- フランス ボルドー
シャトー・マルゴー
Chateau Margaux
マルゴーのトップに君臨するシャトー
『最高級のワイン』と称された逸品
シャトー・マルゴーでブドウ栽培が始まったのは16世紀頃と言われています。1572年から1582年の10年間をかけて、ピエール・ドゥ・レストナック氏が設備とブドウ畑を再構築。17世紀末には、265ヘクタールの土地を所有しており、現在と同じくその1/3である80ha強でブドウ栽培が行われていました。
その後、シャトー・マルゴーの名声は徐々に高まっていきます。18世紀には、在仏米国大使トーマス・ジェファーソンがシャトー・マルゴーを『最高級のワイン』と表現するほどでした。しかし、1789年フランス革命が起こるとともに、革命家たちによってシャトーの全てが国家財産としてオークションで売却され、荒廃しました。その後、シャトー・マルゴーの所有者は転々としますが、そのような中でも1855年の有名なメドック格付け時には1級に選出。当時、2級のシャトーの2倍の値段で取引されていた、と言われています。
19世紀の様々な疫病、戦争の時代が過ぎ、1950年にジネステ一族が買収しますが、作柄の厳しい年や不況の時代が続き、1977年に売却。それを現在の所有者であるギリシャの実業家、メンツェロプロス一族が購入し、惜しみない投資の下、排水、植え替え等の大掛かりな再構築が行われ、見事シャトーは甦りました。現在は、シャトーを購入した当時のメンツェロプロス氏の娘である、コリーヌ・メンツェロプロス氏が経営を担っています。
シャトーの顔、メンツェロプロス家とポンタリエ氏
オフィスは象徴でもある美しいシャトーの建物内にありますが、販売方針などを決めるオフィスがパリにもあります。以前は複数の大企業が株主にいましたが、2003年、コリーヌ・メンツェロプロス氏が独占株主となりました。
シャトーの顔ともいえるコリーヌ・メンツェロプロス女史はオーナーであり、経営者でもありますが、シャトーの栽培、醸造といった実際にワインを造る指揮をとるマネージング・ディレクター(総支配人)は1983年より長年シャトーに加わっていたポール・ポンタリエ氏。1990年から、シャトーを代表するもうひとつの顔となっていました。しかしながら、2016年3月に彼が亡くなった事により同年10月にフィリップ・パスコール氏がマネージング・ディレクター(総支配人)となりました。パスコール氏は以前、ポンタリエ氏の下で、エステート・ディレクターを20年近く務めた後、ナパ・ヴァレーのイングルヌックの支配人を務めていましたが、ポンタリエ氏の急逝によりマルゴーに戻る事となりました。
類まれなるロケーション
絶妙な標高の為か、或いは川との距離の為か、シャトー・マルゴーの畑は霜害を受けることはほとんどありません。白ブドウの畑だけは霜害を受けやすいので、霜が降りている間中、風、湿度等を考慮しながら、通常明け方まで散水し続ける、という対策が取られています。氷結が作り出す熱によって、樹々が枯れない温度を保つのです。
耕作は伝統的な方法で行われていますが、試験的に一部、馬による耕作も行われています。また、ブドウの寄生虫が増えないセクシャル・コンフュージョンを導入したりする事により、1990年代以来殺虫剤は使われていません。栽培密度は10,000本/ha。表土に加え、植え替えを行う際に、肥料を施しますが、有機肥料であり、大半は1年以上かけて堆肥にされた牛の肥料を使っています。
収穫は特別に収穫のチームが組まれますが、毎年参加する熟練の方もいれば、楽しみにやってくる学生さんもいます。全部で1000人位を200人ずつの5つのチームに分けます。
2015年6月に完成した新しいセラー
木製のファーメンター
シャトー・マルゴーには熟成用の樽を作る専門の職人がいます。一日3個作る事が出来ますが、それでもシャトーで必要な数の1/3にしか満たないので、残りはコニャック、ボルドーの樽職人から購入しています。
醗酵温度はとても大事であると認識している為、ステンレス製と同じレベルで温度管理が出来るの木製のファーメンターを使用しています。木製のメリットは、円錐台形という形と慣性的な温度が抽出を促されること、ワインのボディと色となる果汁と果皮の接触が起こること、また、接触が密になることでブドウが潜在的にもつ優れた品質と味わいをより引出し、豊かで柔らかなワインができる点です。
きわめてデリケートに扱われたプレスワインは質を見ながらブレンドされます。清澄には現在でも卵白を使用。一樽当たり、6個分の卵白を使用します。そして、熟成後、複数のロットを何度も試飲しながらブレンドし、ファースト、セカンド、サードと造りだされていきます。
円錐台形の醗酵槽(ファーメンター)
2009年よりサードラベルを生産
『マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー』は、シャトー・マルゴーのサードラベル。2009年ヴィンテージの質が素晴らしく最高のグラン・ヴァンをつくりたい、という思いから、サードラベルが登場しました。樽で15ヶ月熟成されました。生産量が限られている為、各国とも、販売ルートが限定されています。
シャトー・マルゴーのセカンドラベル、『パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー』は1908年から造られています。1930年代から一時期造られていなかったようですが、1977年に再開されました。