1. Home
  2. Column
  3. 世界の『ピノ・ノワール』産地を解説。1位 フランス、2位 アメリカ、3位は?
ワインのキホン

世界の『ピノ・ノワール』産地を解説。1位 フランス、2位 アメリカ、3位は?

世界の『ピノ・ノワール』産地を解説。1位 フランス、2位 アメリカ、3位は?

ワイン好きを惹きつけてやまない『ピノ・ノワール』の生産地別解説。ピノ・ノワールの赤ワインは重さよりも、上品さ、エレガントさが重要とされ、その魅力が発揮されるには「産地を選ぶ」品種とされています。有名産地の特徴をご紹介します。

ピノ・ノワールの生産国は?

2016年のデータで生産面積トップはフランスでした。品種の発祥地である『ブルゴーニュ地方』と『シャンパーニュ(シャンパン)地方』といった重要産地を擁し、栽培の歴史が長い生産国です。それに次ぐのはワインの生産量が伸びているアメリカ。そしてフランス同様に長い栽培の歴史をもつドイツが続きます。

ピノ・ノワールとは

ブルゴーニュ地方を代表する赤ワイン用のブドウ品種です。色素やタンニンのもとになる果皮が薄いため、繊細で上品なワインができます。その「か細い」繊細さが特徴ですが、特定の条件ではグラスを飛び出して部屋を漂うほどの華々しいアロマを纏ったり、ボディ豊かで骨格のある偉大なワインになったりするためワイン用のブドウ品種のなかでも最も奥深く、ファンを惹きつけてやみません

ブルゴーニュの特徴

ピノ・ノワールの故郷であるフランスのブルゴーニュ地方は、ボルドーとともにフランスワインの二大産地として知られます。ブルゴーニュ地方はフランスがキリスト教国になる紀元前から既に銘醸地として知られており、世界的に見ても大変歴史の長いワイン産地です。この地に根付いたピノ・ノワールはブルゴーニュの歴史とともに歩んできた品種で、農家によって脈々と受け継がれてきました。黒ブドウはピノ・ノワール、白ブドウはシャルドネが栽培されて単一品種のワインが生産されています(例外あり)。

『ロマネ・コンティ』『シャンベルタン』などを生む

ピノ・ノワール最高の品質と魅力をもつ銘柄は主にブルゴーニュで生まれます。
ここではテロワールの微妙な違いを表現する、ピノ・ノワールの能力がいかんなく発揮されます。ピノ・ノワールを使って良質のワインを造ることは世界中のワイン生産者にとって大いなる挑戦となっていて、ブルゴーニュは常にその手本となってきました。

ブルゴーニュ > ジュヴレ・シャンベルタン > シャンベルタン

ブルゴーニュ > ポマール

ブルゴーニュ地方のワイン生産者

生産国の栽培面積ランキング

2016 面積(ha)2000-2016
フランス
31,602
+5,076
アメリカ合衆国
22,998
+17,655
ドイツ
11,184
+2,541
ニュージーランド
5,514
+4,416
イタリア
5,057
+1,770
オーストラリア
4,806
+1,583
スイス
4,209
-392
チリ
4,091
+2,477
モルドバ
2,366
-4,155
ルーマニア
1,930
+190
アルゼンチン
1,866
+752
南アフリカ
1,153
+666
イギリス
546
+??

ピノ・ノワールは早熟な品種で、暑い気候ではより早く熟します。そのため涼しい地域でゆっくり熟したものが高い品質になります。世界の栽培地域の特徴を見てみましょう。

フランス

シャンパーニュ地方で造られるシャンパンではピノ・ノワールが重要品種です。緯度が高く大陸性の気候であるため涼しい産地です。北フランスのロワール地方アルザス地方でも高い品質のものがあり、南フランスの涼しいエリアでもフルーティなピノ・ノワールが造られています。ピノ・ノワールと親子関係にある品種「サヴァニャン」の生産地ジュラ地方でも見られます。

シャンパーニュ(シャンパン)

ロワール

アルザス

ラングドック・ルーション

アメリカ合衆国

世界で最もワイン消費量が多く、近年ワイン全体の生産量が増加しているのがアメリカ。西海岸のオレゴン州は気候と職人気質がともにブルゴーニュ的な土地で、高い品質の繊細なピノ・ノワール生産地として知られています。南隣にあるカリフォルニア州でも涼しいエリアで造られていて、ややパワフルでリッチなワインが造られています。オレゴン、カリフォルニアとも大西洋の冷たい海流の影響によって気温が抑えられている産地です。

オレゴン > ウィラメット・ヴァレー

カリフォルニア > ソノマ

カリフォルニア > サン・ルイス・オビスポ

ドイツ

一説によるとラインガウにあるエーバーバッハ修道院が、シトー派の本拠地であるブルゴーニュからピノ・ノワールを持ち込んだとされています。シュペート・ブルグンダー(シュペート=黒、ブルグンダー=ブルゴーニュの)と呼ばれて栽培の歴史は長く、ライン川やモーゼル川流域の高名なワイン産地ではリースリングとともに栽培されるのが見られます。もともと涼しい気候であるため、控えめなピノ・ノワールらしさが表現されています。

