2013年に打ち出された「信州ワインバレー構想」が後押しとなり、2014年以降は毎年ワイナリーの設立が続いており、2000年以降に設立されたワイナリー数は40軒以上。ワイナリーの立ち上げを視野に入れたブドウ園の開園も見られ、いま最も活気のある県の一つと言えます。
長野県の気候
日本では北海道東部に次いで降水量が少なく、昼夜の寒暖差が大きな盆地気候です。フランスのブルゴーニュ地方やアルザス地方に近い、ブドウ栽培に適した冷涼な気温に恵まれた自然条件が良質な果実の収穫を可能にしています。
ワイン生産量
ワインの生産量は山梨県に次いで第2位。4,071㎘、750ml換算で542.8万本と日本全体の24.7%を占める生産量を誇ります(2020年データ)。
寒さに強いコンコード(1,835t)やナイアガラ(970t)などが生産量のNO.1、NO.2を占めますがこれらは減少傾向が続いており、反対にメルロー(852t)、シャルドネ(511t)などの国際品種の栽培量が増加していることが特徴です。
信州ワインバレー構想とG.I.
長野県はワイン産業の振興に積極的な都道府県として知られており、なかでも2013年に発表された「信州ワインバレー構想」は有名です。「世界が恋する、NAGANO WINE」を目指す姿に据えた構想は、発表から10年後の2023年に「信州ワインバレー構想 2.0」の策定が行われ、新たな目標を達成するべく進化を続けています。
また、日本各地で進む『G.I.認定』ですが、長野県では2021年に国から「G.I.長野」の指定をされる以前から「長野県原産地呼称管理制度」という県独自の厳しい審査・認定が実施されていました。こうした県を挙げてのワイン産業への取り組みも長野ワイン全体の品質向上の一助となっています。
長野県のワイン産地
「信州ワインバレー構想」のもと県内の産地化が進んでおり、大きく分けると桔梗ヶ原ワインバレー、千曲川ワインバレー、日本アルプスワインバレー、天竜川ワインバレー、八ヶ岳西麓ワインバレーの5つに分けることができます。
桔梗ヶ原ワインバレー(塩尻市)
標高700~800mほどの高地で、ブドウの生育期間の日照時間は全国1、2位を争うほど栽培条件に恵まれています。また、長野県のワイン造り発祥の地としても知られている産地です。ナイアガラ、コンコードを中心に醸造する一方で、寒冷地では栽培が難しいとされていたメルローをはじめ、シャルドネなどの欧州系品種も活発に栽培されています。
千曲川ワインバレー(上田盆地、佐久盆地、長野盆地)
千曲川の上流から下流に至る流域にある、雨の少なさに恵まれた産地です。長野県のワイン生産の中心地で、71軒のワイナリーのうち、34軒がこの千曲川ワインバレーにあります(2023年3月データ)。12の市町村からなりますが、1つの市町村内だけでも標高差が大きく、シラーなどの温暖な気候向きの品種から、ピノ・ノワールのような冷涼産地の品種まで栽培されている品種が多様です。
日本アルプスワインバレー(松本盆地から塩尻市を除いた部分)
長野県のブドウ栽培発祥の地である日本アルプスワインバレーは、日照時間が長く、水はけが良いことで知られています。ワイナリー数は12軒と多くはないものの、この産地で栽培されたブドウは他のワインバレーで醸造される例が多く、点在するワイン醸造用のブドウ園では良質なブドウが栽培されています。
天竜川ワインバレー(伊那盆地)
ワインと並んで、シードル(リンゴの醸造酒)の生産地としても注目される産地です。ヤマブドウ系のヤマ・ソービニオンやヤマブドウなど、日本の固有品種を用いたワイン、果物を使ったリキュールなど、多彩な商品がつくられています。ワイナリー数は7軒。
八ヶ岳西麓ワインバレー
ワイナリー数はまだ2軒。2023年の「信州ワインバレー構想2.0」で新たに追加された新興産地です。県内で標高が最も高く非常に冷涼であったことから、数年前まではワイン用ぶどう全般の栽培が困難でしたが、気候変動の影響でピノ・ノワールやピノ・グリといった冷涼な気候に合った品種に注目されています。
以上、主要なワイン産地『長野編』でした。日本NO.2の大きいワイン産地ながら、まだまだ進化を続ける注目産地の長野県。その魅力を少しでも知っていただけたでしょうか。
次回は『北海道編』です。お楽しみに!
参考文献
日本ワイン検定事務局/『日本ワインの教科書』/柴田書店/2021年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年
参考資料
長野県原産地呼称管理制度・GI長野/『信州ワインバレー構想 2.0』/長野県/2023年/2023年10月30日閲覧
https://www.pref.nagano.lg.jp/jizake/documents/swvp2_2023_web.pdf