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日本ワイン好きスタッフが注目 『日本のブドウ 23品種』

日本ワイン好きスタッフが注目 『日本のブドウ 23品種』

ワインの流通に携わる観点から日本ワインのいろんな情報を発信しているコラム。日本ワインで使われる主要品種を掘り下げます。世界で有名な国際品種や、小公子やセイベル9110といった日本の珍しい固有品種などが登場します。

日本におけるブドウ栽培の現状

まず、私たちの住む日本におけるブドウ栽培の現状を把握しておきたいと思います。
日本のブドウの収穫量は、16,500haの栽培面積に対して、165,100t(2021年農林水産省データ)となっています。そのうち約13.3%の21,971tが国内ワイナリーで醸造に使用されました。日本は食用ブドウの生産量が圧倒的に多いのがわかります。

赤ワインと白ワインの比率

赤ワインが44.4%に対して白ワインが占める割合は45.0%です。スパークリングが3.8%、その他6.7%となっていて白ワインと赤ワインはほぼ同量と言えます。赤白の比率は地域によってかなり違うのですが、フランスのボルドー地方ですと造られるワインの大半が赤ワインです。ブルゴーニュ地方は、赤・ロゼワインが29%、白ワインが61%。シャンパーニュは99.9%が白ワインです。比べてみると日本は白ワインと赤ワインの比率が非常にバランスのいい国といえます。※2021年データ

日本ワインの黒ブドウ品種TOP10

1位 マスカット・ベーリーA

生産量トップの2,982t。
山梨県(1,621t)で半分以上が生産されています。山形県(620t)や長野県(266t)、広島県(69t)、島根県(60t)と続きます。
白ブドウのNO.1『甲州』もそのほとんどが山梨県で造られており、山梨県がワイン大国であるかを感じていただけると思います。生産量では山梨県がNO.1なのでこの品種の扱いに慣れた生産者さんが多いのは間違いありませんが、マスカット・ベーリーAは日本の気候に合わせて1940年に開発された品種ですので、比較的どこでも育てやすく、南北にわたって広く栽培されていることも特徴です。

マスカット・ベーリーAには「フラネオール」という成分が多く含まれており、イチゴのような甘い香りが特徴ですが、各産地によってその特徴のいかし方は様々です。
原産地である新潟県では大きな昼夜の寒暖差を生かし、果実味豊かな引き締まったワインに仕上げますし、九州では南国の暖かさを生かしたチャーミングな味わいになります。

2位 コンコード

生産量は1,835t。
生産量の全量が長野県だけで賄われています。
もともとはアメリカ原産で母国では醸造されるよりジャムやジュース、生食用として親しまれています。
香り高くフルーティな品種で、渋みが少ないためワインに慣れていない方にもおすすめ。極甘口から辛口まで幅広く造られています。

3位 メルロー

長野県はコンコードよりも「国際品種」で注目を集めています(もちろんコンコードのワインなら長野県一択です)。
中でもメルローは全国生産量1,433tのうち852tが長野県で生産されており、以下山形県144t、山梨県105tに比べて長野県の存在が圧倒的です。メルロー以外にも後述のカベルネ・ソーヴィニヨンや白ブドウのシャルドネなど、世界中で造られる国際品種の栽培に成功しているのが長野県です。

4位 キャンベル・アーリー

アメリカから日本に持ち込まれた赤ブドウ品種です。マスカットやイチゴのような果実の香りと、ベッコウ飴の様な甘い香りが特徴的で生食もされます。北海道(613t)で最も多く栽培されており、次いで岩手県(178t)、宮崎県(160t)。雪国と南国の両方で育てられているという面白い品種です。
中甘口のロゼやスパークリングが多く、揚げ物やカレーなど幅広い家庭用理に合わせられます。

5位 カベルネ・ソーヴィニヨン

世界で最も栽培・生産されている黒ブドウ品種がここでランクイン!
メルローの栽培でも成功している長野県(113t)を筆頭に、山形県(106t)、山梨県(75t)、兵庫県(64t)が上位に続きます。
国際品種で長野県が注目されているのは前出の通りですが、山形県も1970年代とかなり早くから国際品種への取り組みが始まっており、樹齢の高い貴重な樹が残されています。

6位 ブラック・クイーン

日本で交配された、「日本ならでは」の1つ。日本の気候・風土に適するように品種改良された黒ブドウです。
酸味が豊かでタンニンは穏やか。飲みやすいワインを生み出しており、用途が醸造用に限られるため生産量はそこまで多くありませんが、長野県(280t)を中心に、山形県(60t)、山梨県(53t)と主要なワイン産地で栽培されています。

