なぜ「五大シャトー」と呼ばれるのか?
良質なワイン産地として広く知られているフランスのボルドー地方。
ボルドー地方北部に位置し、ジロンド川左岸にあるメドック地区では、1級から5級までの格付けが存在し、61シャトーが認定されています。その一番高い位である1級に認定されている5つのシャトーが「五大シャトー」と呼ばれるようになりました。
五大シャトーとは、
・シャトー・ラフィット・ロートシルト(Chateau Lafite-Rothschild)
・シャトー・ラトゥール(Chateau Latour)
・シャトー・マルゴー(Chateau Margaux)
・シャトー・ムートン・ロートシルト(Chateau Mouton-Rothschild)
・シャトー・オー・ブリオン(Chateau Haut Brion)
その名の通り、これら5つのシャトーを指しています。ボルドーワインの頂点に君臨しているトップシャトーです。
格付けの歴史と背景。メドック格付けができたのは、ナポレオンの命令!?
メドックの格付けが誕生したのは1855年、パリ万博 開催に伴い、ナポレオン3世の発案を受けて制定されました。
当時から高い評価を得ていたボルドーワインを、世界中から大勢の方々が訪れる万国博覧会の際によりわかりやすく理解してもらうために、ナポレオンが商工会議所に命じたのです。
どのような基準で1級から5級まで決まったかというと、取引されていた価格順。つまり当時から既に五大シャトーは高級ワインの一歩を踏み出していました。
1855年の時点では57シャトーが制定され、その後シャトーの分裂や合併により現在では61シャトーが制定されています。
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メドック以外の場所から選出!?「シャトー・オー・ブリオン」
「メドック格付け」なのだからすべてのシャトーがメドック地区にあるはず、と思う方が多いかもしれませんが唯一ひとつだけ例外があります。
それは五大シャトーのひとつ「シャトー・オー・ブリオン」。このシャトーがあるのはグラーヴ地区にあるペサック・レオニャン村。メドック地区より南にある地域です。
なぜメドック格付けに入れたのか?それは、当時からあまりに有名なシャトーだったため、特別に格付け制定されました。
ちなみに「シャトー・ラフィット・ロートシルト」「シャトー・ラトゥール」「シャトー・ムートン・ロートシルト」があるのはメドック地区ポイヤック村、「シャトー・マルゴー」はメドック地区マルゴー村にあります。
五大シャトーを紹介
それでは各シャトーについてみていきましょう。
シャトーの歴史や背景、醸造などの詳しい情報はワイナリーのリンクからご覧いただけます。
シャトー・ラフィット・ロートシルト Chateau Lafite-Rothschild
1級の中でもトップシャトーのポジションが与えられ、ボルドーで最も偉大といっても過言ではないシャトーです。
フィネスと力強さが見事に融和しており、最上の味わいを体験できるワインとされています。
シャトー・ラトゥール Chateau Latour
「シャトー・ラトゥール」と言えばワインのラベルにも描かれている塔が目印。ポイヤックとサン・ジュリアンの村境に畑を持ち、クリーム色の要塞のように建っています。この塔はイギリス人が15世紀に海賊の攻撃から身を守るために造った要塞の跡地に17世紀に建立されました。
「シャトー・ラトゥール」のワインは世界で最も凝縮感のある、豊かでタニックな、男性的と例えられる味わいが特徴です。
シャトー・マルゴー Chateau Margaux
18世紀には在仏米国大使トーマス・ジェファーソンがシャトー・マルゴーを『最高級のワイン』と表現するほど高く評価されていたシャトー。しかしその後、所有者を転々とするなど、劇的な時代を生き抜いた歴史があります。
味わいには驚くべきエレガンスさと豊かさと複雑さを備えており、輝かしい一貫性があります。
シャトー・ムートン・ロートシルト Chateau Mouton-Rothschild
1855年に制定されたメドック格付けですが、唯一「シャトー・ムートン・ロートシルト」だけは格付けの変更を実現させました。
制定当時、このシャトーは2級シャトーでした。そのあと地道に努力を重ね、1973年、ついに1級へと輝きます。当時の男爵はラベルに「1級にはなれないが、2級の名は甘んじられぬ、余はムートンなり」と言葉を入れていましたが、格上げした際に「余は1級であり、かつては2級であった、ムートンは不変なり」と変更しました。
豊かで濃厚で豪勢なスタイルのワインです。
シャトー・オー・ブリオン Chateau Haut Brion
格付け制定当時から有名だった「シャトー・オー・ブリオン」。ワインの製法に「澱引き」や「補酒」を導入し、技術革命を起こしました。それによりワインは長期熟成できるお酒となり、イギリス市場での人気が上昇。その名声が格付け1級に結び付きました。
1級シャトーの中では最も香り高いと言われ、エレガントでアロマが複雑なワインを造っています。
参考文献:
ロバート・M・パーカーJr. /ボルドー第4版/美術出版社/2004年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2021』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2021年