- フランス ボルドー
シャトー・オー・ブリオン
Chateau Haut Brion
メドック外からメドック格付けに選ばれた唯一のシャトー
いちはやくシャトーでの熟成を行うようになった
1855年、メドック地区にあるシャトーの中から格付けを決める際に、このシャトー・オー・ブリオンだけが特別にメドック以外のグラーヴ地区から1級に選ばれた、という所からも当時のオー・ブリオンが高く評価されていたことがうかがえます。
オー・ブリオンは珍しくその歴史の始まりがはっきりしています。1525年にボルドー議会の職員であったジャン・ド・ポンタックがリブルヌ市長の娘ジャンヌ・ド・ベロンと結婚した時、ジャンヌが持参したのが〝Haut-Brion(オー・ブリオン)"と呼ばれる土地でした。そして、1549年に現在のシャトーの建設が始まり、1649年からオーナーとなったポンタック家のアルノー3世の時代にワイン造りが始まりました。
彼が澱引きやウイヤージュを始めた事により、より良い長期熟成が可能になったため、イギリス市場で人気が高まりました。チャールズ2世の時代には王室でオー・ブリオンがサービスされたという記録も残っています。18世紀の終わり頃からボトリングがシャトーで行われるようになった為、熟成もシャトーで管理できるようになりました(当時ボルドーのワインは熟成させる前に樽で販売されていた中、オー・ブリオンが先駆けて瓶熟成を行う様になりました)。
フランス革命の際にオーナーのジョセフ・ド・フュメルが処刑された後、所有者は彼の親族から転々としますが、1836年から1922年まで、ラリュー家がオーナーとなり、その間1855年に格付け1級に選出されます。そして、1935年にニューヨークの銀行家、クラレンス・ディロン氏がシャトーを購入。その孫娘ジョアン・ディロンがルクセンブルグ公国の殿下と結婚し、シャトーを引き継ぎ、現在はジョアンの息子であるロベール殿下がオーナーを務めています。
近年のオー・ブリオンのワイン造りを支えてきた支配人のデルマス一族は、ジョルジュ・デルマス、ジャン・ベルナール・デルマスと引き継がれ、現在はジャン・フィリップ・デルマスが支配人を務めています。
シャトーは驚くほどボルドー市内近くにある
クローン選別等、細部まで注意深く進められる栽培、醸造
オー・ブリオンはボルドー市内のすぐ南に位置するシャトー。地区としてはペサック。畑で栽培されているのは、メルロー45%、カベルネ・ソーヴィニヨン44%、カベルネ・フラン10%、プティ・ヴェルド1%。クローンの選別に早くから注意を払っており、1975年にはINRA(フランス国立農学研究所)と連携し、クローンの栽培・研究を行ってきました。現在は実験も含め500種以上のクローンを栽培しています。
自然酵母で発酵を行っていますが、醗酵時の温度管理は大切です。オー・ブリオンでは1961年にボルドーで初めてステンレスの醗酵槽が使われるようになりました。これにより醗酵温度が管理しやすくなりました。
醗酵後にそれぞれのタンクを注意深く試飲し、先を見据えながらグラン・ヴァンとセカンドラベルのキュヴェに選別していきますが、若木の区画のキュヴェがセカンドに使われる事が多いです。その後マロラクティック醗酵を行い、年によりますがグラン・ヴァンは新樽にて20か月熟成されます。オー・ブリオンでは、自らのセラーで熟成用の樽を作っています(一部か全数かは不明)。
546種もの木を栽培、研究
格付けは赤のみでも、白も人気も高い
ファーストラベルの『シャトー・オー・ブリオン』のセカンドラベルが、『Le Clarence de Haut-Brion(ル・クラランス・ド・オー・ブリオン』。1935年にシャトーのオーナーとなったクラレンス・ディロン氏の名前がつけられています。2007年からはこの名前ですが、2006年ヴィンテージまでは、『Chateau Bahans Haut-Brion(シャトー・バーンス・オー・ブリオン)』という名前で販売されていました。熟成は20~25%新樽にて18~22か月。年間平均生産量は5,000~7,000函。
『Chateau Haut-Brion Blanc(シャトー・オー・ブリオン 白)』は、3ヘクタールにも満たない小さな畑で作られる、ボルドーで最も高級な辛口白ワインのひとつです。ブドウは、セミヨンとソーヴィニヨン・ブランがほぼ50%ずつで、熟成は新樽50%にて9~12ヵ月。年間平均生産量は450~650函。
『La Clarte de Haut Brion(ラ・クラルテ・ド・オー・ブリオン)』は、シャトー・オー・ブリオン白とシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン白のセカンドラベル。2009年がファーストヴィンテージです。 2008年ヴィンテージまでは『Les Plantiers du Haut-Brion(レ・プランティエ・デュ・オー・ブリオン)』という名前で販売されていました。熟成は40~50%新樽にて9~12ヵ月。年間平均生産量は1,000~1,200函。
『オー・ブリオン白』の樽。少量生産の為、最後の一樽は規格外のサイズとなる