「AMEGAERI」 数字では測れない
自然の力強さを味わう

南国土佐。豪快な海のイメージが強い一方で、美しい清流、
緑豊かな山々に囲まれた
この土地は、古くから数多くの名酒を
生み出してきました。

そんな名酒の産地で誕生した新銘柄
「AMEGAERI」(=アメガエリ)。

吉野川支流、瀬戸川の上流部にある
美しい滝の名前を冠したこの酒は、
山間部の棚田で育てられた米から作られ、
100年以上前から続く
生酛造りという手法で
発酵させたこだわりの品。

手間と時間をかけ、自然とともに
生み出された力強さある味わいを、
ぜひ感じてみてください。

「AMEGAERI」
原材料
米(国産)、米麹(国産米)
使用米
高知県産山田錦100%
飲み頃温度
5℃~12℃
アルコール度数
16度
日本酒度
+2.3
酸度
1.9
内容量
720ml

-Interview 自然にあるものを使って、
自分たちの好みの物を作りたい

土佐の山間部から生まれた新たなお酒、
アメガエリとはどんなお酒なのでしょうか。
お米の成育から発酵、醸造まで、
1本のお酒に込められたこだわりと想いを、
作り手の土佐酒造代表の
松本宗己氏に聞きました。

松本宗己(土佐酒造代表)

松本宗己(土佐酒造代表)

1877年(明治10年)創業の老舗酒蔵、土佐酒造の6代目社長。嶺北産酒米を使用し、酒米生産農家との連携など、地域にこだわった清酒造りを行っており、酒米も清酒もより品質を高めることを目指している。松本氏が代表に就任して以降、代表銘柄「桂月」は世界最大規模のコンテストでも最高賞を受賞するなど、世界的にも知られる存在となった。

高知県土佐郡土佐町田井418 TEL:0887-82-0504

―アメガエリというお酒ですが、自然にこだわって作られているんですよね?具体的にはどのような部分にこだわられているのでしょうか?

松本:標高400mから650mぐらいの棚田で育てたお米で作ったお酒である、ということがまず一つです。このエリアは昼は暖かくて夜は寒いのですが、植物は太陽の光を浴びて光合成して生きていますから、昼間暖かい=太陽を浴びる時間が長いということは、太陽から多くの栄養を蓄えられるということ。そして夜が寒いということは、しっかりお米も休めるということ。夜が暖かいと寝ずに活動してしまい、昼間作ったエネルギーを消費してしまいますから。このような自然の力を活かした棚田で育ったお米をさらに品質の良いものにするため、化学肥料は使わずに有機質肥料を使って作っています。

―発酵の過程にもポイントはありますか?

松本:自然の力を生かし、棚田で化学肥料を使用せずに育てたお米を使いますので、発酵させてお酒にしていく方法も自然に近い方を取っています。酒造りは90キロぐらいのお米を使って、小さい酵母菌を増殖させ、酒母というスターターを作るところから始まるんですが、その酒母を作る過程で、酵母菌以外の余計な菌が繁殖してお酒が腐らないように酸性度の強い環境をつくってあげるんです。現代は人工的に作られた乳酸を加えて酸性度を強くした環境に酵母を入れて2週間くらいで完成させる“速醸酛”という手法が一般的ですが、アメガエリでは、蒸したお米と麹とお水を混ぜ、乳酸菌の力で乳酸を生み出して酸性度の強い環境を作った上で、酒母を作る“生酛造り”というやり方を採用しています。これは江戸時代には採り入れられていた方法なんです。生酛造りのために1ヶ月ぐらいかけて乳酸菌が増殖するのを待ち、酸性度が上がった環境で酵母を増殖させた酒母を作った後、さらに1ヶ月くらいかけてメインの発酵を行いますので、完成までにはトータル60日ぐらいかかります。現代の方法に比べて、1.5倍ぐらいの時間と手間をかけています。

―自然に近い、昔ながらの方法で作られているんですね。この手法を採用されたのはなぜでしょうか?

松本:速醸酛も生酛造りも酵母の数値的には変わらないんですが、面白いことに同じ酵母、同じお米、同じ条件でお酒を仕込んでも、昔からの生酛作りの方がどういう訳か酵母菌が元気なんですよね。育つ過程が違うからでしょうね。現代的な速醸酛は確かに手間は減りますが、2週間でできたものと1ヶ月かけてジワジワ繁殖したものは、メインの発酵のときの働きが違うんです。

―数字的には解明出来てはないけど、確実に強いということですね?

松本:酒母は繁殖中に代謝をしていろんな物質を出すので、その微妙な成分が酵母にとって栄養として効いているんじゃないか、と言う人もいれば、酵母は細胞分裂を繰り返すので、その増殖する過程の環境で強い細胞だけが生き残ってるんじゃないか、と言う人もいる。酵母を顕微鏡で見ても強さまではわからないから、あまりいい加減なことは言えないのですが、お酒の業界ではその様なことが言われています。そもそもこのお酒を作るきっかけは、“綺麗な水と綺麗な空気の中で自然に育ったお米を、昔ながらの自然に近いオーソドックスな方法で作ると良いお酒になるんじゃないか?”と考えたのが始まりでした。ワインの世界でも“ヴァン・ナチュール”という自然派のカテゴリーがありますが、それと同じことなんです。自然とともに作られたワインは華やかではないですが、なぜか飲んだら落ち着くんですよ。たくさん飲んでもなぜか次の日も調子がいい。どうせ酒蔵をやっているなら、それと同じ日本酒を作ったらどうかな、と思って作り始めました。ワイン好きのお客さんに、日本酒にも興味を持ってほしいという思いもありましたね。

―ワインの“テロワール(=畑を取り巻く自然環境要因)”とも通ずるものがありますね?

