珍しいですね。今まではまったく使っていなかったのですが、吉野という地域性も踏まえ、2010年から木桶を復活させながら、仕込みに使っています。
―木桶仕込みを復活させられた理由を教えてください。
橋本:吉野は吉野杉という杉の産地で、林業が盛んな場所です。吉野杉は、室町時代から植林がはじまり、豊臣秀吉が大阪城や伏見城などの資材にも使った丈夫なもの。江戸時代には強度が高く、香りがよく、お酒も木の色に染まらないことから酒樽や桶の材料として重宝されていました。そんな吉野の林業の歴史があって今我々がいるわけですから、お酒を通じて吉野林業を知ってもらいたいと、山守、製材所、樽丸業、醸造業とが一体になって吉野杉の良さを伝えるプロジェクトがあり、木桶仕込みを始めました。
―土地に根ざしたお酒造りというのは、とても良いテーマですね。
橋本:地域産業の中でも酒造りなどの二次産業である加工業は、農業や林業などの一次産業の延長線上にあるのが本来の形だと思うんです。今は市場を重視した商品が多いですが、そこがあまりにも多いと多様性が失われ日本酒の神秘性が薄まってしまう気がしています。一般的な美味しい味に近づけると、味が平均的になってしまい、地域性あるお酒がどんどんなくなってしまいますから。だからアマルタは、作り方も味もこの地域ならではの個性を凄く大事にして作りました。そこが一番の特徴だとは思いますね。これまで私は、人の好みや嗜好性はみんな違い、お酒に惹かれるポイントもさまざまだと考えてきたので、飲む人のターゲットを決めすぎないようにお酒造りをしてきました。自分が良いと思うお酒が良いお酒とは限らないですから、“こういうお酒を作ろう”などとは考えずに、酒造りをしてきたんです。だからと言ってもちろんなんでも良いというわけではなく、土地土地の川の流れや山の形など、自然のその必然性を理解しようと思って酒造りに取り組んできました。その必然性に沿って作れば、それ以上もそれ以下もない。味は作らなくても、生まれてくるもの。そんなことをこのお酒を通じて発信できたらいいと思っています。
―無駄な手を加えるよりも、元々あるものがそのまま形になっている、そういう必然性のもとにあるお酒ということですよ。
橋本:そうですね。地元を反映する味って、そういうことだと思うんです。語弊を恐れずに言えば、一般的に美味しいものと地域の味は同じではない。違うからこそその地域の味だと思うんです。世界中に同じ地域は一つもないですから。そんな解釈をしながら酒造りをしています。どんな酒造りも出来る現代においての、これは一つの私たちの蔵の考え方です。そんな場所から生まれたお酒を楽しんでほしい。奈良の吉野にもぜひ遊びに来てください。
長い年月をかけて丸みを帯びた岩と
そこに生えた苔。
歴史ある吉野というエリアで、
自然の中の必然から生まれたお酒という
アマルタのストーリーは、
ラベルのデザインにも込められています。
その確かな背景と個性的な味わいは、
しっかりしたものづくりが好きな人、
新しい発見や刺激を欲している旅好きな人、
お酒からインスピレーションを得る
アートが好きな人など、
さまざまな人に好まれることでしょう。
平均化し、均一化した商品が氾濫する
現代だからこそ、
地域ならではの
お酒をぜひ楽しんでください。
その土地で生まれたものを味わえるのは、
日本酒の醍醐味の一つです。