ラインガウ

ファルツ

ニュージーランド

フランスから持ち込まれたソーヴィニヨン・ブランによって白ワインの一大産地となったワイン生産国です。その特徴は低い緯度からくる冷涼さと、豊富な日照量。ニュージーランドは新たな品種としてピノ・ノワールに活路を見出していて生産が増えています。アメリカなど他の新興産地と同じように、優秀なピノ・ノワールのクローンが流通したことがきっかけのひとつです。ブルゴーニュのものよりもややフルーティで、チャーミングな酸味が特徴。品質の高さが注目を浴びている産地です。

セントラル・オタゴ

マールボロ

マーティンボロー

イタリア

イタリアではピノ・ネロと呼ばれており、北イタリアに生産地がいくつかあります。山の高い標高からくる冷涼さを生かした産地としてトレンティーノ・アルト・アディジェ州のボルツァーノ自治県が世界的に知られています。極少量しか生産されませんが、山あいのフランス語圏ヴァッレ・ダオスタ州も同じく高標高です。トレントや、ミラノから車で1時間ほどの距離にあるフランチャコルタオルトレポ・パヴェーゼといった特産のスパークリングワインの生産地域でもピノ・ネロは重要品種です。

トレンティーノ・アルト・アディジェ州 > ボルツァーノ

  • St. Maddalena-Gries Pinot Nero
    イタリア
    イタリア
    • 2022

    Cantina Bolzano

    カンティーナ・ボルツァーノ

    St. Maddalena-Gries Pinot Nero

    サンタ・マッダレーナ グリエス ピノ・ネロ

    750ml, 3,100 yen

    こちらの商品は現在取り扱いがございません

トレンティーノ・アルト・アディジェ州 > トレント

ヴァッレ・ダオスタ州

ロンバルディア州 > フランチャコルタ

オーストラリア

ヴィクトリア州ではスパークリングワインとスティルワインの両方でピノ・ノワールが使われています。とくにヤラ・ヴァレーの標高の高い畑や、冷たい海流の影響を受けるモーニントン半島のものが有名です。サウス・オーストラリア州のアデレードヒルズも、高い標高から冷涼な地域で高い品質のワインができることが証明されています。本島から南に離れたタスマニア島でも、低い緯度の涼しい気候がピノ・ノワールにマッチしており抑制のきいたよいワインが生まれます。

ヴィクトリア州 > ヤラ・ヴァレー

ヴィクトリア州 > アデレードヒルズ

タスマニア島

スイス

スイス人はワイン愛好家として知られ、ワインは輸出が1%程度のため残念ながら国外ではあまり見つけることができません。ピノ・ノワールは赤ワイン用品種として最も多く栽培されています。伝統的にガメイなどとブレンドさたスタイルで楽しまれます。

チリ

南北に長く伸びるチリでは、冷たい海流の影響を受ける太平洋側の涼しい産地がピノ・ノワールに適しています。ブルゴーニュの有名生産者のジョイントベンチャーが立ち上がるなど、現在も将来も有望な生産国でリーズナブルな銘柄から希少な銘柄まで幅広く生産されているのが特徴です。

アコンカグア

アコンカグア > カサブランカ・ヴァレー

リマリ・ヴァレー

南アフリカ

国内のブドウ栽培総面積のうち、ピノ・ノワールが占めるのはたった1%ほど(2016年データ)ですが他国と同様に冷涼なエリアで品質の高いピノ・ノワールができます。やや明るい印象ですが、抑制がきいておりチャーミングな酸味が整っています。気候が涼しくリンゴの産地として知られるエルギンや、さらに南極に近いウォーカー・ベイのものがとくにすぐれています。

エルギン

ウォーカー・ベイ

イギリス

以前は寒冷すぎてブドウを育てることができなかった国ですが、気候変動の影響でシャンパーニュ(シャンパン)の代替地として知られるようになったのがイギリスです。シャンパーニュと同じように瓶内二次醗酵に特化しつつあり、品種もシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエなどが使われているため生産面積が増加しています。非常に酸味の豊かで、シャープな味わいのスパークリングワインが特徴です。

日本

高温多湿なここ日本でも、ピノ・ノワールのワインに挑戦する生産者がいます。病気に弱く、栽培条件がシビアなピノ・ノワール。冷涼さを好むため北海道(189t)や山形県(12t)などの東北地方の寒冷地をはじめ、長野県(45t)、山梨県(12t)各地のワイナリーでチャレンジされています。

北海道 > 余市

長野県 > 東御市

関連コラム

参考
ジャンシス・ロビンソン、ジュリア・ハーディング、ホセ・ヴィアモーズ/『ワイン用葡萄品種大辞典』/共立出版株式会社/2019年
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第8版』/ガイアブックス/2021年
ビル・ナンソン著・麹谷 宏監修/『ブルゴーニュ』/ガイアブックス/2012年
『ワイナート』114号/特集 ピノ・ノワールの新天地 ニュージーランド キアンティ・クラッシコ最新情報/2023年秋

データ参照
キム・アンダーソン/『Which Winegrape Varieties are Grown Where?』/アデレード大学/2020年/2023年7月9日閲覧
https://www.adelaide.edu.au/press/titles/winegrapes

一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年

一覧に戻る