7位 ヤマ・ソーヴィニオン

こちらも日本で開発された「日本ならでは」の品種です。ブラック・クイーンとの違いは、ブラック・クイーンがアメリカ系品種の交配で生まれた品種なのに対し、ヤマ・ソーヴィニヨンは日本の野生ブドウ品種とヨーロッパ系品種の交配で生まれたハーフのようなブドウ品種という点。
ブラック・クイーンは1927年生まれ、ヤマ・ソーヴィニヨンは1990年に山梨大学で誕生と、歴史の長さも異なります。
生産量は338tで山形県(108t)、石川県(96t)、岩手県(52t)、長野県(16t)と誕生した山梨県よりも北の産地で主に栽培されています。

8位 巨峰

食卓で馴染みのある巨峰は、4位キャンベル・アーリーの交配品種です。キャンベル・アーリーと同様にキャンディのような甘やかさのあるワインになりますが、近年素晴らしいスパークリングワインを生み出している品種でもあります。
県別では長野県(157t)、山梨県(130t)が主要な産地となっていますが、熊本県(17t)、福岡県(13t)など九州地方でも多く栽培されています。

9位 ツヴァイゲルト

比較的寒冷な地域でも栽培可能な品種で、日本では東北以北で主に栽培されています。海外ではややタンニンの多い、フルーティなワインに仕上がりますが、日本のツヴァイゲルトは程よいタンニン感とスパイシーさが味わえます。
北海道のワイナリーが1970年に原産国のオーストラリアから苗木を取り寄せたことから普及しました。近年注目の北海道余市町で盛ん。北海道(268t)、岩手県(13t)、新潟県(5t)の順に栽培されています。

10位 ピノ・ノワール

病気に弱く、栽培条件にシビアなため世界的に栽培が難しい品種として知られるピノ・ノワール。冷涼さを好むため北海道(189t)や山形県(12t)などの東北地方の寒冷地をはじめ、長野県(45t)、山梨県(12t)各地のワイナリーでチャレンジされています。
世界のベストレストラン50で1位を獲得したデンマークのレストランのワインリストにオンリストされるなど、日本のピノ・ノワールは世界的な注目を集めています。

日本ワインの白ブドウ品種TOP10

1位 甲州

山梨県を代表する『甲州』が1位です。白、赤を総合してもトップシェアで高い人気を誇ります。全国3,361tの生産量に対し、山梨の生産量が3,212tとなっていて全体の95.6%を占めます。
『藤紫色』と表現されるやや薄い色合いの果粒で、日本で生まれ育った在来品種です。生食兼用されることがあり、食べるとフルーティーで瑞々しい味です。
甲州ワインは日本のワインとしては長い歴史があるため、1位にはうなずけます。
シュール・リーと呼ばれるスッキリとしていて辛口なスタイル、樽を使用したスタイル、オレンジワイン、スパークリングワインといった幅広いスタイルで自由なワインが造られます。

2位 ナイアガラ

海外のワインにはあまり見かけられない品種なので、意外でしょうか?
ナイアガラはその名のとおり、アメリカのナイアガラ州で交配された品種です。
北海道、長野県での生産量が大半を占めています。
アメリカ系品種に特有のフォクシーフレーバーという華やかな香りを活かして、主に中甘口やスパークリングワインになります。

3位 シャルドネ

世界中で造られている最も有名な白ブドウ品種です。
日本のシャルドネは長野県での生産が多いですが、全国でくまなく育てられています。
本格的な栽培が始まったのでは1980年代で、2000年以降に長野県で栽培面積が3倍以上に増えました。
日本のブドウ栽培は棚仕立てという方法をとることが少なくありませんが、シャルドネに関しては世界標準となっている垣根仕立てが日本でも主流です。

関連コラム『シャルドネ』の生産量1位はどこ?特徴、歴史から飲み方まで。

4位 デラウェア

おなじみの『デラウェア』は山形県と山梨県での生産量が大半を占めています。
食用としては種無しが重宝されますが、山形県ではワイン用を想定して種ありの栽培が増加中です。とくにスパークリングワインに使用されて、通常の辛口から濁りのあるスタイルまで様々なスタイルに仕上げられています。