松本:テロワールという言葉はフランスの人が発明したものかもしれないけど、日本酒にも“自然”という要素はもちろん確実にありますね。だけど、自然にあるものを使って、自分たちの好みの物を作りたいと考えるは人間の本能ですよ。この辺りで言えば、それは“棚田”と“軟水”です。それらを使ってお酒作りたい、と僕の爺さんの爺さんのお父さんが147年前に酒蔵を始めたんです。夜に電気もなく、娯楽など大してない時代に“自分たちの周りでいっぱい取れてるお米で作ったお酒があったらさぞ楽しかろう”と考え、見様見真似で一生懸命勉強しながら、絞りの時期や、発酵の温度、お米の育て方など、いろいろと試行錯誤を重ねてきた。そのように苦労して作る理由って“自分が飲んで美味しいと思うもの”のため、“自分や携わる方が喜ぶもの”のためなんです。だから地域性や文化が出る。アメガエリは山の中で生まれたお酒ですので、一般的な高知県のイメージである海辺の漁師町のお酒みたいな味ではありません。山で採れるものに合うように出来てるんですよね。

―土佐のお酒というと海のものをイメージしがちですよね。

松本:もちろんカツオにも合いますが、やっぱり僕も山の中で産まれたので、自分が喜ぶ味覚がその環境で出来上がっちゃっているんです。関西風とか関東風とか、いろんな味の特徴があるけど、小さい頃に食べとったものが美味しいなと思う人が多い。それが地域性やし、テロワールなんやろね、と勝手に思っています。このテロワールという言葉も結局は“オラが村のワイン凄いやろ”って言いたいからだと思うんです。賢そうに土壌がどうこう言ってますけど、結局はそれを言うためのロジックをいろいろと後で見つけて並べとるのかな。ウチも並べようと思ったらいっぱいあるけど、結局このお酒を作るのって“自分たちが暮らしてきた地元で採れるものが美味しいと思っているから”なんです。美味しいと思って作ってるから、知り合った人にも飲んでもらいたいし、飲んでもらいたいと思っているから作っているわけですね。

―“自然に作られた”と聞くと、健康的で軽やかなお酒をイメージですが、アメガエリには自然と人間の手仕事から生まれたパワフルなムードを凄く感じます。体にも良さそうで元気が出そうですね。

松本:そうですね。あと、理由はわかりませんがこのタイプのお酒って、長持ちするんですよね。熟成向きとでもいいますか。逆に出来立ての時は落ち着いていない、暴れん坊みたいな味です。次の日の方が美味しいものも多いし、瓶に入ったままの状態でも長期間熟成して楽しむことができます。

―“理由がわからない”というのも神秘的でいいですね。

松本:数字を見て、いろいろな人がいろいろなことを言っていますが、これという決定打には、まだ誰もたどり着いていないんですよね。人間って面白いもので、かなり高額で精密な機械を使って香りの成分まで細かい数値を分析しても、“この数値が高い”なんていうのはだいたい飲めば分かるんです。むしろ機械が測定できない部分を人間は感じられるんですね。例えばアメガエリのアルコール度数は16度です。一般的なお酒の度数は15度ぐらいなので、少し高めですね。通常はアルコール度数が高いと水を入れて下げるので、今回も度数を下げたものもいろいろ作ってみたんですが、薄めていない16度が一番美味しかった。ウイスキーで55度の原液よりも即席で水を入れて薄めた40度の方がピリピリするように、日本酒も16.5度、17度あるお酒を水を混ぜて度数を落としても、暫く経つまでは刺激が強くなる。面白いもんです。濃いからと言って単純に刺激が強いとは言いにくい。そのぐらい人間って高性能なんです。いろいろお話ししてきましたが、このお酒は僕は大のお気に入りです。毎日に近いぐらい飲んでいますし、体の調子も絶好調です。お酒自体にパワーがあって、度数が高くても不思議なものでスルスルっと飲めちゃう。“美味しい”と胸を張って言えますし、“生酛造りでは、菌が最後まで元気”ということも確かですが、それ以上細かいことは “飲んで感じて下さい”、という話ですね(笑)。

AMEAGARI

土佐ならではの棚田、軟水を使い、
昔ながらの手法で時間をかけて作られた
アメガエリ。

自然と人間が生み出した力強さを味わえば、
その土地へ少し旅をした気分も
感じられることでしょう。
そうしたことができるのもお酒の楽しみ。

ぜひ味わってどんな場所で作っているのか
想像してみてください。
そして興味があるなら、ぜひ土佐まで
足を運んでみてください。
こだわりの背景を知ることは、
きっと人生を豊かにしてくれることでしょう。

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