5位 ケルナー

ドイツ系品種で、トロリンガー(黒ブドウ)とリースリングの交配によって生まれました。1973年にドイツから苗木が導入されて以来栽培が続いています。
寒冷地に強いのが特徴で北海道の代表品種。生産量のほとんどを北海道が占めています。
辛口、中甘口、極甘口、スパークリングとスタイルは多様です。

関連コラム『リースリングとは?飲む人を魅了する高貴なワイン』

6位 ソーヴィニヨン・ブラン

高級ワイン用の白ブドウとして世界2位の生産面積を誇る国際品種です。日本では長野を中心に育てられています。
合計生産量は239tで1位の甲州の3,361tと比べると1/10以下ですが、生産量は増加していて北海道、山形県などでも栽培されています。
香りを活かしたスッキリとしたワインが中心に造られています。

関連コラム『2番目に愛される白 ソーヴィニヨン・ブラン 完全ガイド』

7位 セイベル9110

セイベルはフランスのセイベル博士が欧・中東系品種とアメリカ系品種を交雑した品種の総称です。育種番号があり、13053の黒ブドウと9110の白ブドウが代表的。
日本では山形県を中心に生産されています。

  • Mori no Wine White
    日本
    日本
    • NV

    OKU-IZUMO VINEYARD

    有限会社 奥出雲葡萄園

    Mori no Wine White

    杜のワイン 白

    750ml, オープンプライス

    こちらの商品は現在取り扱いがございません

8位 善光寺(竜眼)

長野県の善光寺周辺で明治時代から栽培されてきたことからこの名前がつけられた品種です。
『竜眼』はほぼ100%が長野県で生産されています。
ワインは味わい、香りともにニュートラル。
控えめながら上品なスタイルのワインが造られています。

  • ARC-EN-VIGNE Blanc
    日本
    日本
    • 2021

    ARC-EN-VIGNE

    アルカンヴィーニュ

    ARC-EN-VIGNE Blanc

    アルカンヴィーニュ ブラン

    750ml, オープンプライス

    こちらの商品は現在取り扱いがございません

9位 ポートランド

チャンピオンとルテーを交配したアメリカ系品種で、対寒性に優れた品種のため、北海道で生産されています。ナイアガラとともに青ブドウ(酸味や渋みが少なめで甘味が強く種がない)として親しまれていて、ラブルスカ系の華やかな香りが特徴的です。

10位 ミュラー・トゥルガウ

ドイツ系の品種で、リースリング×マドレーヌ・ロワイヤルの交配でできました。耐寒性があり、1970年代から北海道で栽培が行われてきました。現在も大半が北海道で栽培されていますが、ドイツ本国同様に近年栽培面積は激減。スッキリとしていてフルーティーな辛口~中甘口のワインが造られています。

その他の注目品種

小公子

アメリカ作家バーネット作の児童文学『小公子』は馴染みがあるかと思いますが、ブドウにも同名の品種があります。
日本にいつくかある在来の野生ブドウ(山ブドウ)を育種家の澤登春雄氏が交配、野趣ある香りと甘み、酸味のバランスがエレガンスで近年注目を集めている黒ブドウ品種です。山ブドウのルーツは謎ですが、雌雄異株という特殊な性質があり栽培は困難でした。小公子は牧丘で交配された結果その問題をクリアしました。現在は日本ブドウの愛好会の会員にのみ苗木が配布されています。

アルバリーニョ

スペイン北部で栽培されている品種で、新潟県、富山県、大分県などで急増しています。
香りの豊かさを活かしたワインが作り出されています。

プティ・マンサン

フランスの西南地方『ジュランソン』を代表する品種。
耐病性のある品種として注目を浴びて、急増中です。
一般的にブドウは成熟すると酸味が落ちますが、高糖度でも酸を保つことのできる品種。その特徴をいかしたワイン造りが行われています。

  • Petit Manseng
    日本
    日本
    • 2021

    COCO FARM and WINERY

    有限会社ココ・ファーム・ワイナリー

    Petit Manseng

    プティ・マンサン

    750ml, オープンプライス

    こちらの商品は現在取り扱いがございません

ピノ・グリ

日本ではブレンドに用いられることが多く、北海道、長野県、山形県などの冷涼な地域で増加中です。

輸入ワインには見られない、珍しい品種が登場したと思いますが飲んだことのある品種は登場しましたでしょうか? 現在日本ワインはブドウ品種だけではなく、スタイルも本当に多様化しています。是非色々な産地や品種のワインを楽しんでみてください。

データ参照

一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年

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